はたらく役者さん第四回目:田口ともみさん【長谷川まる】

こんにちは、セツコの豪遊の長谷川まるです。

仕事とお芝居、そのどちらでも輝く人を追うはたらく役者さん、早いものでもう第4回目になります。

今回お話を伺うのは田口ともみさん(@temominTGC48)です。田口さんは学生時代、劇作家の如月小春氏が立ち上げたことでも知られる学生演劇団体の劇団綺畸の一員として活躍され、現在は会社員、主婦、来年10周年を迎える社会人劇団ダブルデックのメンバー、と三足の草鞋を履いて活動されています。

会社員としての強みを生かした演劇活動について、お仕事についての話はこれから社会に出る学生の方、今働き方を見直している社会人の方も大変勇気づけられる内容になっていると思います。又、田口さんが働かれているところは表現活動に大変理解がある会社で、そちらも必見です!!

それではどうぞ!!

社会人役者プロフィール

名前 田口 ともみ
役者以外の職業 求人広告の営業(課長代理)
雇用形態 正社員
残業時間 月20〜30時間
勤続年数 8年目(新卒入社1社目)
役者活動について会社には 言っている。(むしろ社長が観に来る)
主な出演作 2009年
劇団綺畸2009年度夏公演「STRANGE CHAMELEON」@駒場小空間(6月)
カムヰヤッセン第4回公演「トラベリング・オン・ザ・シャーレ」@シアターグリーン(9月)

2010年
立ツ鳥会議 年度末公演「さよならフィクション」(3月)
たすいち 第6回公演「あなたのひとみにうつらない」@王子小劇場(7月)

2011年
劇団ダブルデック第1弾「おかえりバトル!!」(10月)

2012年
水槽ラドン よんかいめ。「Kの称号」@東松原ブローダーハウス(8月〜9月)

2017年
mooncuproof#6 「ワタシタチにとって十分な時間について」@十色庵(1月)
ラボジェンヌvol.3 「ノエルのゆめ」@横浜人形の家あかいくつ劇場(11月)

2019年
正直者達8発目「白骨芝居」@シアターミラクル(2月)

※劇団ダブルデックメンバー。年1回、公演を行っている。

現在の仕事について

―早速ですが、現在どのような仕事をしていますか?

田口さん
現在は求人広告の営業の仕事をしています。「求人を出したい」と考えているお客様に対して、色々なサイトに求人広告を載せて頂くよう提案するお仕事で、求人広告をどう出していけばいいかを考えたり、掲載記事の作成も行っています。

―すごい、そのような仕事があるのですね…!!

田口さん
私も就活するまで知らない世界でした(笑)でも実は同業の会社は250社くらいあって、私が働いているところもそのうちの一つです。

―求人広告の営業というと、どういった場所へ営業に行かれるのですか?

田口さん
求人をしている企業やお店は全てお客様になりうるので、業界や職種を問わず色々なところに行きます。だから普通に過ごしていたら出会うことが出来ない数の会社さんに実際に行って話も伺うことが出来て、それがすごく楽しいですね。

―業界が違うといる人の雰囲気とかもガラッと変わりそうですね…。

田口さん
そうですね、色々な職種の方の話し方や考え方のデータがどんどん増えていくので、役者としても大変有難い環境です(笑)

―現在の仕事をしようと思ったきっかけは何ですか?

田口さん
新卒の人向けの求人サイトって、登録の時に「適職診断」みたいなのが受けられるじゃないですか。それをやったときにおすすめ企業として出てきたのがきっかけです。その当時は大学院に行こうと考えていたのですが、「せっかくおすすめで出てきた企業だし…」と思って、調べてみると女性の活躍している会社だったので、そこ惹かれて入社しました。

―働かれている会社は、芸術活動等に大変ご理解があるのですよね。

田口さん
元々社長が劇団をやっていたので、とても応援してくれます。そういった社風もあってか、演劇以外にもいろいろな一芸を持った方が多いですね。後輩にはオペラをやっている子もいるし、元お笑い芸人とかバンドマンの人とかもたくさんいます。でも芸術活動を応援してくれる会社に就職したのは本当にたまたまで、入社当時はそういう社風であることも知らなかったし、まさか自分が卒業してからも演劇を続けるとは思っていませんでした。

―卒業時点で「これからはもう演劇はやらない!」ってすっぱり諦められましたか?

