お久しぶりです。
宮城県仙台市の社会人劇団“Team HacCLose”主宰の武田です。
今回でなんと、連載5本目の記事となりました。
この記事が掲載される頃、私は次々回公演の脚本を絶賛執筆中のことと思います。頑張れ自分。
さて、前回は「新入団員が欲しいなら、未経験者をターゲットに」→「では未経験者に知ってもらうには」という前半3ステップをご紹介しました。
前半のステップをクリアできれば、今回紹介する後半はイージーモードです。
というか、知らない人に知ってもらうというのは、超ハードモードです。
地方においては、知ってさえもらえればお客様も入団希望者も集まると言っても過言ではありません。
面白い演劇は首都圏と関西にしかないと、多くの方が思っています。
情報過多の現代において、潜在層は情報に対して受動的です。より魅力的な情報が受け身でも溢れているため、わざわざ自分で探そうとしません。
「ggrks(ググれカス)」なんて言葉、使わなくなりましたね。黙っていても情報が氾濫し、一言呟けば誰かが教えてくれる時代です。
弱小劇団に、知らない人がたどり着く確率はかなり低い時代です。
そんな稀有な方が、劇団にコンタクトをくれたら、逃してはなりません。
さあ、いってみましょう。
未経験者を演劇沼に引き込む7ステップ!~後編~
4. コンタクトをとる
劇団を知ってもらい、興味を持ってもらい、公演を観たかどうかはさておき、入団希望者から連絡がきます。
メール(問合せフォーム)からの連絡において注意したいのは下記5点です。
問合せフォームの必須事項は少なくする
その後のやりとりで、必要情報はいくらでも訊けますので、最初のアクションは手間にならない程度の情報だけで十分です。
希望者からすれば見ず知らずの人にあまり沢山個人情報を伝えるのは怖いですし、何よりせっかくその気になっても段取りが面倒だと後回しになってしまいます。
最初の文面で判断しない
運営側からすると、宝物のような家族のような大切な劇団ですので、「見学お願いします!」の一文だけの問合せだったり、「公演、意外と面白かったので、入ってみたいです。」みたいな内容だと、なんとなくムッとします。
あ、これは、どこかに入団希望を出そうとしている方も注意してくださいね。
第一印象大事です。ですが、受け手としては、ムッとしたままぶっきらぼうな返事をして、相手を試すようなことはしてはなりません。
どんなコンタクトだったとしても、この時点では希望者は大切なお客様です。
あなたに説教をされる筋合いはありません。できるだけ丁寧に、平等に返事を書くのがおすすめです。
最初の問合せで心配だなと思った人が、入団してから想像以上に活躍してくれたり、誤解が解けたりすることはよくあります。
単純に、長文を書くのが苦手、というタイプの人もいますので、そのような人を軒並み排除してしまってはもったいないです。
返事は1日以内にする
入団希望者がコンスタントに問合せを寄越すと、人事部は大忙しです。
主宰以外の人に連絡業務を任せるにしても、結局主宰とのスケジュール調整が発生したりして二度手間なので、私の劇団では、すべて自分が担当しています。
主宰となると、脚本・演出業を兼務している方も多く、社会人劇団であれば本業もありますので、1日以内にすべてのレスポンスをするというのは結構大変です。
ですが、希望者は大切なお客様です。お客様にそれらの事情は関係ありません。
1日遅くなるごとに「自分は歓迎されてないのかもしれない」という不安を募らせ、それが入団前からモチベーションの低下に繋がります。
複数の劇団に同時にアプローチしている方も多いので、そういった場合は早い者勝ちです。どこよりも早く返事をすれば、好印象を残せます。
返信は1度で完結できるよう雛型を作る
「興味があって連絡しました」という内容に、「入団希望ですか?客演参加希望ですか?」と返して「入団希望です」ときて「それでは見学にきますか?事前に面談しますか?」と返して「見学希望です」ときて「それでは日程は…」…。
きりがないし、相手の返信速度によっては、せっかくの都合の付く日が通り過ぎてしまいます。聞くことは一気に聞きましょう。
私は、
- 参加形態の希望
- 見学希望の場合の可能日
- 面談希望の場合の可能日
- 団員規約など
- 相手のプロフィール
以上5点を1度に訊けるような雛型を用意しております。
相手の名前は最初と最後に入れるようにすると、コピペして別な人の名前が入ったまま送ってしまうというのを避けられます。
心を強く持つ
皆平等にお客様とは思って対応しますが、5人に1人くらいは、「おいおい滅茶苦茶だな、君」というような人がいます。
さらには入団すらこれからなのに自分の劇団に文句を付けて来たりする人もいます。
主宰以外は知らないところで、2ヶ月に一度くらいはこのようなことが起きます。
嫌な思いをして自分だけで抱えるのは、小さなことでも意外とこたえますが、次の優秀な人材のためです。
頑張りましょう。
できれば自分や、ごく親しい人の間だけに愚痴は止めましょう。
ネガティブな情報を発信する人の周りには、ポジティブな人は集まりません。
5. 事前に面談をする
稽古見学は比較的多く見かけますが、出来れば見学前に1度1対1で会って話す機会を設けることをおすすめします。
