ターゲットの重要性について(後編):「演劇」という旅の日誌4ページ目【槙本擁】

どうも槙本@YoMakimoto です。

Y’s ExP.というカンパニーで代表、脚本、演出をしております。

さぁ、それでは前回お話した「あらすじぼやぼや問題」の続きからお話ししましょう。

前回記事↓

ターゲットの重要性について(前編):「演劇」という旅の日誌3ページ目【槙本擁】

2018.08.15

書き渋りぼやぼや

あらすじぼやぼや問題の原因は大きく二つあると言いました。

一つはあらすじを書く本編が仕上がっていないから。そしてこれからお話ししたいのはもう一つの原因が、ネタバレを必要以上に気にし過ぎて書き渋ってぼやぼやするパターンです。

これに関しては非常に難しい。

作り手は隠したがります。もちろんミステリーの場合は隠したほうが良いこともあるでしょうが、そうでなくても作り手は隠したいものなのです。
作り手は自信と不安という二律背反のような精神状態を常に持ち合わせています。

書いた本やプロデュースした公演に自信があっても、それと同じく不安もある。だから少しでもお客様にサプライズ要素や意外性を残しておきたいんです。ただ、その不安が作品の良さを伝わりづらくしてしまっていると思うのです。

お芝居、小演劇の醍醐味は物語だけでしょうか。違います。生身の人間と光と音が目の前で高い次元で融合して生まれる、美しい瞬間を目撃できることです。

例えば、居酒屋を営む主人。よく働くバイトの女の子が、行き別れた実の娘だったとします。その事実より、その事実を知った両者の感情の動きに人は心を動かされるのではないでしょうか。

素晴らしいものは内容を知っても輝きを失わない

しかし物語の核心を隠したいがために本当にざっくりとしたあらすじになってしまい、どこにでもあるような作品っぽくなっているものもよく見かけます。

かくいう私も過去の公演ではネタバレを気にし過ぎてぼんやりとしたあらすじになっていたこともあります。

でも、それでは何も伝わりません!!

映画でも舞台でも素晴らしいものは内容を知っていてもその輝きを失いません

勇気を持って、もっとつまびらかにして本当にそれが見たいと思ってる人にちゃんと届けることの方がよっぽど重要なのです。

そしてこの不安でなんとなく隠してしまっているパターンに陥っているのも「ターゲット」が絞れていないからだと思います。

届かなくちゃ意味がない

みんながTVを見ていた時代。CMの効果は絶大でした。

昼間、奥様が見る時間帯には化粧品、夕方子供たちが見ているアニメにはおもちゃやお菓子、夜の野球中継の合間にはビールや車のCMと言ったように番組を視聴するターゲットに沿った企業がお金を出して、番組を制作し、その間にCMを打っていました。

そして今はネット社会になり、広告はよりパーソナルなものにフォーカスしていっています。アマゾンや楽天のおすすめ。それから一度見た商品が他のニュースのウェブページの広告に出てきたりしませんか?

ネットの広告自体も記事を読むであろう人に向けたものになってます。

動画も無料で見れて、あらゆるコンテンツ、商品が瞬時に手に入る現代において、商品の存在を誰かに届けるというのはそれくらいやらないと難しいことなんです。というかそれくらいやっても難しくなっているんです。

小演劇においてこの宣伝広告の部分はことさらあまりうまくいってない気がします。

その理由が最初に戻りますが「宣伝する相手が明確になっていない」つまりターゲットが絞れていないということだと思うのです。

もっと言ってしまえば作品だけではなく劇団やカンパニー自体がそもそも誰の為、何のために演劇を創造しているのかわかっていないところが多い気がしています。

あなたの言う「お客様」とは誰のこと?

「お客様の為」

ではどんなお客様でしょうか。

あの大ヒット作品「君の名は」ですら批判する人はたくさんいます。賛否は必ず生まれます。しかし極論ターゲットに100届いて、喜んでもらえればそれでいいんです。彼ら彼女らは次もきてくれるでしょう。もしかしたら友人を誘ってきてくれるかもしれない。

だけどターゲットも不明確で、見た人全員に70くらいの印象を与えたとして、はたして何人がお金と時間をかけて次にまた来てくれるでしょうか。

そして何人の人生に深く残り、明日を生きる糧となっていくでしょうか。70点と思った遠方で高額なラーメン屋にあなたはまた行きますか。

大ヒット商品「明治 THEチョコレート」はパッケージがおしゃれなこともヒットの要因ですが、当初上層部からは「なんだかわかりづらい。売れない」と言われたそうです。しかし商品開発者は販売ターゲットは若い女性なので、上層部(たぶんおじさま方)に受け入れられなくても良いと、販売まで進めたという有名な話があります。

ターゲットを絞って、本当に届く作品を作る

エンターテイメントはとても大きな力を持っています。時に人生を救うほどの力を。

エンターテイメントは人生を豊かにするものです。その享受される豊かさにお客様はお金を払ってくれるんです。

であるとしたら作り手は少なくとも「誰を、どんな人を豊かにしたいのか」を明確にしておく必要があると思います。ターゲットを絞って作った結果、それが真に良いものだったらきっとターゲットを超えて広がっていくはずです。

誰の為の作品ですか。自分たちが楽しいだけになっていませんか。本当に届けたい人に届いていますか。信念はありますか。

即答できる方は是非そのまま素敵な作品を作ることに邁進してください。わからなかった方は是非一度考えてみてください。

どんな人に何を届けたいのか。

そうすればおのずとどんな言葉を使って、なんのツールを使って、何を伝えれば届くのか見えてくると思います。

皆さんがつくる素敵な作品が、それを真に必要としている人に一人でも多く伝わればいいなと思っています。それは作る側、見る側双方にとってもとっても素敵なことじゃないかと思うんです。

もうこんな時間ですね。

今日はお話しできて楽しかったです。ありがとうございました。

お帰りも暑いですのでお気をつけて。

槙本 擁(まきもと よう)

Y’s ExP.代表 脚本家、演出家、役者。
Twitter:@YoMakimoto

Y’s ExP.(ワイズイーエクスピー)

「観客、役者、スタッフ、関わった全ての人の出会った以降の人生が豊かになる作品作り」
を、モットーに掲げ、東京で活動する演劇プロジェクト。
日常をテーマに、「幸せ」とは何か「愛情」とは何かを心温まるストーリーで表現する。
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