田口さん
どちらかというと、就職したら普通演劇は辞めるもんで、続けるのは一部の人だけなんだと思っていたという感じですね。辞めることに疑問はなかったけれど、もし自分でも続けられるということを知っていたら、その時点でも続ける道を選んでいたと思います。だから会社員役者として活動し始めてからは「大学卒業してからここまで役者活動を続けられるとは…」と驚きの連続でした。

―続けられるかどうかって、本当にやってみないと分からないですよね…。現在会社のご理解があるということは「この日はお芝居の本番があるのでお休みします。」みたいなことは言いやすい環境ですか?

田口さん
そうですね、「やることをやっていればいいよ」という体制で、基本的に休みも取りやすいです。仕事を覚えたての時期にたくさん休んだりするのは難しいかもしれませんが、私は入社1年目秋の時点では既にお芝居も再開させて頂いていましたね。その時は先輩がやっている社会人劇団(水槽ラドン)からお誘いを頂いて、それも出るかどうか迷っていたのですが、上司に相談したら「いいね!観に行くよ」と快く言ってくれたので、実現しました。

―業界全体として、休みが取りやすい体制ではあるのですか?

田口さん
それでいうと、そこまで休みがとりやすい業界ではないと思います。他の会社の事情についてそこまで知っているわけではないのですが、求人広告は毎週末にあらゆるものの締切が来るので…そのタイミングでお休みを頂けているのは、本当に今の会社に理解があるからですね。

―残業に関しては如何ですか?

田口さん
勤続年数が長い為、後輩のマネージメント業務等もあるので、そういった場合は時間外労働もあります。

―会社でも頼られるポジションなのですね。そんな中現在は年間何本くらいの作品に出演しているでしょうか?

田口さん
一番多い時で4本です。社会人劇団は大体3ヶ月スパンで一つのお芝居を作るので、社会人劇団中心に4本出演となると、一年中何かしらのお芝居には携わっている状態が続くという感じです(笑)

―出演本数でいっても単純計算で春夏秋冬必ず1本出ているという形になりますよね…!後これは個人的な興味で伺う話なのですが、営業の仕事をしているときに何か意識していることとかってありますか?私は割と営業活動的なものが全般苦手で、それを仕事にしている方が何に気を付けているのか等が、すごく気になっていて…。

田口さん
私は人見知りなのですが、だからこそ「自分とのコミュニケーションを通して相手に嫌な思いをしてほしくないという」思いがあって、そこに気を配りながらお話はしているかもしれません。営業はある程度の押しの強さは大切かもしれないのですが、「それと厚かましさは違うぞ!」というのを念頭に置いていて…後、せっかくお会い出来たのだから、結果はどうあれ、目の前の相手に楽しんでもらえるようにその時間を使いたいとは思っています。

―その場にいる人を楽しませる為に全力でパフォーマンスをするけれど、押しつけがましいものであってはいけない…実は営業は仕事そのものが演劇ととても似ているのかもしれないですね。少しだけ苦手意識が薄れたかもしれません。

学生時代の活動、劇団ダブルデックのこと

―演劇はいつから始めましたか?

田口さん
最初にやったのは中学でしたね。小学校時代仲良かった友達が皆別の中学に進学しちゃって、友達が全く出来なくて…「これはまずい」と思って演劇部に入ったのがきっかけです。でもそこから少しブランクがあります。高校には演劇部がなかったので、そのときは文化祭で出し物として劇をやっていたくらいでした。

―高校でしばらく演劇を離れていて、大学でまた再開しようと思ったきっかけって何だったんでしょうか?

