どーも、おしょうです!
今年の4月、「一人芝居ミュージカル短編集」という企画に出演しました。
30分の一人芝居ミュージカルを3〜4作品上演するという企画で、まだ2回目の公演ですが、その特異性とクオリティの高さから、非常に注目度が上がっている企画です。
僕はそこの一出演者として参加し、素晴らしい経験をさせて頂いたのですが、何よりも驚いたのはそこでの稽古方法でした。
それは今まで参加して来た企画の中で、最も効率的だったのです。
まず、稽古開始が本番の2週間前!
時間と回数も90分×4回で、出演者のスケジュールに合わせて1人ずつ時間割のように進めていきます。そして初回から通し稽古(最初から最後まで演じ切る)を行うため、当然出演者はセリフを全て覚えてきます。
アップは稽古開始前に済ませ、開始したら早速シーンに入るため、稽古時間を高い集中度で過ごすことが出来ました。
誤解を恐れずに言いますが、僕は稽古が嫌いでした。
でもこの現場に参加して以降、稽古がと言うよりも、非効率的な時間が嫌いなんだと気付きました。それくらい、舞台の稽古で非効率的なものは多いのです。
今回は、「ひとみゅー」(一人芝居ミュージカルの略称)での経験を元に、舞台の稽古を効率的にする方法を4つ提示します。今後舞台の稽古を行う際の参考にして頂ければと思います。
それでは、どうぞ。
1.半立ち稽古を無くす
半立ち稽古とは、台本を読みながら演じる稽古のことです。
これは立ち稽古(台本を外して演じる稽古)の前段階として存在しているのですが、はっきり言ってこの稽古は最も生産性が低いです。
台本を見ながら演じるため、相手の台詞もロクに聞けないし、動きも制限されてしまいます。この期間を無くしていくことが稽古効率化の一番の鍵となるのです!
一番良いのは「ひとみゅ」のように「初日に通す」と宣言してしまうことですが、それが無理だとしても「半立ちはやらない!」と決めてしまうのです。
そうすれば、役者さんも早くセリフを覚えるように努力するため、質の高い稽古が早い段階から出来るようになります。
2.日によって稽古参加者を変える
「基本、稽古は全員参加」という暗黙のルールがありますが、せっかく稽古に来たのに、自分が出るシーンをやらないor少ししかやらない時があります。
主役級の人はまだいいのですが、アンサンブルや出番が少ない人は「俺、今日いらなくね?」「私、いる?」という状態で稽古に参加しなければなりません。
じゃあ他にやることあるかと言うと、別にそんなことも無く、結局稽古場の隅っこで台本を読んでいる羽目になってしまうのです。
飛んだ台詞を入れたり、代役をやったり、いれば必要にはなるのですが、はっきり言ってそれは役者の仕事じゃありません。
役者さんは舞台に立つのが仕事で、そのために稽古場に来ています。
それ以外の仕事はやらせるべきではないし、台本を覚えたり、役のイメージを固めたりするのは、家でも出来ることです。本人が稽古場に来たいというなら別ですが、稽古場では稽古場でしか出来ないことをやらせてあげるべきです。
だから、出演者の空きやNGを把握したら、いついつに何のシーンをやるかを綿密に計画立てて、誰にいつ来てもらうかをはっきりさせることです。
つまり、必要最低限の人しか稽古場に呼ばない。そして、その日の稽古スケジュールをはっきりさせる。
役者さんが「いつ自分のシーンをやるのか」をずっと待っていて、結局やらないってことがないように。もっと言うと、人によって入り時間を変えたり、早く帰る許可を出しても良いと思います。
3.初日から100点を出しに行く
稽古の進め方は、大きく分けて2通りあります。
①演出家が役者に指示を出し、役者がそれを再現する。
②演出家と役者が互いにアイデアを持ち寄理、共に創っていく。
①は演出家のイメージがはっきりしていれば進みが早いのですが、問題は②です。
なぜかというと、お互いがお互いのアイデアを待ってしまう事態に陥り、グダグダしてしまうケースが多いからです。
※特に若い現場では②が多い気がします。民主主義的ですね。
特に①の経験が長い役者さんが②の稽古をすると、そもそも演出に意見をするという文化自体が無いため、「何かアイデアある?」と聞かれても口ごもるしか無くなってしまいます。
そして、演出家からしてみたら「役者ももっとアイデア出せよ」となり、役者からしてみても「なんでこの演出家は指示をしないんだ」となるわけです。
どちらの稽古方法が良いのかという議論はここではしませんが、いずれにせよ初日から100点を出しに行くことがお互いに必要だと思います。
台本だけを見てもわからない部分も自分でイメージをして、現段階での完成形を仕上げてから稽古に臨む。それを演出家のプランと擦り合わせ、修正していく。それが「共に創っていく」ということなのです。
4.訓練を積んでおく
ここまでいくつかの方法を示してきましたが、恐らく最も重要なのは「自分の力をつけること」です。
今回例として参考にした「ひとみゅー」ですが、はっきり言ってこのメンバーだから出来た稽古方法でもあります。
それもそのはず、このメンバーは全員力があるのです。
1人で30分芝居が出来て、しかも歌えるというメンバーなのです。つまり、稽古時間を訓練に費やす必要がない。作品作りに100%集中することが出来るのです。
僕は演出もやるので思うのですが、そもそも訓練が足りない役者が多すぎる。
発声の技術がない、身体がコントロール出来ない、演技の修正が出来ないなど、自分の力で何とか出来る部分が足りてない人は非常に多いです。
そのため、稽古時間を訓練に費やさなければいけない時が多くあるのです。
※多くの場合、演出家が妥協して、それに応じて演出を変えざるを得なくなります。
役者は人間を扱うプロです。当然訓練が必要なのです。日頃から訓練をしましょう。
まとめ
以上が「舞台の稽古を効率的にする4つの方法」です。
あらためて書くと
- 半立ち稽古を無くす
- 日によって稽古参加者を変える
- 初日から100点を出しに行く
- 訓練を積んでおく
言いたいことが最後に集約されてた感ありますが、ここからより良い舞台が生まれてくれることを願います。
それでは。
忍翔(おしょう)
インプロバイザー(即興役者)、インプロ(即興芝居)&演技指導、演出、俳優。
高校から演劇を始め、大学から奈良橋陽子が主宰を務めるMLSにて英語劇を始める。その後、国際的に活躍するインプロ指導者・今井純、アクターズスタジオ生涯会員・ボビー中西に師事し、インプロとマイズナーテクニックを学ぶ。20歳で日本初の学生インプロ団体「劇団しおむすび」を立ち上げ(現・プロデューサー兼指導)。
22歳で単独即興ライブ「O-SHOW」をスタート。24歳でイタリア・ミラノで行われたインプロの国際会議に参加し、インプロの国際組織「国際シアタースポーツ協会」のメンバーとなる。
現在は舞台の企画や指導を行う傍ら、表現者としては一人芝居の可能性を追求している。
WEBサイト
https://twitter.com/osho_jam