エンタメ、演劇、小劇場界の仕組みについて:「演劇」という旅の日誌2ページ目【槙本擁】

どうも槙本です。どうぞ座ってゆっくりしてってください。紅茶とコーヒーどっちが良いですか?

神の数式

さて、この世の中に存在するありとあらゆるものには「仕組み」が存在しますよね。「存在する」ということが、言い換えれば「仕組みがある」ということなのかもしれません。

水とお米をセットすれば美味しいご飯が炊けるのも炊飯器に内蔵された何かしらの仕組みのおかげでしょう。もっと言えばお腹がすくのだって人体の仕組みです。

物理学の最終目標と言われているものに「神の数式」と言うのがあります。有名な話なのでご存知の方もいるかもしれません。「神の数式」それは「宇宙とはいったいどうやってできているのか」といういわば宇宙の設計図のことです。

この宇宙に存在する物体や現象など素粒子の世界から大きな宇宙までありとあらゆるものを完璧に説明することが出来る完璧な美しさを持ったたった一つの数式、それが「神の数式」です。真理と言っていいかもしれません。

それも「仕組み」でしょう。仕組みの究極形と言って良いかもしれません。

小演劇界の仕組み

話を少し大きくし過ぎましたが今日はそんな「仕組み」対してのお話をしようと思います。あ、頂き物のクッキーです。どうぞ。

言わずもがなエンタメ業界、そして演劇界、もっと抽象度を下げれば小演劇界にも様々な「仕組み」が存在します。

前回も少し話させていただきましたが、僕はそもそも演劇畑の人間じゃありませんでしたので、公演を打つ為にはその様々な「仕組み」を理解する必要がありました。

元来「なぜ?」と思いがちな性分でして、色々なことの理由や仕組みが気になるんですね。

子供の頃は辞書が大好きで、言葉を言葉で説明していることに興奮を覚えたり、「追跡」と「尾行」の違いや「ハンコ」と「印鑑」の違いとかが凄く気になって調べずにはいられなかったり、たぶんそういう方って一定数いるんじゃないでしょうか。今「あ、俺も」とか「わたしもそう」とか思ったあなた。ご存知かと思いますが周りからは変な人だと思われてますよ(実体験)

話を戻しますね。

演劇畑の出身ではない僕にとって、演劇畑の方々が教えてくれることは大変に勉強になりました。

ちなみにここ「しばいのまち」を知ったのも最近の話で、サイトを見た第一印象は「当時知っていればどれほど助けになったか…」ということでした。

しばいのまちを知らない当時の僕は様々な方からお話を聞いたり、調べたりして公演に必要な仕組みを知っていったのですが、それと同時にとても疑問に思うこともたくさんありました。

「それってなんでですか?」と聞くと当の本人もよくわからない。つまりみんなそうしてるとか前からそうだからとか「慣習」のようなものがたくさんあったんですね。

さきにも書いたように理由大好き人間からするとね、逆に理由のないこととか整合性の取れてないこと、合理的じゃないことってとっても不快なんです。

どれくらい不快かって言うと、風呂上りに体を拭いたバスタオルにめかぶがべっとりついてた時くらいです。(実体験はありませんし、めかぶは大好きです。)

チケットの謎

一つ、当時かなり疑問に思ったことをあげてみます。それはチケットですね。そしてこれは今でも普通にあります。

前売○○円
当日○○円
※当日は前売りに+300~500円上乗せが多いですね。

・例
前売り3000円
当日 3500円

これとっても謎です。

小演劇界隈は知り合いの役者からチケットを買うこと、つまり「手売り」がよくあります。

ファンの数より友人(兼ファンの場合もありますが)や知人、役者仲間の数が多い公演だってざらにあると思います。そうなればよくあるどころかほとんどが手売りに近いような状況になりますよね。

TwitterなどのSNSでも「ご予約は下記URLからか直接リプやDM頂ければ予約します☆」みたいなのよく見ます。

そして当日だろうが本番30分前だろうが役者にお願いできれば前売り料金なんです。
そしてチケット料金はどちらも会場で当日払うんです。

謎です。

謎は大きく二つです。
一つはそもそも小劇場で当日チケットを買う人なんてほとんどいないのだからわざわざ設定する必要があるのか。

そしてもう一つにして最大の謎は、もし当日、その辺をふらっと歩いててポスターを見てビビっときてとか、コリッチやTwitterで見て気になって飛び込みでとかで当日チケット買い求めてきた人がいたとして、知人や友人ではないいわゆる新規の、それも舞台なんて見てみるまでは海のものとも山のものともわからないものに興味を持ってくれた素敵なお客様に対して、なぜ高い金額を払わせるのか。

もちろんわかります。前売りを設けている理由も。きっと「早く買ったほうがお得ですよ!」という販促効果を狙ったものが大部分でしょう。

映画やコンサートのチケットのようにね。だけど、小劇場ではほとんど機能してないと思いました。理由はさきに話した「当日30分前でも前売り扱いなる」というシステムがあるからです。

このシステムに疑問を持った僕は旗揚げの時から今まで「前売り」というのをやっていません。かわりに本番の3週間~1か月前(公演によって)までの振り込みで特典が付くチケットを用意しています。

なにを言ってもチケットが早めに「売れる」ということはとても嬉しいことです。本当の意味での「前売り」は運営する側にとっては本当に嬉しいものなんです。

どれくらい嬉しいかって結婚式のビンゴ大会で特大タラバガニ1㎏が当たる2倍、いや5倍嬉しいです。タラバ5kgですよ!