田口さん
演劇サークルがものすごく勧誘をしていて(笑)でもそれを見て「そういえば中学のとき演劇やっていたなぁ」ということを思い出して入ったという感じです。だから入学当初はラクロス部とかも検討していました(笑)

―では本当にご縁というか、タイミングがあったからこそ今の活動もある形ですよね…。

田口さん
そうですね、そのサークルに所属したのも、たまたま私が東京女子大学生で、演劇系のサークルが一つだけしかなかったからというのも大きくて…。

―そうだ、劇団綺畸でやられていたんですよね。綺畸は学生演劇の団体の中でもすごく大きいところという印象です。

田口さん
確かに規模は大きめだったかもしれないです。後劇団綺畸は東京大学と東京女子大学のインカレサークルなので、「駒場小空間」を使わせてもらうことが出来ました。駒場小空間は東大の中にある劇場なんですけど、天井も高くて、客席も100席以上作れるので、ちょっとした小劇場と同じ環境で芝居を作れたんですよ。人数も私が在籍していたときは3学年合わせて40人くらいいたので、やれることの幅は広かったです。

―わぁ贅沢な環境ですね…!!

田口さん
本当に有難いことに、環境は恵まれていました。他にも駒場小空間で活動しているサークルがいくつかあってそれぞれ助け合う体制も出来ていたので、100人くらいの人数で公演を動かすことが出来て…本当今思い返しても、すごく良いところでお芝居をさせて頂いていましたね。

―それじゃあ、たまたま巡り合わせもあって入ったサークルだったとはいえ、相当打ち込まれたのではないでしょうか。

田口さん
そうですね、綺畸は公演以期間以外にも基礎練っていうのが週三回くらいあるんですよ。基礎練では体力づくり的なメニューも結構あって、部活さながらに頑張ってやっていました。その分先輩後輩とも仲良くなれて、そのときの関係が今も続いています。

―そこまでたくさん活動している団体だと、卒業後も演劇続ける人は結構多かったのではないですか?

田口さん
いやお客さんとして観に来てくれる人は結構いるのですが、辞めちゃう人の方が多いですね。私の同期で言うと、ダブルデックのメンバーくらいしか続けていないです。

―意外でした。そんな中お芝居を続けている数少ないメンバーが、ダブルデックさんに所属されているということですね。

田口さん
そうですね、ダブルデックも立ち上げは学生時代で、それも卒業公演を区切りに一度活動を終了していました。ただ、私が一足先に先輩の公演に出たり、他にも演劇を続けている先輩もいるのを見た主宰の「やっぱ、やることにします。」の一声をきっかけに再結集しました(笑)

―所属メンバーは全員社会人ですか?

田口さん
劇団員はみんな会社員です。客演では何人か専業の方もお呼びしていますが、基本的には会社員の方が多く、今度のGWにやるお芝居に出演する役者も、客演含め18人中13人が会社員です。

―公演は年間何本くらいやられていますか?又、脚本はオリジナルのものと既成のもの、どちらが多いですか?

田口さん
公演は1年に1回公演です。作品は毎回オリジナルのものをやらせてもらっています。再演も今まではありません。

―メインで動ける劇団員の方は5名で、それぞれ全員会社員とのことですが、職種はそれぞれ全く別ですか?

田口さん
別ですね。でもスケジュールや休みのタイミングは割りと共通していると思います。基本的にダブルデックのメンバーは平日忙しい職種の人が多いので、平日夜の稽古は難しくて、その為、多分、専業役者さんがメインの団体さんよりも長く稽古期間を取っています。

―稽古期間は具体的にはどれくらいなのでしょうか?

田口さん
他の社会人劇団とあまり変わらないかもしれませんが、大体3ヶ月前くらいからですね。3ヶ月前の時点では土曜か日曜どちらかだけの稽古で、1ヶ月半を切ったタイミングで毎土日に集中稽古を行います。後毎公演に1回、必ず合宿をやっていますね。

―合宿!?

