その「公演」は利益が出る「興行」なのか? ~損益分岐点の話~その2【日向修二】

みなさんこんにちは。
しがないサラリーマンをするかたわら演劇活動をしています、日向修二です。
前回に引き続き、損益分岐点の話です。

その「公演」は利益が出る「興行」なのか? ~損益分岐点の話~その1【日向修二】

2018.01.26

前回は、演劇の公演における損益分岐点についてお話ししました。今回は、その損益分岐点をどうやって下げるか、ということについてお話ししたいと思います。

ちなみに前提は、前回に引き続きこちらの記事にもとづいてお話しします。

そもそも公演のお金ってどこにいくらかかるの??【藤田侑加】

2017.06.30

損益分岐点を下げるには? 利益を増やすには?

一般的には、損益分岐点は低いほどいいと考えられています。

それはそうです、損益分岐点が低いということは、いち早く費用を回収できて、いち早く利益を生む商品にできる、ということです。
演劇の公演の場合は、観客動員数がある一定を越えればその先は利益が増えていく、という構図です。

では、損益分岐点を下げる、つまり、費用回収に必要な観客動員数を低くするには、どういう方法があるでしょうか?

チケット単価を上げる

単純な話です。チケット単価を上げれば損益分岐点は下がります。

4,000円で、423人。
5,000円で、338人。
6,000円で、282人。

どんどん下がっていきます。
ただ、チケット代を高くしたことで、観客の数が減ってしまって、必要動員数に届かなかったら本末転倒です。そこの見極めが難しいところです。

予算を切り詰める

発想を変えて、かかる費用を少なくしましょう。いまは169万円前提で計算していますが、これが下がると、一緒に損益分岐点も下がっていきます。

チケット代3,000円の場合

費用 165万円で、550人。
費用 160万円で、534人。
費用 155万円で、517人。
費用 150万円で、500人。
という感じです。

ただ、演劇の公演の費用というのは、あまり切り詰めしろが無いように思います。

藤田さんの記事で、費用がかかる部分が小分けで記載されていますが、その大部分が人件費です。人を動かすにはとてもお金がかかります。

美術や衣装代を削ってもそこまで劇的に減らないので、人件費をどうにかしないとそこまで切り詰められないように思います。

人件費に手をつける場合は、仕事をオファーする際に明確にしていないとトラブルのもとなので、最初にしっかり決めておきましょう。

また、オファーで双方合意したあとは、人件費をいじるべきではありません。一種の契約ですからね。どうしても、というときは、相手の合意を再度得る必要があります。

ステージ数を増やす(キャパを増やす)

これは損益分岐点を下げる方法ではありませんが、ステージ数を増やすことでキャパを増やして、利益を得るチャンスを増やすことができます。

本当に連日全ステージ満員になってしまって、それでもまだ観客を呼びたい! というときは、ゲネを公開ゲネにして半額くらいでチケットを販売したり、平日昼間のステージを増やしたり、1日3ステージにしたりすることで、キャパを増やすことができます。

ただ、最初に言った通り、これは損益分岐点が下がるわけではないので、単純にマックスキャパが増える、マックスの利益が増える方法だと思ってください。

商品を増やす(物販をする(脚本・サントラ・DVD・ブロマイド・グッズ)・プレミアム席をつくる)

これ、僕のおススメの方法です。と言っても、何も目新しいことはなくて、数々の劇団・団体ですでにやられていることではあります。

チケット代だけで費用を回収しようとするからしんどいのです。別の収入源(商品)を用意すればいいのです。

物販の常連は、やはり脚本でしょうね。オリジナルの脚本であれば、著作者は自分なので自由に販売することができます(僕も今度の公演で出します)。ただ、既成の脚本は、無断で販売してはいけませんよ。必ず著作権者に許可をもらってください。

