演劇フリーランスとして、好きなことをしながら生きる【対談企画:忍翔×深月あかり】

自分がやりたいことを我慢したり、「本当は〇〇がしたいのに」と思っていながら、「まずはバイトしなきゃ」とか、夢をかなえるためには好きじゃないこともしなくてはならない、と考えている人は多いと思います。

今回はそんな人達に向けて、20代という若さで、バイトをせずにフリーランスの役者であり指導者であり、様々な活動を幅広く行っている男女二人の対談をお届けします。

指導者として大切にしていること。バイトをせずに食べていけるのか。などを中心に聞いてみました。(聞き手:小玉高)

2人の自己紹介

ーまず自己紹介をお願いできますか?

忍翔
初めまして、忍翔(おしょう)です。日本初で唯一の学生インプロ(即興芝居)団体である劇団しおむすびの主宰兼プロデューサーをしています。

また、インプロチーム不条理狂詩曲《ふじょうりらぷそでぃ~》の主宰もしています。あとは、基本フリーでインプロバイザ―(即興役者)として、インプロの企画・指導・表現、舞台に立つことをやっています。宜しくお願い致します。

あかり
深月あかりです。私はアイドルのレッスンと振付けをやっています。演技だと役者をやったり、子役指導をやったり、忍翔さんみたいにワークショップを開催しています。最近ではライターやイベント企画などもやっていて、エンタメフリーランスって名乗ってやっています。よろしくお願い致します。

こうして言ってみると、やっていること、結構かぶっているんですよね。

忍翔
結構、かぶっているよね。

指導者として

ー指導とは具体的に何を行っていますか?

忍翔
僕はインプロ(即興)の芝居ずっとやっているから、それがメインの指導になるね。インプロを教えるという指導もあれば、インプロをベースにインプロだけじゃないんだけど、その人やそのチームをより良くしていく指導をしている。

目的によって全然違うんだけど、基本、僕のモチベーションは人をより良くしていきたい、というもので、その人の人生がより良くなっていけばいいなと思って教えているから、良い声が出せるようにとか、こういう動きが出来るようにということで教えることはあんまり無いね。

まあ、結果的に、声がよくなった・姿勢が良くなった・こういう動きが出来るようになったはあるけど、あまり、そこに僕はポイントを絞って指導していないね。

あかり
なんか、そこは私とは大分違うと思うんですよね。
忍翔
あー、まあそうだろうね。
あかり
演劇という広い括りで見た時、人間性を高めたいっていうのは私もあるんですけど。私はこれを達成したいという目標を持って来てもらって、作戦も考えるし、それに合わせたレッスンを行う形なんですよね。そのレッスンのやり方というのは全然違うなと思いましたね。
忍翔
それは何?例えば、~で売れたいとかなのか。こういうことが出来るようになりたいという物理的なテクニカルな話なのか。
あかり
両方あります。
忍翔
両方あるんだ(笑)
あかり
例えば、このオーディションに受かりたいだったら。受かる為に何が必要か全部ノートに書かせますね。彼女が欲しいとかもあれば、書かせます。
忍翔
あー、なるほど。
あかり
で、1個ずつ、次会う時までにはこれはクリアしてきてって言って、ノルマの数字まで出します。宿題みたいな。(彼女が欲しいとかの目標だったら)女の子連絡先10個GETしてくる、とか。ってことは1日に何人と話して、何個でイケるとか作戦まで決めさせますね。

まあ、単純にこういう声が出せるようにみたいな目標も、じゃあ何が必要か書かせて、これやった方がいいんじゃない、あれやった方がいいんじゃないみたいな形で私は指導をやっていますね。

ー忍翔さんは、人をより良くしていきたいという目的がありますが、あかりさんはどのような目的がありますか。

あかり
私は普通に好きだからやってる。講師に関してはそれが本当で。やりがいとかは、忍翔さんと一緒で成長を見た時、めちゃくちゃ感動するじゃないですか。
忍翔
そうだね!
あかり
それも感動の質が他と違うの。映画を観て感動するとかじゃなくて。
忍翔
分かる、分かる。全然違うよね。
あかり
そういう質が違う感動って凄く楽しいし、皆の夢が叶えばいいと思ってるの。

本当に叶えたいと思ってる人が、私のところに来てくれてるなってすごく思うから。そういうものは目的としてあるけど、本当に講師はずっとやっていきたいなと思っていて、すごく楽しくて、大好きでやっています。

忍翔
一人の即興芝居のレッスンを今やってて。それはさっき、あかりちゃんが言ってたのに近いかも。

「こうなりたい」というもの、目標に対してアドバイスをしている。一人即興芝居をやる、という目的はあるんだけど、目標の達成の仕方を知らないとか結局、そこだったりするから。

あかり
そうですよね。私は個人レッスンを受けに来る人が多いんですよ。「何か一つの目標をクリアしたい」という人が多いですね。

オーディション前の合格のための対策とか、よく依頼受けてやってます。

指導者になったワケ

あかり
指導者(講師)をやっていると指導者のプロを目指したくなりませんか?
忍翔
それは、目指しているよ。でも、なんだろうね。僕はそもそも、王道の俳優ルートから抜けているからね。