田口さん
そうですね、毎回ちょっと遠方の体育館とかが付いているような合宿所を取って、土日1泊2日、時間の許す限り稽古を行います。そこで全体の動きを詰めたり、台本の精査等をしたり…ダブルデックのお芝居はとにかくいっぱい動くから動きながらの稽古が本当に大事で、ここで一気に完成度を上げるつもりで毎回頑張っています。

―大人の力を持って演劇の為に行う合宿…これは絶対に楽しいし、実のあるものになりますね。そして、ダブルデックさんは動ける人が揃っている団体なのですね。

田口さん
いえいえ、客演でそういった方をお呼びして、劇団員は何とかそれに着いていくという感じで…(笑)でも確かにライブ感は大切にしています。基本的には会話劇ですが身体的な表現も多めで、歌やダンスのシーンもあります。「スポーツ演劇」と銘打っていて、扱う題材はその時々で変わりますがそこは一貫していますね。その為稽古も実寸をしっかり測ってやっていて、今回の公演も演出助手の方に4人くらい来て頂いています。

―スポーツ演劇、聞いただけで観終わった後の爽快感が分かります。作品のテーマはどのようなものが多いですか?

田口さん
結構その時々の劇団員のライフステージが作品のテーマにも反映されることが多いと思います。例えば去年は「30歳になること」が主題だったし、3年前は「何故私たちは働いているのか」がテーマでした。でもこういう等身大のテーマを扱うからこそ、大真面目に描いて説教臭いありふれたものになってしまうのは嫌だということで、如何に辛気臭くなくコミカルにやれのるかというのは毎回意識して作っています。

―そういったテーマは、それこそ会社関係の方が観に来て下さったときにも響くというか、興味を持って頂きやすいですよね。

田口さん
そうですね、そういわれてみると、会社が演劇活動を応援してくれている分、演劇以外の場所で出来たコミュニティからどれだけお客さんを連れて来れるかというのは常に考えているかもしれないです…。それも無理やりではなく喜んでもらえる形でというのが重要で、特に私の周りの人は「付き合いで…」みたいことではなくて、元々演劇が好きで観に来てくれる方も多いので、本当に公演が面白い時には心から楽しんで下さるし「次も見たい」って言ってくれるんですよね。それがとても良いプレッシャーになっています。

結婚とお芝居の関わり

―劇団ダブルデックさんは、来年10周年を迎えるんですよね。結成当初から何か変わった点はありますか。

田口さん
結婚をしたメンバーが増えたことですね。劇団員同士で夫婦のメンバーもいるので、例えばこれからもし子どもが生まれたりしたら、どう活動していくのかというのは、考えていかなくてはならないことだなぁと思っています。

―田口さんもご結婚されていますよね。主婦と会社員と役者の両立…大変さは想像するに余りあります。

田口さん
主人の理解がすごくあるので、両立出来ています。家事も手伝ってくれて、演劇活動も応援してくれていますね。

―旦那さんがご理解下さっているというのはいいですね。

田口さん
基本的に公演期間中は土日が別行動になってしまうので、そこを何も言わずに稽古に送り出してくれるというのは、理解があってこそだと思います。主人も嫌々ではなく心から応援してくれているのは本当に有難いですね。

―素晴らしい旦那さん…!!ということは知り合ったのも演劇がきっかけだったのですか?

田口さん
いいえ、主人とは会社で知り合いました。元々共通の趣味があったことがきっかけで結婚に至りましたね。実は二人ともAKB48が好きで、私が「#告れ日本PROJECT」という、AKB48のシングルのタイトルにちなんだ27時間テレビでのプロポーズ企画に応募して、逆プロポーズしました。

―わぁ素敵ですね!!そんな旦那さんは演劇にもご理解を示してくれているのですね。

田口さん
すごく理解してくれていますね。アイドルが好き…というのが関係あるのかは分からないのですが、一生懸命何か表現活動をしている人に心打たれるみたいで、いつも応援してくれています。後、結婚式を3月にやったので、ダブルデックのメンバーと主人で「ひな祭り公演」と題してお芝居をやってもらったんですけど(笑)それをすごく楽しんでくれたみたいで、演劇のこともさらに好きになってくれました。

