はたらく役者さん第二回目:善長 まりもさん【長谷川まる】後編

こんにちは、セツコの豪遊に所属している長谷川まるです。

お芝居とそれ以外のお仕事を両立しながら輝いている役者さんを追う「はたらく役者さん」シリーズ、第2回目です。有難いことにこの企画を初めてから様々な社会人役者の方を知る機会が増え、私自身も日々鼓舞されています。

今回は総合職で営業の仕事をする傍ら、学生の頃からやっていたお芝居を、昨年再開された善長まりもさんへのインタビューの後編です!

※インタビュー前編はこちら↓

はたらく役者さん第二回目:善長 まりもさん【長谷川まる】前編

2019.03.04

様々なエンタメに触れた学生時代

――今までお話を聞いていて善長さんってすごく視野が広いというか、色々な世界を加味して物事を見ていらっしゃるなあと思います。

善長さん
そうですね、視野を広くというのは昔から意識していたことかもしれません。元々何においても一つを深堀りするより、気になるものは全部やってみるという性格で、元々芸術に関しても色んな分野のもの好きだったんです。中学の頃から演劇部には入っていましたが、その頃から映画や音楽も大好きで、実は今現在も音楽は演劇より詳しいかもしれないです。

―そうだったのですね!でもそんな中、音楽の方面にいかなかった理由ってなんですか。

善長さん
一応、高校では軽音楽部でベースをやっていたんですけど、一緒にやっている子たちと比べて実力の差を感じてしまい、そんな中文化祭の出し物だった演劇を取り仕切る機会があって、それがすごく楽しかったんです。

私の母校は全国的に見てもかなりの来場者数を誇るところで、クラスでやる出し物にもかなり力を入れていました。私のお芝居も有難いことに全く知らない人からも良いと言って頂いて、それがすごく自信になりました。そこからもっと演劇をやりたいという思いが強まり、舞台のオーディションや、映画のWSに参加するようになりました。

―そのときの経験が大学、そして現在の役者活動につながっているのですね。

善長さん
そうですね、でも元々はずっと早稲田に入りたかったんです。やっぱり演劇といえば早稲田で「早稲田には面白い人がたくさんいる」と信じていたのですが、でも残念ながら落ちてしまって、当時は「インカレの早稲田のサークルに入るのは何か違う…」と何故か思っていたので、悶々としていました。

そんなとき、先日出演したコンプソンズ主宰の金子さんがやっている団体の新歓公演を見たんですよ。とんでもない芝居だったんですけど、それがめちゃくちゃ面白かったんです。明治大学にもこんな面白い人がいるんだって、感動しちゃって、それで金子さんがやっていた映画のサークルに入りました。金子さんは演劇のサークルもやっていたのですが、映画のサークルの方が、音楽やファッションのこととか自分の好き分野をより広く追うことが出来る体制だったので、そちらに行きましたね。

―そこからさらに役者人生が加速していった感じですね。学生時代って色んな演劇を見たりしていましたか?

善長さん
めちゃめちゃいろんな演劇を見ていたっていうわけではなかったですね。面白い演劇を探すのって結構大変だなあとか、金額の高さと面白いお芝居ってイコールではないなぁとか思いながらいろんなお芝居を見ているとき、当時「栗☆兎ズ」という名前で活動していたウンゲツィーファの劇に出会いました。

―じゃあその時にオーディション受けてって感じだったんですね。

善長さん
いやその時はオーディションとかやっていなくて、直接の知り合いもいなかったので、SNSを駆使して「ウンゲツィーファの作品に出たいんですけど、どうしたらいいですか」とお送りしたんです。そこからご縁頂いています。

―そこからのご縁だったのですね!!その能動的に動く感じが素晴らしすぎる…。

善長さん
そんな人いないので、面白がってもらえたんだと思います(笑)
でも演劇ばかりやっていたわけではなくて、映像作品に参加したり、後はお笑いもやっていました。明治のお笑いサークルは結構有名で、女性が必要なコントとかに参加していました。同期でそのままプロの芸人になった子もいます。

―聞いていても、確かに幅広く活動していらっしゃいますね…!!

