結成10週年を迎えた浜松の劇団「絡繰機械’s(カラクリマシーンズ)」の主宰、唐津さんと劇団員たばるともさんのインタビュー後編です。
どうぞ!
※前編はコチラ
なぜ手間もかかって、大変でも劇団を続けることが出来ているのか
ーそうですよね。とはいえ、劇団が10年も続くって大変なことだなと思っていて、更に手間もかけた活動だと、それこそ疲れて辞めちゃうとかってなりそうな気がするんですが、絡繰機械’sの皆さんはどうして続けて来れたんですか?

ーあくまで仕事は別で生活の基盤を持った上で、あえて割りきって演劇活動では食べていかないという考え方ですよね。

例えばですが、僕は音楽出身なので、地方の音楽やっている人ってそういう考え方の人って増えているんですよ。
「音楽で有名になりたい」、「音楽で食いたい」ってやるんじゃなくて「好きだから音楽を続ける」みたいな。
それって演劇でも別にできることだなと思ってやってますかね。
逆にプロを目指してやっていると、結構な負荷をかけたときに続かないですよね。「こんなにやってるのにプロになれないじゃん」とかって辞めちゃう。
好きなことだって理解してやってるからこそ、大変なこともできて、作品作りも追求もできる。
ーなんだかお話を聞いていて、ハッとすることばかりです。「好きだからやっている」というのを忘れずに活動できるってとても大事だし、強いなって思います。

でもそれは、好きでやってるから言えるし、良いものを作るって同じ目的のもと集まってるからこそできることかと思います。
劇団員から見た、絡繰機械’sの環境
ーちなみに、稽古も舞台の準備も結構ハードな環境とのことですが、劇団員から見て、その環境はどう感じていますか?

役者一人一人が成長することで劇団も成長して、その結果お客さんに評価されてきたのも感じてます。
稽古中に厳しくて、唐津の言っていることがよくわからないことがあっても、毎回、出来上がった作品に関しては「なるほどな」と思えるんですよね。
ー唐津さんの作品作りの姿勢に、役者も応えようとして、その結果、お客さんも評価してくれる。そういう環境でお芝居ができているんですね。

言われたことをした結果、その先で必ず良くなるって信頼しているから出来てます。
ー自分が成長を感じられて、劇団もそれで成長しているのを感じられるってすごい良い環境ですね。
劇団運営にあたっての大切な心構え
ーお話を聞いて、劇団という枠の中で、お互いが信頼関係を作り、好循環が生まれているんだなと思いました。

劇団が少なく、役者が育たないという問題はあって、僕としては、地域のためにも劇団が力を持たないと役者が育っていかない、とは思っていました。
さっき話した「最終日にダメ出しする」とかも、プロデュースだと出来ないじゃないですか。
新しい何かを身につけるって、時間がかかるんですよね。攻略法や魔法はないんです。
劇団だからこそ劇団員としっかり向き合いながら真剣に育てることが出来て、それで役者が育てば地域の演劇シーンが盛り上がっていきます。
地方としてはそうしていったほうが良いと今でも思っています。
ー確かに、プロデュース公演だけしかない環境だと、継続して積み重ねて学んでいくって中々難しいかもしれませんね。
劇団を運営するとはどういうことか?

その部分を理解してないまま、公演をしたいがために劇団を立ち上げた結果、多くの団体が上手く行ってない様に感じています。
ー具体的にどこが違うんですかね?

劇団を企業体、商品やサービスを公演と捉えた場合、商品を作って売るというのが本分ではあるものの、それだけでは企業は存続できないですよね。
顧客はもちろん協力企業や同業他社、周辺地域社会での立ち位置なんかを考えあわせて、現状を把握して、指針を立て、そこに向かって行けそうな体制を構築して維持しないと、そもそも商品を生み出せなくなっちゃう。
その「体制の構築と維持」っていうのが運営ですよね。
だから公演のために劇団があるというより、劇団の運営活動の中で公演があるという意識をもつのが大事かと。
ーなるほど。

なのでまず公演とその集客を優先しがちになってしまう。とはいえ運営が立ちゆかなくなるとそもそも公演打てなくなっちゃうわけで。
なので劇団の指針があり、その指針に基いて運営し、その中に公演やらなんやらの活動があって、という考え方をしていくべきだと思っています。もちろん、存続そのものを目的にしちゃうとそれはそれで問題だと思いますけどね。
うちは「趣味として演劇をやる」「好きだから全力でやる」みたいな指針がまずあって。めちゃめちゃシンプルなんですけど。その上で、時々に応じた目標を立てて運営やいろんな活動をしてきたので、10年地方で続けられたのかなと。
「浜松の演劇シーン」とは何か?
今のお話の中の冒頭にも少しありましたが「地域の演劇」というのをどうしていくかって、地方で活動している人達が考え続けていることですよね。その辺りってどういう風に考えてますか?

