王子小劇場芸術監督、「マチルダアパルトマン」主宰。池亀三太さんの思い描く、「生活」に近い「演劇」とは?【前編】

今回は劇作家、演出家である池亀三太さんにインタビューをしました!

昨年、ご自身が主宰されていた「ぬいぐるみハンター」を解散し、「マチルダアパルトマン」を旗揚げ、それに加えて王子小劇場の芸術監督に就任されるなど、精力的に活動されています。

今回のインタビューでは、池亀さんの、芸術監督として、また劇団主宰としての取り組みについてお話を伺いました。

演劇も、草野球みたいに気軽にできるものになればいい

ー王子小劇場の芸術監督に就任されたのはいつですか?

池亀
去年の春頃ですね。劇団を解散したり、去年は変化の大きい年でした。

ー芸術監督に就任して、なにか心境の変化はありましたか?

池亀
そうですね、やっぱり自分のことだけじゃなくて、小劇場界全体をどう盛り上げていくか、考えるようになりました。

ー小劇場界全体について考えるようになったのですね。

池亀
正直、昔は「自分のとこ以外の劇団は潰れてほしい」って本気で願ってたんですけど(笑)

ーまあ、本音を言えばそうですよね(笑)

池亀
でも、同世代にしても下の世代からも自分の居場所が脅かされるほどのライバルみたいな存在がいないと業界全体が廃れていってしまうっていう当たり前のことに気付いたんです。

僕ら創作している側としては誰よりも面白いものを作って、どこよりも動員を増やしてっていう思いでそれぞれやっているんでしょうけど、お客さん目線でいったらあっちでもこっちでも面白い演劇が産まれているという状態が絶対にいいはずなので。

それと、「本気でやってる人」以外認めないスタンスでやってると、小劇場界全体が縮んでいっちゃうなって気づいたんですよね。
本当はアマチュアを認めた方が、より面白いものが生まれやすいと思うんですよね。

ーアマチュア、ですか。

池亀
実際僕だってプロって言っていいのか、アマチュアなのか分からないしどこまでも線引きが曖昧じゃないですか。僕はプロのつもりでいても、うちの親は僕のことそう思ってないと思うし。

でも、そういうアマチュアだったり、プロを目指さない人の存在もどんどん認めていきたいって思ってます。

スポーツでもプロ野球人気を支えているのは、草野球や少年野球をやっている人たちの存在が大きいと思うんです。自分がプレイするからこそ、観客としてもより楽しめる側面もあると思います。

ーなるほど、プロでもない、観客でもない、その「中間」ですね。

池亀
最近、北区を拠点としたシニア劇団を立ち上げたんですけど、それもまさに「中間」ですね。

ーそれはアマチュアの劇団ですか?

池亀
はい、昔やっていたけどやめてしまった人や、興味はあったけれど時間がなくてできなかった人など様々なバックボーンを持った方たちが集まっています。

これからはシニア世代に限らず、例えば主婦やサラリーマンが趣味として演劇をやる、なんてことがもっと盛んにあってもいいと思うんです。
演劇を続けていて寂しいのは、辞めていった人たちの大半が「もう演劇はやらない」「観ない」っていう選択をして去っていくことです。

たとえ演劇で食っていくという夢が破れたあとでもちゃんと演劇が人生を豊かにしてほしいと思うんです。

「演劇」と「生活」を近づけたい

ー昨年は、芸術監督就任に加えて、「ぬいぐるみハンター」を解散して、新劇団「マチルダアパルトマン」を旗揚げされましたね。

池亀
はい、心機一転ですね(笑)。

ーどのような心境で旗揚げされたのでしょうか?

池亀
そうですね。ただ、お祭りという一時の熱狂で自分を麻痺させても、いつかは醒めてしまうし、それだと継続性がないんですよね。だから生活と地続きのところに演劇があることを目指しています。

ーなるほど。

池亀
そうですね。ただ、お祭りという一時の熱狂で自分を麻痺させても、いつかは醒めてしまうし、それだと継続性がないんですよね。

ーなるほど。

池亀
お客さんとの距離を近づけたいんですよね。自分たちの日常もお客さんの日常もどんどん演劇が入り込んでいけたらいいなと思っています。

観客参加型の劇団会議をしたり、制作チームを作ってオンラインサロン的にアイディアを募ったり、仕事を振ったり、今マチルダアパルトマンの周辺ではこれまでにない速度で様々な人たちが面白いこと考えてくれています。

ーどこからが客で、どこからが作り手か曖昧な感じ、ということでしょうか。

池亀
そうです、米米CLUBみたいな感じです(笑)

ーわかりやすい例えですね(笑)

インタビュー前半を終えて

「草野球みたいに演劇ができるようになればいい」というのは、とても素敵な考え方だなと思いました。

学生時代にはバリバリ演劇をやっていたけれど就職したら全くかかわりがなくなってしまった、という人は多いのではないでしょうか。

「演劇と生活の距離が近づけること」ができれば、もっと豊かに演劇と関われる人が増えるのかもしれませんね。

後編は、池亀さんが小劇場界の若手に向けて行っている取り組みについてです。
どうぞお楽しみに。

ライター:井上智裕

劇団春眠党主宰。脚本、演出、時には役者も担当。しばいのまち編集部員。
メール:koyoinoue@gmail.com
twitter:@inouetzz
劇団春眠党:https://syunmintou.amebaownd.com/