―役者ならではな結婚式エピソード…!!結婚式って大きい公演一つやるくらいの大変さがある印象ですが、お芝居をやっているからこそ凝り甲斐のある部分も多そうです。

田口さん
そうですね、ちょうどいろんな公演に参加していた年と同時期くらいに結婚式もあったので、大変な部分もありましたが、同じく演劇をやっている妹に協力してもらったり「ここでこの音楽を流す」とかも決められたり、とても楽しかったです。

―結婚をしてから、何かお芝居に変化はありましたか。

田口さん
家庭を持つときに必要な覚悟がどのようなものなのかを、経験を以て知ることが出来たのは大きいです。実際そういった役を頂いた時も、結婚する前よりもしっかりとしたイメージが描けるようになったと思います。

―結婚という人生において大きなイベントも、やはりお芝居に関わっていくのですね…!!

仕事について

―お話を伺っていると、将来も役者専業でやるといったことはなさそうですよね?

田口さん
未来のことなので何とも言えない部分はありますが、今のところはないです。今の仕事が好きというのもありますし、会社員としての生活があって芝居の質が担保されていることを肌で感じているので、よほど大きな環境の変化とかがない限りは辞めないと思います。反対にお芝居に関するアンテナを張っているからこそ、仕事にも常に前向きで楽しく取り組めているのだと思いますし…。

―「仕事によって芝居の質が担保されている」というのは、最初にもお話下さった「実際に色々な人のお話を聞くことが出来る」という部分が大きく関わっていますか?

田口さん
そうですね、実体験を持っているのが私の役者としての強みだと思っています。実際に間近で見たり聞いたりしたものの方が実感を持って演じることが出来て…もちろん場数の多さとか研究とかで経験のない部分をカバーしている役者さんもいらっしゃるんですけど、でも私はやはりそこで勝負したい。だから今仕事を通して得られているものはこれからも大切にしていきたいですね。

―例えば役者以外の部分で…例えば劇団の運営等をしていくにあたって、会社での仕事が役に立っている実感はありますか?

田口さん
ありますね。やはり会社員が主体となってやっているので時間も限られるのですが、限られた時間で仕事をしなくてはいけない会社員としてのノウハウが生きていると思います。運営に関してはそれぞれ会社員としての仕事での経験を生かした部分を担当してもらっていて、劇団の広報、スケジュール作成等それぞれ担当メンバーもいます。私は劇団の営業部長を自称していて(笑)集客に関して普段の営業の仕事を活かせたらと思っています。

―劇団でも営業を!演劇においての集客ってどのようなことを意識されていますか?

田口さん
Twitter等SNSを出来る限り活用したり…先ほど言っていた趣味を通して出来た知り合いが観に来てくれたりすることはあります。後これは私の今の環境が恵まれているというのも大いにあるんですけど、会社の上司や社長だけでなく、取引先の方も観に来て下さりますね。これは今の会社に居ながら演劇をやっていて、本当に良かったなと思うところです。

―先ほどおっしゃっていた「演劇以外のコミュニティのお客さん」の中には取引先の方もいらしたのですね!!そこがお客さんになったらこんなに良いことはないですよね…。

田口さん
求人広告の仕事って、社長や人事部長などの役職の方とお話する機会が多くて、意外にお芝居観るのが好きな方も結構いらっしゃるんですよ。たまたま雑談でさらっと「演劇やっていて…」という話をすると「演劇見るの好きだから、今度観に行かせてよ」と言って下さる方が多いので、今はなるべく何処に行っても言うようにしています。

―それで実際観に来て下さるのは素敵ですね。

田口さん
有難いことに結構皆さんの方から「好きだから観に行きたい」と言って下さって、実際に予定が合えば観に来て下さるので、こちらとしても「誘っていいんだ」と思えるのが有難いです。この前の「白骨芝居」も観に来てくれて、そういった会社等で生まれた縁を頑張っている演劇に繋げられるのが嬉しいですね。

―今回GWに公演をされるから、特に会社関係の方からの集客があるというのは大きいのではないでしょうか?