例えば、世に言う俳優を目指す人たちは劇団や事務所に入って一直線のルートで「よーいスタート」で脚力勝負みたいな世界じゃない?この世界で脚力勝負をしたら僕は勝てないと思ったのよ、早い段階から。

あかり
へーそうなんですか。
忍翔
きっかけがあって。20歳の時にお世話になっていた所で立った舞台があって、5人芝居だったんだけど。メインが僕ともう一人でA対Bみたいな構成だった時に相手役がいたわけよ。

その人は僕よりも4歳ぐらい上で実力がかなり高い人で、その人と対峙した時に「勝てない」と思ったわけ。

例えば、六角形のステータスで記した時に一か所は勝っているなと思うのはあるけど、この人はほぼ全てのステータスが僕よりも一枚も二枚も上手だから、勝てないと思ったんだよね。本当お世話になった劇団さんだったから、このまま、今後もこの人たちと一緒にやっていくとなったら、その人も同じ分もしくはそれ以上進むわけじゃない。

あかり
確かに、そうですね。
忍翔
単純計算で勝てないと思って、自分にとって良いと思う別ルートを探し続けたら、インプロを見つけて「これだ!」と思って、やり続けた結果が今という形だね。
あかり
それを踏まえて、どうゆうルートで指導者になったんですか?
忍翔
僕は結果的にそうなった。インプロを始めて、これは面白いと思って、自分がやってみないと、これは分からないとも思ったんだよね。それで、後輩を誘って公演を打とうと思った時に、インプロを始めて半年だったんだけど、後輩からしてみれば僕が一番歴があるから、必然的に教える立場になったんだ。

まあ、説得力を無駄に出すのは自信あったから(笑)3の知識でも70、80ぐらいに見せる力はなんかあったし、後輩に慕われてたし、信じてくれていたから、それに応えなきゃいけないと頑張って、それを結果的に繰り返していたら、今という形になったね。元々、教えることは好きで、塾で講師として教えてもいたし。

あかり
結果的にそうなった(講師になった)のは私も同じですね。

そもそも教える側をやってみたいなぁ、とほわっと思っていたことはあったんですけど、本当にたまたま子役指導できる枠が回ってきて。そのときはOLだったし、本当に奇跡的にそうなりました。

フリーランスという生き方

ーお二人はフリーランスとして活動しているわけですが、フリーランスだからこその悩みはありますか。

あかり
そうですね。やっぱりフリーランスって、しんどいときはありますね。
忍翔
そうだね。しんどいよね。あかりちゃんはどの辺がしんどいと思うの?
あかり
自分でこういう道が良くて、フリーランスを選んだから後悔とかじゃないんですけど、例えば会社とかだったら土日休みの週5の出勤だったとして、月曜日に凄く働いて、火曜日はちょっとやる気が無いからって適当にやっても同じ給料じゃないですか。
忍翔
まあね。
あかり
でも、それってフリーランスではありえないじゃないですか。毎回120%でやらないとリピートしてもらえないから常に全力疾走。

それにゴールも無いから全部目標地点じゃないですか。私的には夢を叶えるのはやり続けたいことだし、そういう最終的な目標もあるけど、ずっと走り続けなきゃいけない時に、たまに疲れることがありますね。

あと周りから、若いのに凄いねって過大評価をたまに受けるのが私的には辛いです。

忍翔
そうなの?どういう意味で?
あかり
まだそんなに実績も無いので。多分、皆が言ってくれるのがその勢いが凄いねって言っているんですよ。それは嬉しいけど、ずっとその自分でいなきゃいけないんだって思っちゃう時があって、それが辛い時があります。
忍翔
あ~、う~ん。でも俺そういうのは、あんまり無いんだよね。あ、いや分かんない。男女でもしかしたら、ちょっと違うのかもしれないけど。やっぱり団体を持っているか否かなのかはあるかも。
あかり
それは確かに大きいですね。
忍翔
やっぱりなんだかんだで、そういう自分がいるべき家というか場所があるみたいなのは良いのかも。まあ自分が勝手に作っているんだけど。それがあるから、頑張れるというかしんどくない。お父さんみたいな。
あかり
良いですね、マイホーム。
忍翔
大したことはしてやれてないんだけど皆がいるから頑張れる。だからポジティブにそこをこなせる。

バイトをしなくても、全然好きな事で生活できる

あかり
忍翔さんがこの道だけで生きていくという企画(しばいのまちにも掲載している「余命1年の芝居人」)あるじゃないですか。自分が演劇をやっていて、そういうのを示してくれる人がいなかったから良いなって思ってます。
忍翔
そうだね。常に先駆者でありたいから。なるべく人のいなさそうな道をがしゃがしゃと行って、通るぞと言って、おー!と皆も来れば、その分、世界も広がるし、こういう生き方も出来るんだみたいなことが起こったりするから、それを積極的にやる。だから、一人芝居とか自分が誰もやってないパフォーマンスとかをやるのも自分が出来てないことを下に言えないから。

「お前がまだ何も出来てないのに」という風になっても、あれだから自分が出来ることしか下に言えないし。ってなったら一人で即興芝居やるのとかも自分の為というより他人の為。

