皆様ご無沙汰しております、しばいのまちに帰ってまいりました藤田です。
おかげさまで前回の連載が大変好評だったらしく!!こうやって第2弾のお話を頂戴したのでお受けいたしました。
前回連載中から終了後も「しばいのまち見てお仕事のお問い合わせしました」とか、先日写真家の友人と2人展をやったときも「しばいのまちきっかけで知ったので来場しました!」とか、友人からテレビに出てるぐらいの著名人の方まで私の連載を読んでいただいたと聞きまして、ありがたいかぎりです。
※藤田さんの記事一覧↓
先日、前述の通り私は2人展をやりました。
というのも、舞台の制作って、特に私みたいなフリーランスで受けてる人間は「他人の妄想を形にしつつ」「それが興行として回るように水面下で根回しする仕事」、すなわち「基本的にクライアントありき」なのですが、いかんせん私も写真家の友人も美大出身なものですから久しぶりに「自分のための作品作り」をやってみました。
いわば、普段我々のクライアントがやってるところを自分たちがやってみた、という感じです。
まあまあまあ、普段自分がイベントの企画制作やってても実際に動くとやはり大変。いわば主催・プラン・演出・仕込み・来場者対応と全部自分達で回すのでね・・・。アート作品なので出演こそないですが。
そう、イベントを企画するのはとかく時間も体力も精神力もそしてお金もかかります。
今回は今までの私の経験をベースに、イベントの類で「そもそもお金ってどこにかかるの?」という点について、説明してみようと思います。。
あくまで私の経験をベースにしているので、一意見として参考程度にしていただければ幸いです。
劇団「しばいのまち」が公演を打つとしたらで考えてみる
例えば、架空の劇団「しばいのまち」が公演を打とうと計画いたしました。
劇団メンバーは脚本・演出・出演の加藤くんと座付き制作の小池くんの2人、劇場を押さえているのは月曜日から日曜日までの7日間、仕込み2日間・本番5日間というスケジュールを想定します。
劇場の値段にもよりますが、100人キャパ程度の劇場と想定して、予算は150〜200万ぐらいでしょうか。
ではかかる経費を公演に対する時系列順に見ていきます。
・公演場所:しばい劇場(キャパ100人)
・スケジュール:仕込み2日、本番5日の7日間
・出演:15名
・制作:1名
・想定予算:150万
※本記事に記載する項目及び費用はあくまで筆者の過去の経験等を参考に出した一例です。
公演にかかる費用は毎回大きく変動するという前提で、参考までにご覧下さい。
公演前(企画立案〜稽古期間中〜稽古場バラしまで)にかかる費用
絶対かかるもの
会場代金のうち手付金・前金
学生演劇の学内公演とかなら無料であることも多いでしょうが、一般の貸し出されている会場を利用するとなるとレンタル料は必須になります。予約ルールは会場によって異なりますが、まあだいたい手付金が必要です。
そりゃそうですよね、会場としても突然飛ばれても困るし保険はかけますよね。
プランによっては調整ができるが必要なもの
印刷物
チラシ、台本、チケット実券、アンケートの印刷にかかる費用です。
昨今ペーパーレス化進んでるとはいえ、避けて通れないアナログ文化です。
稽古場代
区などの提供しているスペースを利用するなどして安く抑えることも可能ですが、反面その都度荷物を持ち帰ったり、セットを立て込んだりできないデメリットも。
また、実寸を確保して稽古するとなると劇場の大きさが広くなるほど広い稽古場が必要になるので、何を優先するのか、というのは難しいところです。
舞台美術・大道具・小道具・衣装製作費用
衣装や小道具は各自で持ち寄ったりすることが多いし、個人負担になることも多い衣装。費用負担は誰になるのかはクリアにしておきましょう。
材料だけではなく製作を依頼する場合はそこの人件費も含みます。
舞台・楽屋・受付周りの消耗品類
意外と忘れがち、消耗品関係。
ゴミ袋や養生テープなどのテープ類、人間が集まっている以上避けて通れないけど意外と忘れがち。そして少なく見積もりがち。
急いで買いに行くと高くつくので、早い段階で準備しておくのをオススメします。
荷物の運搬費用
運搬手段にもよりますが、レンタカー代金やガソリン代、宅配便などの荷物発送料金など。
オプション的な出費
脚本の上演料
劇団「しばいのまち」は加藤くんが脚本を書いているように、『自分で作品書いてるからかからない!!』と言う人もいるかもしれませんが、「今回はあの有名作家の作品を上演しよう」となった時にその人の著作物をホイホイ上演していいわけではありません。
まず上演許可が必要かつ、その上で上演料が発生します。
一例ではありますが、日本劇作家協会のガイドラインでは『公演総予算の(1) 委嘱料、再演料など名目を問わず、最低上演料は公演の総予算の5%とする』とあります。(参考:http://www.jpwa.org/main/copyright-95)
細かいルールなどは実際のところケースバイケースではあるとおもいますが、「誰かに頼む」「誰かの作品を使う」のであれば避けて通れないお金の部分です。高校演劇出身の方だと、このやりとりは経験したことがあるのではないでしょうか。
その他、JASRAC利用料金などにあげられるように権利関係はルールをきちんと確認。他人の著作物を使ってとなると諸々かかります。もの作る人間としてそこはお互いに敬意を持っていきましょう。
プレイガイド利用料金
システムの利用登録料金や、販売手数料(チケット代金の6〜10%)程度です。
収益についてはこのマイナス分も計算して産出する必要があります。
その他、細かな費用
- DMを郵送するならその発送料金
- 広告を出すならその出稿費用
- グッズ販売をするなら製作費用
- 打ち合わせの会議会合費
などなど、「必須ではないけれど」「使う可能性はある」ものは非常に多いです・・・!