田口さん
そうなんですよ、今回の10連休、すごく色んな団体さんが同時期に公演をやられるので、特に演劇関係のお客さんを呼ぶことも難しくて…!!本当に感謝しています。

―反対に、役者をやっていて会社員生活で役に立ったことってありますか?

田口さん
これも今働いている会社ならではのものになってしまいますが、やはり表現活動をやっている人が多い会社なので、自分も演劇をやっているという経験を通して社歴の離れた後輩とかともコミュニケーションが取れるのは有難いです。後は同じく自分の表現活動を続けたいと思っている新入社員が「社会人になっても自分の好きなことを続けることが出来るんだ!」と希望を持ってくれることもあって…そういう部分で少しでもお役に立てていることを実感できると、「今の立場で演劇をやっていて良かった…!」と思えます。

―田口さんが入社以来お芝居を続けてきたという経験は、多くの人にとっての希望になると思います。

田口さん
私自身も本当に今の会社の人にはすごく助けられていて…だからお芝居も続けてこられたんだと思います。初めからお芝居続ける気満々で就職したわけではなかったので、もし最初に再開した時点で上手くいっていなかったら、もしかしたらその後続けることはなかったかもしれませんし…。

―企業側の立場からそういうものを応援してくれる声を聞くことが出来ると、本当に励みになります。

田口さん
少しでも就職とか、自分の気持ち以外の部分で表現活動を諦める人が減ればと思い、自社の説明会でも、自分の演劇活動についてのお話をさせて頂いています。本当に微々たる活動ではありますが、「卒業しても自分の好きな演劇を諦めなくていいんだ」ということだけでも知って帰って頂ければいいな、といつも思っています。

―学生時代って就職してからの過ごし方とかってイメージ沸かないですもんね、だからこそ、実際にやっている人の声はとても重要だと思います。

田口さん
特にサークルとかに所属して活動していると「毎日練習」みたいなのが当たり前のところが多いので、それが基準になってしまうと、なおさら就職後に演劇を続けるのは「絶対に無理」って思っちゃいますよね。でも環境や練習方法が変わっても、本人の気持ちさえあれば絶対続けられると思うんです。

―続けていく為の道筋が、世の中にたくさんあるということだけでも、もっと多くの人に知って欲しいですよね…。

やりたいこと、出来ることをやっていく大切さ

―田口さんは今の会社がまさに適材適所であるようにお見受けします、例えば今後別の仕事をやりたいとか考えることはありますか?又もし転職をすることがあるとしたら「演劇の活動を応援してくれるようなところ」というのは視野に入れますか?

田口さん
そうですね…今のお仕事が本当に好きで、現時点でお芝居と仕事の両立も出来ているので、あまり転職とかをするイメージは出来ていないというのが現状です。子どもが好きなので、いつか保育をはじめとする福祉系の職業の待遇を改善するような仕事をしてみたいとはずっと思っているんですけど、それも今の会社を通して出来たらなぁと思っている部分も大きくて…。

―お話伺っていても本当に素敵な会社であることが伝わります。

田口さん
反対にそれら全てを押して「やってみたい」と思える他の仕事に、もし今後の人生に出会ったら、それは私にとって「転職しどき」なのかもしれません。その仕事が例え演劇との両立が難しいものであったとしても、そこまで惹かれるものだったら1回はやってみると思います。私の場合、劇団に所属しているから何らかの形で演劇活動には参加しやすい、というのもあるかもしれませんが…。