僕だったら団体の子たちがメインになるね。あの子たちが見て、こういうことが出来るかもしれないという可能性の指標にして欲しいというのがあるから、自分の為に何かやるっていうのはあまり無いかも知れない。舞台とか創作するに関しても、これを観たあの子たちが、こうなるんだろうというのを示していきたい。

あかり
それは凄く分かります!その考えを持って行動するの本当に大事ですよね。
忍翔
でもまあ、あんなもの(余命一年の役者の企画)は別に凄くないよ。
あかり
いやでも、凄く分かるんですよ。どれだけ大変かというのを。一気に急に食べれるように私もなったわけじゃないので。私や、忍翔さんがこうやって、ちょっとずつ見せて、ちょっとでも好きなことして食べていけないっていう常識が変わるといいなと思いますし、
皆、どこかしらで続けたいけどバイトしながらじゃないと無理でしょと、ちょっとは思ってると思うんですよ。
忍翔
いや、本当にそれ。だから、僕はそれに警鐘を鳴らす為にやってる。
あかり
そう。だからこそ、そこを変えたいんですよ。こんな凡人2人も成功例がいるからね。
忍翔
結局はバイトをしなくても、全然好きな事で生活出来るよね!
あかり
その通りですね!

ー夢や目標に対してどのように活動し達成していますか。

あかり
私は秦組というずっと出たい舞台があって。その時に当時、数人でのワークショップを私が開いていたんです。そこで皆、叶えたい目標は映画に出るやCMに出るといったもの掲げてたけど、「目標があるにしてはできることを何もしてないな」と思ったことがあるんですよ。
忍翔
思う思う。
あかり
それって多分「やり方」を知らないんだなと思って。

自分が演劇をしていた時に、こうやってやるんだというのが無かったんですよね。と言うより大人を見ていて、駄目なテンプレートしか無くて、この人達を見習ったら失敗するんじゃないかと思って。そういうのしかないのが本当に嫌で。

忍翔
分かる。だから、僕もこういう活動をしている訳だし。
あかり
それで、自分が演劇で実績が無いなりに指導者としてやってたつもりだったんですが、役者として叶えたかったことはなんだろうと思ったら、秦建日子さんの舞台に出るというのがあって、それは叶えようと。

皆に全然余裕で好きなことをして食べれるというのもそうですけど、夢は叶うんだよというのを、きちんと見せてあげたいなと思って。

意外と今は、皆、夢を叶えやすい世の中なのに直訴とかをする人は多分あまりいないと思いますし。だから情熱がある人が叶いやすいなと思うんですよね。

忍翔
本当、それ。
あかり
あかりちゃんも叶えたんだ。こんな身近な人が叶えたんだったら自分も出来るって思ってもらえたらいいなって。

それも大きい舞台に出たいとかより、自分が本当にピンポイントに出たいものに出ることに意味があるなって思って色々と頑張って、秦組の公演に出れるようになりました。

忍翔
それ知った時は本当、感心したし感動した。これで世の中の連中、言い訳出来んぞと思って。
あかり
あはははは(笑)
忍翔
いや、本当に。これだけ、それこそ目に見えてない努力も一杯したんだろうけど。Twitterにも毎日バンバン出して、本人にも直訴までしてというのも勿論あったと思うし。

絶対に簡単な道じゃないから、それをピンポイントで達成したという事実は夢物語ではない。しかも、実績がそこまで無くて、やれたんだぞということは、本当によっしゃよっしゃと思って、本当におめでとうだし凄いと言いたい。

あかり
忍翔さんと私、2人もこんなに何か叶えたり、好きなことだけで生活できるのだから、みんなも余裕でできる!そう思って欲しいですね。

まとめ

指導の仕方は違うが、『人をより良くしたい・輝かせたい』という目標は二人とも一緒であることが分かりました。

自分の為では無く、人の為に指導をするのが好きだからこそ、バイトをしていなくても生活が出来、多くの人に慕われてもいるのだと思いました。

これからの2人に期待しつつ、様々な人達が2人の生き方を見て、それに続くように夢を叶えることを切に願っています(小玉高)

忍翔

国際的に活躍するインプロ指導者・今井純、NYアクターズスタジオ生涯会員・ボビー中西に師事し、インプロとマイズナーテクニックを学ぶ。
20歳で日本初の学生インプロ団体「劇団しおむすび」を立ち上げ、現在はプロデュースと指導を行っている。
また、一人芝居役者として、インプロ、ミュージカル、ストレートプレイも行い、「役者は1人でも生きていける」ことを自ら体現している。
https://peraichi.com/landing_pages/view/playerosho

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2017.02.23

深月あかり

「好きなことを仕事に」をモットーに役者、ライター、振り付け師など、様々な分野で活動中。
現在はアイドルのダンス指導をメインにダンス講師をしている。
そして、自身がずっと夢だった秦組の舞台らんが現在、公演中。

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2017.11.12

★出演情報★

秦組「らん」
2018年1月17日より、スペースゼロにて絶賛公演中!
http://hatagumi.com/index.html