みなさんこんにちは。
しがないサラリーマンをするかたわら演劇活動をしています、日向修二と申します。
かなりご無沙汰してしまいましたが、みなさんお変わりありませんか。僕は自分の2月の公演の準備でヒィヒィ言っています。
さて今回は、「損益分岐点」の話です。みなさんご存知ですか?損益分岐点。
要は「収入と支出が釣り合うのはココ!」っていうポイントのことです。損(支出)と益(収入)が分岐する(どっちに転ぶかわからない、釣り合いが取れる)点ということです。ちなみに英語では break even point と言います。
みなさん、お芝居を観に行く際に、チケット代を払うことが多いと思います。中には無料公演もありますが、今日は有料公演に焦点を当ててお話しします。
「損益分岐点」について考えよう
少し前に、藤田侑加さんがしばいのまちで、1回の公演にかかる費用をシミュレーションしていました。
その額は169万円。
結構かかってますよね。さて、その費用をすべてチケット代でカバーするには、
・チケット代をいくらにするか?
・観客を何人呼ぶか(呼べるか)?
ということを考えなくてはいけません。数式に直すと、
チケット代=x
観客動員数=y
と置いたとき、
x × y = 1,690,000 … ①
となります。この方程式を解けば、「損益分岐点」が出るわけですね。
まずマックスキャパで考えよう
とはいえ、数学の心得がある方はすぐ気付くと思いますが、①の方程式は解くことができません。決まっていない数が x と y の二つあるからです。
極端なことを言うと、チケット代を169万円にしてしまえば観客は1人でいいですし、逆に観客が169万人居ればチケット代は1円で済みます。
さすがにどちらも現実味がありませんね。現実的な話をしましょう。
実は観客数には上限があります。それは「劇場のキャパシティ」つまり最大観客動員数です。劇場は一度に入れる人数が決まっています。席数が固定のところは言わずもがな、席を自由に組めたり、立ち見を出せたりするところでも、さすがに限度があります。
今回は、藤田さんの記事をベースにしていますので、その記事の前提の、「キャパ100人」で話を進めます。
じゃあ観客数は100人か、というとそんなことはなくて、演劇は複数ステージ公演を行うのが通例です。それを掛け算します。藤田さんの記事では7ステージ前提ですので、
100人 × 7ステージ = 700人
ということで、マックスキャパは700人です。
ではこれを①の式に代入します。y = 700なので、
x × 700 = 1,690,000
x = 1,690,000 ÷ 700
x ≒ 2,415 (少数点切り上げ)
となり、チケット代は2415円となりました。これが最低ラインです。
チケット代だけで費用をカバーしようと思えば、チケット代をこれより安くすると確実に赤字になります。この場合は、損益分岐点は、
・チケット代 2,415円
・観客動員数 700人
ということになります。
正直マックスキャパにできますか?
ただ、これは連日、全ステージ、満員御礼の場合です。実際にはそういう例は一般的ではないと思います。
有名な劇団・俳優ならいざ知らず、多くの演劇人にとって、全ステージを満員にすることは易しいことではありません。
今回のお芝居は15人の役者の想定なので、単純にいえば役者1人あたり46~47人の集客をする必要があります。集客力、結構要ると思います。
さて次に考えるのは、どこを現実的なラインとするか、です。このメンバーではどのくらいの集客が見込めるのか。
チケット代は自分たちで自由に決められますが、観客動員数は実際に公演を行ってみないとわかりません。事前に立てられるのは見込みとなります。
ここは各劇団・各団体の考え方によります。それぞれの役者の集客力を見極めて算出してもいいでしょうし、単純にマックスキャパの8割とか半分とかで考えてもいいでしょう。
今回は便宜的にマックスキャパの8割で考えてみましょう。
マックスキャパ 700人 × 80% = 560人
これを①の式に代入すると、
x × 560 = 1,690,000
x = 1,690,000 ÷ 560
x ≒ 3,018
ということで、この場合の損益分岐点は、
・チケット代 3,018円
・観客動員数 560人
となります。
チケット代を先に決めてしまう
「チケット代を3,000円より高くするのはちょっと……3,000円にしたい」という意見の方もいるでしょう。もちろんそれでもかまいません。例によって①の式に代入します。
3,000 × y = 1,690,000
y = 1,690,000 ÷ 3,000
y ≒ 564
ということで、この場合の損益分岐点は、
・チケット代 3,000円
・観客動員数 564人
となります。
実は、損益分岐点の考え方は、これが一番オーソドックスです。
自分で決められる数字(この場合はチケット代)を先に決めてしまって、自分で決められない数字(観客動員数)がいくつになれば採算が取れるのか、そういうものを見るのが損益分岐点です。
世の中の企業では、商品を販売する際の目標を立てるときに使用したりしています。
この商品は開発費がいくらかかっていて、1つ当たり材料費がいくら、人件費がいくらかかるから、◯万個売れたら費用が回収できて、あとは利益を生むだけになる、というように。
演劇の公演の場合は、チケットが売れれば売れるほど増える(チケットの数に比例する)費用というのはあまり無いので(厳密にいえばチケットの印刷代とか紙代とかですが)、各費用とチケット代の売り上げで割と簡単に損益分岐点を出すことができます。
ここまで、損益分岐点についてお話ししてきました。いかがだったでしょうか?
次回は、「どうすれば損益分岐点を下げることができるのか」ということについてお話ししたいと思います。
※続きは下記から
日向修二
役者・脚本家・演出家・作曲家。2016年1月に、就職してから初めて長編の公演を行い、就職していても演劇ができることにやっと気づく。2018年2月に公演予定。
Twitter→ @shuji_himukai
Blog→ 日向修二製作所
Podcast→ 日向修二放送局
公演情報
※公演終了
◆劇団道草ハイウェイ第4回公演
『想いで迷子』
脚本・演出: 日向修二
2018年2月10日(土)~2月12日(月祝)
@ART THEATER かもめ座(JR中央線 阿佐ヶ谷駅 徒歩10分/ 東京メトロ丸ノ内線 南阿佐ヶ谷駅 徒歩5分)