観劇レポート『未開の議場〜北区民版2018〜』:”今”だからこそ観る意味のある会議劇【乙戯社Ebihiyoko】

こんにちは、夫婦ライターのEbihiyokoです。

3月22日(木)、「佐藤佐吉大演劇祭2018in北区」の参加作品である『未開の議場〜北区民版2018〜』を観劇しました。

『未開の議場〜北区民版2018〜』は、「北区民と演劇を作るプロジェクト」によって製作された作品です。

北川大輔氏(カムヰヤッセン)の代表作『未開の議場』を、演出家・大石晟雄氏(劇団晴天)による演出で上演が実現しました。

北川大輔氏は、「北区民と演劇を作るプロジェクト」の共催団体の一つでもある、「花まる学習会王子小劇場」の芸術監督を、2018年3月まで務めていた方でもあります。

「北区民と演劇を作るプロジェクト」は、オーディションで選ばれた区民参加者とで公演を行うことをコンセプトに、前述の「花まる学習会王子小劇場」と北区文化振興財団の共催事業として2016年にスタートしたプロジェクトです。

役者達の演技合戦に痺れるエンターテイメント!

そんな背景で製作された作品が『未開の議場〜北区民版2018〜』です。

トメニア人労働者が多く住む地方都市、「幸笠県萩島町」(架空の国と町です!)、その町の商店街が主催する祭り「萩島フェスタ」の実行委員会の会議が、この作品の舞台です。

祭りのボランティスタッフにトメニア人を起用するか

という議題を中心に、それぞれの会議の参加者の思惑、思想、不満が噴出し、会議は思いもよらなかった方向に進んでいきます。

会議の参加者には、「トメニア人学校の教師」、「トメニア人労働者を多数雇用する工場経営者」、「ビザ申請などを担当する行政書士」、「トメニア人が生活する商店街の店主たち」・・・などなど、常日頃から、外国人とどっぶりガッツリ付き合いのある面々が揃っています。

そんな登場人物による議論は、まさに、生活に根付いた生々しい言葉の応酬です。

綺麗ごとだけでは議論は進まない、しかし、だからと言って直情に流されるだけでは、普段の生活も成り立たない・・・登場人物は、その狭間で、答えなき答えを探して、もがき苦しんでいます。

会議が舞台ということもあり、役者の方々が繰り広げるパワフルな演技合戦を、これでもかというくらい全身に浴びることになる作品です。

会話劇というエンターテイメントとしても非常に優れていて、鑑賞後は、演者の皆さんと、フルマラソンを走り切ったような心地いい疲労感と爽快感を感じさせてくれました。

しかし、観劇の真っ最中、私が感じていたのは、爽快感とは真逆の「もどかしさ」という感情でした。

「言語化」の役割を担う力を持った作品!

この「もどかしさ」は、私自身が普段、外国人問題に対して感じている感情と理解しました。

SNSが発達し、それらのツールがライフラインの一つになった今の時代。

昔なら、人によっては他人事だった社会問題も、手を伸ばせば届く位置にあり、ネットの世界を少し探れば、玉石混淆な様々な情報、そして感情が、簡単に取得することができてしまいます。

『未開の議場〜北区民版2018〜』が扱うテーマである外国人問題も、それらの影響を強く受けています。

私が観劇中に感じた「もどかしさ」は、まさに、日常的に、この問題に対している感情と同じでした。

理屈だけでは片づけられず、かといって感情が先行しては話が進まない・・・しかし、グローバル化が進む時代は待ってくれない。

様々な情報と感情が、「言語化」されることなく、まるで洪水のように渦巻いているのが、現代社会ではないでしょうか。

『未開の議場〜北区民版2018〜』が非常に優れている点は、こういった「行き場のない情報や感情」を、芝居というツールを通して的確に「言語化」していることにあります。

登場人物たちが、作中で議論を重ね、もがき苦しむほど、その姿を見る観劇者の我々は、その感情を客観的に受け止めることができます。

それが、一種の「言語化」です。「言語化」されていない情報や感情は、時として、まるで”鞘のない刀”のような、危険なものになり得ます。
それらを、ストーリーや登場人物の言葉を借りて、「言語化」していくことは、芝居や舞台の非常に重要な役割の一つです。

この『未開の議場〜北区民版2018〜』は、その役割を担う力を持った作品であると感じました。

観劇後、王子の街並みを見て感じたこと・・・

この作品は、実際にブラジル人を始めとした外国人労働者が多く住む「群馬県大泉町」がモデルとなっているそうです。

製作の過程で、現地の方々への沢山の取材を行ったのでしょう。観劇を通して感じる「もどかしさ」と、そしてその先にある「希望」には、現実世界に即した、強烈なリアリティを感じさせてくれました。

観劇後に歩く王子駅までの街並みは、行きと全く同じであるはずが、私には違う景色に見えました。

街が、様々な人々の努力によって形作られていることを、肌で感じられたのは、決して錯覚でなく、間違いなく『未開の議場〜北区民版2018〜』の力です。

【Ebihiyoko】 乙戯社サポーター/夫婦WEBライター

夫婦でライターをしている二人組。二人合わせて「Ebihiyoko」です。

両名とも1988年生まれ、東京の大学の演劇サークルで、4年間演劇漬けの日々を送っていました。今は、夫は目黒区のIT企業、妻は生保業界で、それぞれ忙しく生活しています。

「演劇にかかわる人を応援したい!」という熱い思いを胸に、ライター活動を行っています。

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