―確かにそこまで自分とぴったりくる仕事があったら知りたいし、お芝居は辞めないかもしれないけど、やってみたい…。

田口さん
でも誰しも必ずぴったりくる仕事ってあると思うんですよね。求人の仕事をしていると特にそれを思います。だから逆に、強烈に自分がやりたくない部分がある仕事はやらない方がいいのかもしれません。例えやりたいことが出来たとしても、やりたくないことの部分が辛くて辞めてしまう人も多いので…。

―日本人特有のもの…なのかどうかは分かりませんが、「やりたいことをやる為には苦手なものも辛くても頑張ってやらなくてはいけない」というイメージがあるのですが…。

田口さん
その度合いとかにもよるとは思うんですけど、例えば経理みたいな作業って、すごく苦手って人と、すごく得意な人、それぞれいると思うんですよね。他にも、マルチタスクを満遍なくこなせる人もいれば、何処か1点すごく突き詰めていく人もいたり…。でもその中の誰かが特別偉い訳ではないじゃないですか。もし、自分の特性が職場に合わなかったとしてもそれは誰が悪いというわけではなくて、何というか海水で淡水魚が飼えないのと同じようなことだと思うんです。海の水が合わないからと言って淡水魚が劣っているわけではない。

―そういう言葉に救われる人は、とても多いと思います。

田口さん
多分何かすごく嫌なものを抱えながら生きていると、好きなこともそれに引っ張られてしまう気がするんです。それが原動力になる人もいるのかもしれないけれど、私はそういうのは嫌だなぁと思うので、私自身も仕事や演劇みたいな好きなものを何かの捌け口にしないということは心がけています。自分の好きなものを何か別のものに対するストレス発散に使ってしまうのは、演劇や仕事がかわいそうな気がしてしまうので。

―自分が好きなものを100%楽しめる環境に身を置く大切さ、というところですよね。

田口さん
そうですね、そしてどういう環境が自分にとって最適かは、やはり実際に動いてみないと分からない部分も多いんですよね。

―演劇と会社員の両立も同様ですよね。やる前から諦めず、まずはやってみる必要があるのかもしれません。それが出来るかできないかはやってから分かってくる。今は多くの人が自分の進むべき道に関して悩む時期ですが、主婦、仕事、お芝居どれも楽しみながら磨いている田口さんの姿は多くの人にとって励みになると思います。本日は有難うございました。

インタビューを終えて

田口さんの会社員役者としてのお話は、表現活動に理解のある会社が増えて、小劇場界隈で度々嘆かれる「新しいお客さんが入ってきにくい問題」にもっと風穴が開けばいいなと思わされるものでした。

同時にその活動は、ただ「会社や旦那さんからの理解がある」というだけの理由で成立していたものではないということも分かりました。

印象的だったのは、「自分の好きなものが何かの捌け口になってはいけない」という言葉です。
例えば「自分にとってな嫌なことはしない」と聞くとすごくわがままに聞こえてしまうときもありますが、仕事にも演劇にも家庭にも100%誠実な田口さんからのお話を聞いて、何かに誠実である為にはまずそれを好きでいなくてはいけないということを再確認しました。

そんな田口さんの次回出演作品「地大さん家の150年+」は、5月2日から中目黒キンケロシアターで行います!!令和元年ド頭にふさわしい時代を振り返る作品とのこと。今までの時代を懐かしみ、新しい時代に希望を馳せる為に、是非皆さん予定を空けて観に行きましょう!!

田口ともみさんの次回出演作

劇団ダブルデック第10弾「地大さん家の150年+」
▪️日程:2019年5月2日(木)〜5月5日(日)
▪️場所:中目黒キンケロ・シアター(東急東横線・東京メトロ日比谷線「中目黒駅」より徒歩8分)

ご予約(田口さん扱い)
https://www.quartet-online.net/ticket/wdeck-vol10?m=0cfffjc
「地大さん家の150年+」公演詳細ページ
http://gekidandoubledeck.web.fc2.com/

聞き手:長谷川まる

東京都出身。セツコの豪遊(@setsuko_no_goyu)所属。会社員も役者もやっている。私も公演やります。詳細はツイッターをご覧下さい。