なぜなら金銭的余裕と精神的余裕が生まれるからです。

「本当の前売り」がないということは公演が終わらないと基本的に売り上げがないということです。

だけど劇場費の前金を払ったり、稽古場をとったり、グッズを作ったり、スタッフさんのお弁当を買ったり…大きなことから小さなことまで公演が終わる前にかかる費用は意外にあります。

公演を重ねて次回公演分の体力がついてくれば良いですが、そううまくはいっていない劇団も多いと思いますし、何よりお金があるということは不測の事態に対応することができます。そしてチケットの数字が伸びるとプロデューサーや演出家(僕)の胃への負担も減っていきます。

だからこの特典が付くチケットと言うのは感謝なんです。

「早くに購入してくれてありがとうございます!」という心ばかりの感謝。Thank you for the Tarabagani!です。
※本当はタラバガニは英語ではRed king crabです。

まやかしの販促効果に惑わされた運営本位の前売り値引きではなく、早くから作品を楽しみにして予定も埋めてお金も払ってくれているお客さんへのギフトなんです。

このチケット制度以外にも「それ、本当に必要?」と思うようなことがいっぱいあります。よく考えてみれば必要じゃないこともたくさんあります。

そしてそれは劇団やカンパニー単位で違ってくると思います。今回話したチケット前売り制度も、やったほうが良い劇団もあるかもしれません。

だけどきっと疑問を持たずにやってしまっている意味のない仕組みもあると思います。

疑問を持つって素敵なこと

疑問を持つことは素晴らしいことだと、実感しています。

周りからは少々めんどくさがられることもありますし、慣習を変えようとすると叩かれることもあります。

でも疑問をもって、考え直してみたりやってみたりすることで、新しいことが見えたり、逆になんとなくやっていたけどわかってなかった、これまでのやり方の素晴らしさに気付いたりします。

慣習を変えようとしたり、新しいことをやろうとすると「でもみんなは(または○○さんの劇団も)こうやってるよ」とか、もしくはよくわからん常識で苦言を呈してくる人もいます。いますよほんと。本当にいるの。まじで。

でもね、時代はかつてない勢いで変化してます。聞き飽きた言葉かもしれませんけど、本当にそうなんです。

Twitterが日本でサービスを開始したのはたった10年前です。日本におけるスマホの先駆けのGalaxyとXperiaが発売されたのは8年前。Instagramは2014年でたった4年前です。無人のコンビニができて車は自動運転。家の家電は声で操作できる時代です。これまでの誰かがやってきた仕組みなんて、ノストラダムスの大予言ばりにあてになりません。

だから僕は当たり前に思えることにも、これって本当に必要かなと疑問を投げかけ続けます。そして新しいこともやります。もちろんやってみてうまくいかないことやこれまでのやり方のほうが良いこともあるでしょう。

でもそこの「愛」があれば何をやっても大丈夫だと思っています。

まとめ

愛はありますか。今やっていることに愛は。

エンタメは作品、制作、出演者、テクニカルチームそしてお客様全てが等しく存在してなくてはならないと思っています。

つまり「作品」とか「役者」とか一つだけに愛があってもダメかなと。

だけど関わってくれる全ての人に向けて愛があれば、ダメでも失敗してもわかってくれるし、助けてくれます。実際そういうこと、たくさんありました。

だからこれからも「どうしたらもっと素晴らしくできるだろう」といろんなことに疑問をもって、そして愛を持って作品をお届けしたいと思ってます。

素敵な仕組みを見つけたらみんなと共有して、小演劇を、ひいてはエンタメを盛り上げていきたいと思いますので、あなたも何か面白そうな仕組みを思いついたら是非教えてください。そして一緒に素敵な景色を見に行きましょう。

今日はお話しできて楽しかったです。ありがとうございました。お帰りはお気をつけて。

槙本 擁(まきもと よう)

Y’s ExP.代表 脚本家、演出家、役者。

Y’s ExP.(ワイズイーエクスピー)

「観客、役者、スタッフ、関わった全ての人の出会った以降の人生が豊かになる作品作り」
を、モットーに掲げ、東京で活動する演劇プロジェクト。
日常をテーマに、「幸せ」とは何か「愛情」とは何かを心温まるストーリーで表現する。
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