・会場手付金・前金:10万
・印刷物:3万
・稽古場代:5万
・舞台美術大道具小道具衣装制作費:10万
・消耗品類:1万
・荷物運搬費用:3万
・プレイガイド利用料金:1万
・その他細かな費用:2万
合計:35万
公演中にかかる費用
ケータリング代
お弁当を出すところ出さないところは多分団体の方針によりけりとは思いますが、ケータリングコーナーの充実はモチベーションとテンションを上げるのに非常に役に立ちます!(主にスタッフ)
道具のメンテナンス費用
消え物(食べ物)を使う場合や、小道具や衣装のメンテナンスなど。
記録写真・映像撮影
自分たちで撮影するにしても機材や記録媒体について費用がかかったり、専門業者に委託するならこれまた人件費がかかる点。
ケータリング代:2万
道具のメンテナンス費用:1万
記録写真。映像撮影費:5万
合計:8万
公演後にかかる費用(主に精算)
公演が終了して支払うお金は主に「人件費」と「会場費」です。
人件費
この世で一番かかるものと言っても過言ではない人件費です。
よって、主催者が兼任しているものは業務委託費用として発生しませんが、自分たちでまかなえていないところはきちんと払わないといけない部分です。
劇団しばいのまちの公演の場合は「脚本・演出」を加藤くんが、「制作チーフ」を小池くんが担当しているので、彼らの利益部分は往往にして最終的な黒字から拠出することになります。よって他の部分ですね。
出演者へのギャラ
まず、出演者へのギャランティの類。これに関しては出演するタイミングで
*固定のギャラ(チケットバックとかはなし)
*固定ギャラ+歩合
*完全歩合制(おもにチケットバックや物販個別売り上げなど)
など色々なパターンがあると思います。
拘束期間が長いスタッフへのギャラ
次、拘束期間がもっと長く、テクニカル部門でクレジットされているスタッフへの支払い
・舞台監督
・音響 照明
このあたりは安全面含めてプロの人を使ってくださいという指示がある劇場もあります。
加えて、仕込み・バラしなどのスポットで来てくださる方への人件費もかかります。
制作:当日運営のスタッフへのギャラ
運営周りのスタッフへのギャラ。
もちろん、制作のトップはいるけれどチケット管理(票券)や広報を外注するなら外部依託費が発生いたします。
舞台制作に関わったスタッフへのギャラ
舞台そのもの周りだと、美術、衣装のプランナー、宣伝美術、ダンス・歌・殺陣指導など
と、自分たち以外のスタッフさんに作品作りに協力してもらった場合は謝礼金がかかります。
会場費用(精算)
劇場の付帯設備利用料金は実際のプランによって何を利用するかどうかは本番のプランによりけりなので、最終的に何を使ったかをベースに清算することが多いです(公共劇場系)
そして「お!会場費安い!ここに決めた!」と決めたはいいが、ちゃんと読んでない人がもめるのを山のように見てきた問題、それは『付帯設備利用費』『持ち込み料金』『電気代』などLCCのオプション方式で課金されていきます。
最初に説明はちゃんと読みましょう。このほかにもゴミ処理代金が発生したりします。
出演者へのギャラ:2,000円×7ステージ×15人 = 21万
拘束期間が長いスタッフ:50万
制作・当日運営スタッフ:10万
舞台制作に関わったスタッフへのギャラ:5万
会場費:40万
合計:126万
※税金の扱いについての注意
あと内税表記か税別表記か確認してますか!?あなたは個人の任意団体だったとしても、仕事を受けてくださってるスタッフさんは法人などで消費税がかかることも。
税金関係の支払い云々は結構フリーランスでもなあなあになりがちなポイントなので、お金絡むところは要注意です。
まとめ
ここまでかかった費用を合計すると。
公演前:35万
公演中:8万
公演後:126万
合計:169万
(実際に公演を打つ際にはその様なことにならないよう気をつけましょう)
公演を打つ中で一番大きくなるのは「会場費」と「人件費」になるかと思います。
そして、改めてになりますが、記載したのはあくまで空想の劇団が公演を打つ想定をした場合の一例です。
一から十までお金がかかるイベントの催行。
よく「これ、材料費だけ見たら原価**円なのにこの値段で売るのは高すぎる!」という話題が上がったりしますが、かかっているのは材料・原価のお金だけじゃなく稼働している人の時間や手間にもお金もかかっているのです。
一見、見えないようであちらこちらで多くの人が動いているからこそ、お互いに敬意を持って仕事をして行きたいものですね。
藤田侑加
兵庫県神戸市出身。大学で舞台美術を専攻後、卒業後演劇の制作として活動を開始。現在はフリーで演劇の企画・広報・制作から海外の演劇祭などにも参加している。時々グラフィックデザインも。
ツイッター:@yukarienne