そのほか、アイドル売りをしている劇団では、ブロマイドもよく見ます。写真がうまく撮れれば、用意もしやすいですし作りやすいのでおススメです。

その他、過去公演のDVD、劇団Tシャツやパーカーなどのグッズを作ることもできます。缶バッジなんていうのもありますね。

ここらへんはアイデア次第です。オリジナルの音楽を作っている場合は、サウンドトラックを出すこともできます(僕も今度の公演で出します)。

また、良席(大体は最前列センター付近)をプレミアム席として少し割高にしたり、歴史のある劇団・団体ではファンクラブを作って年会費を設定してみたりするのも、商品を増やす方法です。

ファンクラブのほうは、ファンクラブ特典との兼ね合いになりますが(チケット先行予約が付いていたり、会報が届いたり、ファンクラブ特製グッズが付いていたり)、年会費が無くても、固定ファンの獲得につながりますし、作ってみて損はないと思います。

戦略的には赤字でも良い

すべての劇団・団体が毎公演黒字を目指して公演を行うべきか、というと、そんなことはありません。

戦略的に赤字でも良いパターンが3つあります。

将来コストが下がる見込みがある

これは演劇ではあまり見られないかもしれません。製造業だと部品代が安くなるとかあるんですけどね。

将来単価を上げられる見込みがある

チケット代に関して言えば、初期は安くして新規顧客をゲット、成熟してきたら単価を上げていく方法です。

代わりに他の商品が高値で売れる(海老で鯛を釣る)

チケット代が安くても、他の商品、つまり物販などで利益を得る方法です。

この3つのうちに収まっていれば、瞬間的に赤字でも許容できます。

ビジネス的な観点でいえば、経営はgoing concern、「継続していくもの」です。瞬間風速で黒字だ赤字だと一喜一憂するだけではいけません。

大事なのは「継続」できるか。数多くの劇団・団体が旗揚げしては明確な活動休止・解散をしないまま消えていく中で、継続してくためには、長期的な視点が必要です。

お金儲けが目的なわけではありません(お金儲けが目的でもいいですが)、資金を得て、次回の公演を行う、また、もっと規模の大きい公演にして、よりたくさんのお客様に来ていただく。そういうことが目的なんじゃないかなぁと思います。

劇場が毎回満席になってきたら、チケット単価を上げて、売上最大化を図る。一般的に、単価が安いと人が来ます。上げれば上げるほど客足は遠のきます。ちょうどいいバランスを探してみます。

単価を上げても満席になるようであれば、大きい劇場に挑戦してみましょう。そうやって規模を大きくして継続していくことが大事だと思います。

というようなことを昔、上司に教わりました。

と、ここまでさんざんお話ししてきましたが、何も「利益を出さなければいけない!」「赤字は悪!」という話ではありません

お芝居をやることそのものが目的でもいいでしょう。気心の知れた仲間と何かイベントをやることが目的でもいいでしょう。

覚悟があれば赤字でやったっていいです。チケット代を安くしたい、という信念でやったっていいです。覚悟があればいいんです。

ただ、安くした結果、継続できなくなって、「こんなはずじゃなかったのに……」というのは避けたいです。それは、劇団・団体側も公演をやれなくなるし、観客側も公演を見れなくなってしまって双方悲しいですから……

日向修二

役者・脚本家・演出家・作曲家。2016年1月に、就職してから初めて長編の公演を行い、就職していても演劇ができることにやっと気づく。2018年2月に公演予定。
Twitter→ @shuji_himukai
Blog→ 日向修二製作所
Podcast→ 日向修二放送局

次回公演

※公演終了
◆劇団道草ハイウェイ第4回公演
『想いで迷子』
脚本・演出: 日向修二
2018年2月10日(土)~2月12日(月祝)
@ART THEATER かもめ座(JR中央線 阿佐ヶ谷駅 徒歩10分/ 東京メトロ丸ノ内線 南阿佐ヶ谷駅 徒歩5分)

◆劇団公式ウェブサイト
https://coubic.com/mitsukonotamashii/