それで地方で活動しているとよく「演劇シーンを盛り上げなきゃダメだよね」って話になるんですけど、その「演劇シーン」が何なのかってわかってない中で、やっても盛り上げようがないんですよね。
多くの人には「演劇シーン」や「お客さん」とは誰なのか具体的に見えてないと思うんです。
ーなるほど。誰を対象としているのか、分からないまま話してるってことですよね。

外部から著名な人を呼んだり、広告に力を入れたりもいいんですけど、それで自分たちが盛り上がっていけるのか、という。
その視点を持ったことで、市民演劇祭(はままつ演劇・人形劇フェスティバル)も運営が変わってきたんですよね。
じゃあどうなれば盛り上がるのか。浜松は土地柄サッカーや音楽が盛んなんですが、それはやってる人が多いからというのが最大の要因で、メディアの注目度や集客能力なんかはそこからの派生なんですよね。
なので、既存の劇団が活動しやすくする(やってる人を継続させる)とか、将来の担い手を増やすための仕掛けをしていくといった方針に移行したんです。
結果として、演劇祭に参加する団体が増え、高校演劇や他の文化団体との交流が生まれ、劇団間のつながりが強くなるといったような効果が出てきてます。
ー自分たち自身が盛り上がるという新たな視点を持ったことで、実際にイベントも変わっていったんですね。すごい共感できる考え方です。
今後について
ー最後にお聞きできればと思うんですが、10週年を迎えて、今後は劇団としてはこうしていきたいとかってあるんですか?

再優先なのは「もっと面白いものをつくりたい」ってことです。
面白い作品を作るって、上限が無いし、それをやり続けるのが僕自身が一番面白いと感じていることなので。
その上でもう1つは、人を増やして体制を作っていきたいってことですかね。

もう少しメンバーが増えて、体制をもっと作っていけたらいいなと思っています。
ーメンバーが増えて更に絡繰機械’sが発展していくのを楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。
まとめ
地方の演劇事情のお話から、作品作りへの想い、劇団運営の考え方など、多くの発見と気付きがあるインタビューとなりました。
劇団員同士の信頼も強く感じましたし、こういう環境で活動が出来ると本当に楽しいんだろうなと、素直に思いました。
改めて、お話頂いた中から気付きをまとめると
・地方こそマーケット感覚を持つ
・「好きだからやっている」というのを軸に据えて活動する
・指針を持って劇団運営をしたうえで、公演等の活動があると考える
・演劇シーンは自分たち自身だと考える
このあたりは全国の演劇人が参考にできるのではないかと思います。
唐津さん、たばるさん、どうもありがとうございました!

絡繰機械’sの皆さんと記念に1枚
絡繰機械’s
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次回公演情報
ヨコシマデイドリーム
なんやかんやで、はや10年。いつも通りの、特別な公演。
舞台は島国の王国、海を渡った先の小さな島、そしてその先の大陸と、いろんな場所のいろんな時間を行きつ戻りつハイスピードに展開します。とある実在の人物、その人生をバラバラに分解し、様々な思索の下、舞台の上に組み上げてゆく愛しくも残酷なモザイク。その幾何学は、はたして何を描くのか──
石造りの塔に捕われた女と、小さな島に取り残された人々。そして白昼夢といえば、なんといってもやはり、ワニ。
■日時:5/27(土)19:00、28(日)10:30、14:30(開場は開演の30分前)
■会場:なゆた浜北(浜松市浜北区貴布祢3000)
■詳細:http://www.karakurimachines.com/yokoshima
うちはそもそも、この活動で食っていこう、有名になろうと、切羽詰まった感じでやってないので、それもうちの強みで、10年続けてこれた理由かなと思います。
なんでやってんの?って聞かれたら「好きだからやっている」ってきっぱり言えますからね。