善長さん
やはり当時も、自分のやりたいものを幅広くやっていくという方が合っているなあと思っていましたね。

何故就職を決意したのか

―お話伺っていると、学生時代の善長さんの周りには、卒業後もお芝居主体でやっていく方ばかりであるように感じました。例えば私は学生時代、普通に皆就職するようなところにいたので、自分も専業の役者でやっていくようなイメージがなかったんですけど、それだけ周りに芸術の道を目指す方がいても、卒業後、お芝居とか自分のやってきたものを専業で続けていきたいという思いは全くなかったのでしょうか?

善長さん
そうですね、学生を卒業して生活の主軸を演劇に移すようなことをするつもりはありませんでした…というか自分には難しいと思っていました。学生時代から今もずっとお世話になっている仲の良い演出家の方がいるのですが、その人が何かの会話の流れで「善長さんが二階堂ふみみたいになるのは難しいなぁ…たぶん短くても10年くらいかかるだろうなぁ」と言っていたんです。

―うわぁ、それはぐさっと来るなぁ…。

善長さん
その方はもちろん悪意とか嫌味で言ったわけではないんです。でもだからこそ、その言葉がすごく刺さって。今の私がお芝居の道で食べていくことって、それだけのリスクがあることなんだということを、その時すごく感じたんです。

改めて考えてみると、演劇に対する熱量もスキルも周りの人と比べると少し不足しているなと思い、それだったら今まで培ってきた経験や今あるスキルを通して、お金を稼ぎたいと思って、就活をすることを決意しました。

―すごく色々考えて就活の道を選んだのですね。そこからしっかりと会社への就職を決めているのは素晴らしいことだと思います。

善長さん
でも、就活は結構辛かったですね。正直演劇とか他のやってきたものを離れて、今の自分が何の仕事をしたいかなんて学生の頃は分からなかった。

そんな中一番行きたいと思っていたエンタメ系の企業も何回目かの面接で落ちてしまって、でも周りを見れば、いい意味で今までの活動をスッパリ諦めてお給料のいいところとかに就職を決めている人たちがいたり、高校の頃一緒にバンドやっていた子がプロになって有名なアニメーターの方の事務所に行っていたり、それぞれの道を立派に進んでいて、その当時は人と会うのも億劫になっていました。

今は自分の選んだ道にも仕事にも納得しているんですけど、その頃は辛かったです。

―私も就活は順調ではなかったので、その感じちょっと分かります。でも現在は自分の選んだ道に納得していらっしゃるのですね。今の仕事は楽しいですか?

善長さん
楽しいですね。もう少し自分の好きな芸術分野に仕事も近づけたいという思いはあるのですが、今の仕事が嫌いというわけではないですし、本当に充実しています。

仕事と演劇、両方あるからどちらも楽しめる!!

―演劇を始めてから、お仕事の方で変わったことってありますか?

善長さん
元々主張したりするのが苦手で、結構自分の思っていないこととかにも「そうですねー」みたいな相槌を打ってしまうタイプなんですけど、そういえば稽古場ではしっかり自分の思っていることを言えていたなぁということを、演劇を再開してから思い出し、そこから職場でも思っていることは適度に言えるようになりました。

後は、単純に全く仕事以外の活動が出来なかった一年目よりは、仕事のパフォーマンスも上がっている気がします。稽古があるからこそ、定時で帰る為の効率の上げ方についても考えるようになったし、逆に演劇をやれているからこそ、会社員としての仕事もきちんとこなさなきゃと思えるようになって、いい刺激になっています。実は、この間の公演期間中にも会社で大きなプレゼンがあったんですよ。


その時の公演写真

―えぇ、それは本番二つ抱えているみたいなもんじゃないですか。

善長さん
ここでミスしたら、絶対に「演劇の本番が被っているからプレゼン内容も疎かだったんだと思われるじゃないですか。そうしたら今後ミスした時も演劇をやっているせいにされるだろうなぁ…とか考えると絶対に手は抜けなくて、だからやっぱり仕事にプラスして演劇をやっていて良かったなあと思っています。

―好きなことをやれている環境だからこそ、お仕事にもいい刺激があるということですね。逆に演劇の方で、お仕事の方の影響を感じることってありますか?

