動物と演劇を上演する際の注意点と可能性【須藤健太】

こんにちは。

千葉県最南部の館山市で酪農と演劇をやっています。須藤健太です。

年々少子高齢化が顕著に表れる地域で、劇を続けていく為に行なってきた事を記しています。

今回は動物と共に芸術を作り上げたいと考えている方に向けて記事を書きます。

前回記事に引き続きニッチなコラムになりますが、誰かの役に立てればうれしいです。

※前回記事

田舎すぎて消滅可能性都市と認定された土地でも劇をするには【須藤健太】

2018.03.02

専門家は必須

動物と演劇をやる際の最初の注意点としては、当たり前のことを書かせていただきます。

動物と一緒に演劇を取り組むなら、必ず「その動物のことを最低2年以上学び、かつ動物飼育経験が最低3年以上ある専門家」をスタッフにつけるべきです。

動物にとっても、演者にとっても、観客にとっても重要なことです。できれば飼育経験5年以上は必要だと思われます。

さらに、最低でも必要なことは

・動物の調子が悪くなった時、すぐ行ける病院や獣医を調べておく
・役者や観客に動物の毛アレルギーが出ないよう配慮&出た場合の措置を準備しておく

命を扱うことを意識し、最大限のフォローを用意しておくことが第一歩であり、また、その敬意がなければそもそも動物と共に作り上げる意味は無くなってしまいます。

また、出演時間のストレスは動物によって異なると思いますが、おおむね1分以上は止めておいた方がいいかもしれません。動物に悪影響を与えるリスクも高くなります。

実際に共演してみて……

僕は過去に3公演、動物と劇を上演してきました。少ないですが、その中での事例を書かせていただきます。

1回目の公演

主演動物:牛
主演時間:10秒

はじめて動物と公演を打つ際はリスクを減らす為、牛には「舞台に出てきて、ハケる」くらい短い登場をお願いしました。公演場所は実家の牧場です。

公演のテーマとして、「牧場で劇を行う」ことに意味を作った劇だったので、その主張を強めるべく共演してもらいました。

普段から人と触れ合うことに抵抗のない牛〈タロウくん〉だったので、まったく問題なく劇は終えました。

二回目の公演

出演動物:猫
主演時間:20分

猫と20分の二人〈一人と一匹〉芝居をしました。

可能な限り猫へ負担をかけないようにする為、下記の様な内容にしました。

1.野外公演
2.ステージなし。猫が動いたら役者も観客も動く
3.猫に演出しない。ただ、ひたすら猫に役者が語り掛けるだけ

結論から言うと、完全に失敗でした。ですが、この失敗から、動物と劇をする意味を自分なりに掴むことができました。

猫は自由に動きます。猫は終始、魅力的です。脚本と演技力のパワーが足らず、お客様はひたすら猫に夢中になり、劇が終わりました。

人間の役者の言葉がお客様の頭へ全く入りません。実力ある人が公演を打てば違ったかもしれません。

ここで僕はあらためて、「動物は魅力的すぎる」という認識をしました。

三回目の公演

出演動物:子牛
主演時間1分30秒〈二回に分けて〉

この公演でようやく、動物と劇をすることで意味のある作品を上演できたと思えました。

舞台の終盤で、子牛にミルクを哺乳瓶で与えるシーンを作りました。それを見たお客様は、(それまでに行なったストーリー・演出もあいまって)動物の生きる力を目の当たりにし、感動しておられました。

5~70歳の幅広い年齢層の方が、じっと食い入るように見ていたのは、僕自身もある種衝撃を受けました。

今までの失敗から学び、牛の登場のさせ方や演出を工夫したことにより、動物の魅力を最大限引き出しつつ、お客様に「劇」として楽しんでいただくことができました。

長くなってきましたので、続きは次回にしたいと思います。

次回はより具体的な失敗例・演出例・なぜ子牛の哺乳をシーンとして選んだか、など書いていきたいと思います。

最後に

動物と作品を作る上で大事なのは、動物に対する敬意と知識と経験です。

観客に何かを感じ取ってもらうのが芸術ですが、それ以前に動物への配慮が必要です。人間を楽しませるために動物へ過度な負担がかかったり、ケアできない状況になるならば共演するべきではありません。

共演した結果、今後その動物にとって有益な世の中になると判断できるのなら良いと思います。ただ、こればかりは主宰それぞれの倫理観に任されると思います。

なにが正解で何が間違いなのか。動物との共生とは何か。そもそも人はそこまで考えるほど力があるのか。

コラムを書いておいてなんですが、僕自身も模索しながら劇を作り、人と自然がより良い関係になれるよう目指している道中です。当然、「動物を舞台に上げること自体、ストレスの観点から止めるべきではないか」と考えてもいます。

僕としては、演劇にかかわる皆様が動物との共演を考え、実際に公演を打つ打たないは別として、その中で自分なりの「人と自然の関わり合い方」を導き出していただければ嬉しいです。そして、もしそういった内容の作品を作った際はぜひお知らせください。見に行きます。

須藤健太

千葉県館山市 ㈱須藤牧場4代目
酪農劇団須藤兄弟 主宰/脚本/役者
牧場では130頭の乳牛の世話、牛乳の生産、経理を担当。また、牧場は教育ファーム認証牧場として酪農体験なども行なっています。

ツイッター :@sudoumakiba
劇団Webサイト:http://www.sudo-farm.com/gekidannfreem.html

次回公演

酪農劇団第五回公演「牧場3ライフ!!!」
公演日時:2018年5月4~6日
千葉県館山市安東337 須藤牧場ひみつの舞台

現役酪農家だからこそ描ける世界観をコメディタッチに仕上げたエンタメ第五弾!
ミュージカルあり大道芸あり、星空の下で花開く牧場野外劇をお楽しみください。来場者全員に牧場しぼりたてミルクをプレゼント。

詳細→http://stage.corich.jp/stage_main/72836