演劇と税金:後編〜いざって時の準備は必要!劇団主催者のための会計・税務って?〜【藤田侑加】

みなさんこんにちは。

演劇に関わらず、何事も黒字運営って難しいですよね。

今年の目標はバランスシートが読めるようになりたい藤田です。

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2017.05.30

演劇制作者として、そして劇団などの団体としてある種目標なのか、時に頑張らなきゃいけない仕事のひとつ「助成金」事業。

助成金の情報は通年でいろいろ出ていて、国のもの・民間のもの合わせて結構な種類があります

助成金 何回やっても しんどいです(心の一句)

ある程度団体として継続して活動ができていて、じゃあステップアップのために大きいところでやろう、劇場取れた、助成金申請しよう!と助成金情報を検索してホームページの募集要項をみてみたら・・・・ん?法人並みの書類の提出や報告書類も法人並みの水準を求められてるぞ!!

これは組織としての体力がある方が助成金通りやすいのは自明だな・・・とツッコミ入れたくなる感じです。

たとえ黒字運営であったとしても、国や民間「企業」から助成してもらう以上、そちらのフォーマットにのっとっていないとお互いにしゃべっている言葉が違うようなものです。

私も申請を何回か見送ったことあります・・・。(※単純に企画ベースのものだと、その対象時期に事業やってないこともあります。)

一旦、収益的に助成金を申請しないと成立しない事業であるかどうかはさておいて、申請するしないは別にしても早い段階で「何事もかなりしっかりとした法人並みの書類を作っておく必要性」があるのでは?という印象です。

「昔の公演の記録画像・動画」を撮っていなかったからあとあと「資料として提出して」と言われて「出せるものが全くない!!」となってしまう状況と似ていますが、物事は積み重ね。記録って、ちゃんと残しておかないとあとあと痛い目みますね・・・。(※実体験)

解説は前回に引き続き中川先生です。

劇団の会計書類の準備について

Q:劇団の会計書類って何で作っておいた方がいいんですか?多くの団体が「プロジェクト単位」で動いてるので「そのプロジェクトの収支」ぐらいしかみていない印象があります。

中川先生
まず、運営の状況が分かることです。
会計書類を作ることによって劇団の運営がうまく行ったのか、そうでないのか、金銭の面から確認ができます。
また、助成金受給の条件となっていることもあります。国や地方自治体が行う助成金は会計書類の作成は必須、民間団体が行うものであっても必要なところがあります。

Q:劇団で必要な財務って、まずどういうところを注意すればいいですか?

中川先生
1つ目は源泉徴収です。俳優・女優に報酬を支払った場合、源泉徴収をして税務署に納める必要があります。ただし、給料を支払わない個人は源泉徴収する必要はありません。

また、個人で劇団を運営する場合は開業届を出したほうが望ましいです。
なぜならば、開業届を出せば、劇団の収支が赤字になっても穴埋めのバイトの収入と相殺可能になるためです。

法人にするにしても個人で行うにしても青色申告の適用を届け出た方がいいです。
メリット・デメリットは個人の場合は俳優・女優の場合と同じですが、法人の場合は

メリット
①損失を最大10年繰り越せる。
②青色申告でないと使えないオトクな制度がある。

デメリット
①青色申告を適用しなかった場合よりも帳簿作成が煩雑になり、申告の手間が増します

Q:源泉徴収義務者とは?

中川先生
給料や役者への報酬などについて源泉徴収する必要がある人や法人です。基本的にすべての法人、個人は源泉徴収義務があります。ただし、個人で給料を支払っていない人、支払ったとしても2名以下のお手伝いさんのみの場合は源泉徴収義務者となりません。

ケース1:
劇団の制作部が法人化。劇団の代表が社長、制作担当者が経理担当として入社。劇団員は社員やアルバイトなどではなく、公演単位で出演料が支払われる。
→会社は常に源泉徴収義務者となるので役者のギャラに対して、源泉徴収の義務がある

ケース2:
劇団員は10名いるが、劇団の代表が個人事業主として届け出ているので、劇団の費用などはすべて代表1名の個人事業として財務上は処理している。他の劇団員9名と雇用関係はなく、公演単位でギャラが支払われている。
→この場合は代表は給与を支払っていませんので源泉徴収義務者に当たらず、源泉徴収の義務はない

ケース3:
劇団を名乗っているが、構成員は代表者1名のみ。企画単位でスタッフ・出演者を集め、公演を行なっている。代表者は個人事業主の届出をだしていない。公演のイニシャルコストや赤字は代表個人がバイト代から拠出。
→スタッフをアルバイトではなく外注として扱っているのであれば給料を支払っていることにならないので、代表者は源泉徴収義務者とはならず源泉徴収の義務はない。しかし、スタッフをバイトとしてバイト代を支払っているのであれば源泉徴収義務者となり源泉徴収の義務が発生する。

まとめ

「源泉徴収」することについては耳が痛いご指摘・・・、引かれたものを申請して還付金として回収することについては意識があっても、自分が引く側になることについては認識が甘かったのを実感です、シスカンパニーの北村明子さんの著書でも「バランスシート」「健全経営」という話題が出ていたのに、失念していて反省。

劇団の会計に限らず、物事の記録は「積み重ね」が大事。

「いずれ大きい劇場で公演を!」と夢や野望を語るのも大事ですが、意外とこういう実務のところがネックになることも。残念ながら根性論やその場のテンションやノリで解決はしません。

また、お金の部分というのは「赤字」という「ある意味、見たくない・見せたくないところ」も直視しないといけない話です。けれども、ただ見たくないという理由で目を背けていてはいいのでしょうか?もちろん、簡単なものではないです。

でも勉強とかでもそうですが、「なぜ間違ったのか」「なぜうまくいかなかったのか」というところを認識してからこそが成長。

赤字だった理由・黒字になった理由両方きちんと見定めた上で、帳簿の面からも団体をきっちり見ること。

「売れたい!有名になりたい!」と口で言うのであれば、それを示すお金の部分はしっかり直視して理解することが重要だと思います。

<監修:中川先生>

中川崇

公認会計士・税理士。田園調布坂上事務所代表。
2006年公認会計士試験合格後、監査法人、一般企業などを経て2018年事務所設立。
事務所サイト→http://densaka.tokyo/

藤田侑加

兵庫県神戸市出身。武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科卒。
大学は舞台美術を専攻し、卒業後演劇の制作として活動を開始。現在はフリーでチラシのデザインや演劇の企画・広報・制作から海外の演劇祭などにも参画中。
動画メディアサイト『エントレ』で不定期に公演レビュー掲載中
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