善長さん
そうですね…やはり専業の役者さんは場数がちがうので、一緒に舞台に出ていると、何度も「かなわないなあ」と思う場面が出てくるんですけど、だからこそ「こいつ会社員だから芝居もそこそこだなとか思われたくない」という思いが常にあって、すごくそれが役者をやっていく上での良い刺激になっています。

後これはお仕事に関してとはちょっと違うんですけど、何かパフォーマンスをしているということが自分の強い武器になっているということを感じます。社会人になってお金が増えた分、より交友関係が広まって、自分の関心のあるクリエィティブな分野の人とお話する機会も増えました。

そんなときにただ好きであることを伝えるだけではクリエイターとファンの関係になってしまうけれども、「演劇をしている」と言えることで同じパフォーマンスをしているもの同士として話すことが出来るのが嬉しいです。

―そうしたら将来会社を辞めて演劇一本でやっていきたい…みたいな気持ちもないですか?

善長さん
今のところはないですね。自分の性格を考えても、ここから先もやることを一つに絞る生き方は違いますし、会社員としての自分だからこそ演劇にずっと関われていると思っているので…。後、社会人になってから再び演劇を始めたことによって、「会社員として舞台に参加している自分も、少しは需要がある人材なんだ」と思えて、それが一つ役者を続けていく上での自信にもなりました。だからこれからもお芝居一本で食べていくということはあまり考えていないです。
―仕事をしているからこそ、自分の一番望む形で演劇に携わることが出来ていらっしゃるのですね。最初ご連絡下さった時に「学生時代に演劇をやっているときには見えなかったものがあった」というお話をして下さっていましたが、今お話下さったのがそういった部分でしょうか。
善長さん
そうですね。後は演劇がやっぱりすごく好きなんだっていうことです。就職したらもうやることはないだろうと思っていた演劇でしたが、離れてみたらすごく好きだったんだということが分かりました。これは社会人としてお芝居をやれない期間があったからこそ気付けたことだと思います。

―演劇から離れていた期間があったからこそ、演劇の大切さが分かったのですね。就職してからお芝居に関われない期間があった人って、私も含め少なくはないと思うのですが、善長さんのお話を通して、そういった方々も過ごしてきた時間が無駄ではなかったことを感じることが出来ると思います。今日は有難うございました。

インタビューを終えて

昔から、様々な芸術分野での知識を蓄積してきた善長さんはとても視野が広く、今回お話を聞いていても、常に「役者という立場の自分」を客観視していらっしゃいました。又、その広い視野を持っているからこそ、演劇の分野から遠く離れた会社員と働いている経験を、演劇をライフワークにしていくモチベーションを作る為に生かすことが出来ているのだと思います。

個人的に印象的に残ったのは、社会人になってから改めて演劇の大切さに気付いた、というところです。

本文にも書きましたが、学生時代演劇に打ち込んでいて、社会人になってからやりたくても出来なくなってしまった期間がある人は少なくないと思います。もしかしたら今現在、全く出来ていない期間中の方もいらっしゃるかもしれません。そういった期間が生んだ、お芝居が出来ないことへのストレスや苛立ちは、ともすればネガティブで後悔の種になってしまいますが、今回善長さんは、それを演劇を好きだということを再認識する為の材料として前向きにお話して下さりました。今再び舞台で輝いている善長さんの姿は、私含め多くの方の希望だと思います。

そんな善長さん出演の舞台は7日(木)から始まります。今度のお芝居はパワフルな善長さんが見られるそうです。これはみんな見に行くしかありませんね。予定の空いている方は絶対に行きましょう!!

善長まりもさんの次回出演作

小田尚稔の演劇「是でいいのだ」 “Es ist gut”
■日程:2019年3月7日(木)〜11日(月)
■場所:SCOOL(中央線・総武線の三鷹駅南口より3分)

ご予約(劇団扱い)
https://481engine.com/rsrv/pc_webform

『是でいいのだ』公演詳細ページ
http://scool.jp/event/20190307/

聞き手:長谷川まる

東京都出身。セツコの豪遊(@setsuko_no_goyu)所属。会社員も役者もやっている。