主宰=演出であれば、意外と見学中にのんびり話せる機会はないものです。
相手が未経験者であれば特に、「見学しても、今何をやっているのかわからない」「見ているだけでは自分にできるか余計に不安になってしまう」「ましてや突然やらされるのは…」という状況に陥ります。
主宰はなかなか忙しいので、1人1人に会って1時間程度時間をとるのは手間だと思いますが、それが入団に繋がれば、劇団にとって時間的・金銭的な貢献に繋がります。
月の会費が1000円だとしても、年間1万2000円をたった1時間で生み出せるのですから、手間は惜しまない方が良いです。
実際に私の劇団では、希望者の8割とは事前に面談をしているのですが、面談をした方の入団率はほぼ100%、未実施の方は50%程度です。
入団を決める際、見学のみの場合、相手の判断に依存しますが、面談をしておけば自分と相手とのやりとりの中で不安を解消したり、参加できる形態を探ることができるのも利点です。
面談で話すこと
面談は面接と違い、希望者を計る目的ではありません。不安を解消し、疑問を解決し、劇団への理解を深めてもらうために実施します。
まずは、希望者が経験者なのか未経験者なのか、観劇経験はどの程度あるのか、経験者でも1から舞台を作った経験があるかなどを訊いておくと構成がスムーズです。
未経験者であれば、舞台の企画から本番までの流れを最初に説明してあげると良いです。
その上で、実際に見学にきて頂く現在は、この段階の稽古をしているなど、始めにわかっていると見学しやすいように思います。
出来上がったものしか見たことがない人にとって、演劇とは常に完成されたものですので、初期の稽古を見て「クオリティが低い」と認識されない為の予防線にもなります。
経験者であれば、これまでどのような形式でどれくらいの数の舞台を作ってきたかを訊いておきましょう。
企業の面接などでは志望動機はほぼ必ず訊かれます。
希望者からすると結構面倒な質問なのですが、実際に面談をすると「なぜ、うちの劇団を希望されたのですか」と本当に聞きたくなります。
これは、相手が劇団のことをどれくらい知っていて、劇団に何を期待するかを把握したい気持ちからです。
率直に答えてくれたり、困ってしまったり、反応はいろいろなのですが、言葉を換えても、これは訊いておいた方が良さそうです。
最後に、見学や今後参加するにあたってのスケジュール確認をします。
意外とやることは少ないです。
- 劇団の説明
- 希望者の経験
- 志望動機
- スケジュール調整
以上の4点くらいで十分ですので、1時間で設定できると思います。
見学での注意点
見学者がいる稽古は、初デートと似ています。
教訓はたった一つ。
良い格好をするより、相手のことを思いやろう
見学者がくると、「俺達、こんなことできるんだぜ!」「俺達、面白いんだぜ!!」と変な感じで気合が入ってしまうのですが、そんなことよりも「寒くないですか?」「座ってばかりで退屈じゃないですか?」と声をかける方が、良い印象を残せるように感じます。
デートでも自分を良く見せることに必死になるよりも、「ちょっと疲れた?休もうか?」の一言が言える人の方がモテます。ほんとに。
相手を気遣う、歓迎ムードを出す上でやるべきことは、質の高い稽古ではなく、短い時間でも、必ず全員が自己紹介する時間を作ること、主宰自らが見学者を紹介し、終わった後に話をすることの2点です。
6. 規約等の説明
見学をして、「入団したいです」と一言頂ければ、ほぼ新入団員獲得となるわけですが、最後の最後にお金とスケジュールの規約については確認しておきましょう。
月々の会費の有無
「募集要項に書いてるじゃん」というのは成立しませんので、いつから発生するのか明確に個別に伝えましょう。
私の劇団の場合は、学生と社会人で会費が違うので、「あなたは何月からいくらです」としっかり伝えています。
チケットノルマについて
私の劇団はチケットノルマがありませんので、詳しくはわかりませんが、一部の団員にとっては多大なストレスになる内容ですので、きっちり負担額など明記するのが望ましいと思います。
稽古場所代について
公演経費として管理するのか、主宰が持つのか、割り勘にしてもその都度なのか、1回あたりいくらくらいなのかを明記します。
私の劇団では一回あたり300円程を当日の参加メンバーで割り、月末徴収にしています。数式をはめたエクセルファイルを用意すると管理が楽です。
稽古日程について
何曜日にどれくらいやって、通し稽古をいつくらいに想定していて、どれくらいの頻度で参加して欲しいか伝えます。
特に未経験者の方は、演劇にこれほど時間がかかるとは思ってませんので、5回くらい練習にくれば本番に出られると思っています。
私の劇団ではそれも不可能ではないのですが、どのくらい参加して欲しいかは事前に伝えましょう。
本番前後の日程に関して
これも未経験者ですと、本番日程だけ仕事を休めれば大丈夫と思っている場合があります。
仕込みやバラシなどが別日にある場合、特に場当たり・テクリハ・ゲネプロを別日に設定している場合は必ず伝えておきましょう。
7. 入団
新入団員獲得おめでとうございます。
最後に入団後は、これまでの情報(稽古スケジュールや各スタッフの資料など)がどの段階で入団した人にも平等に渡っていることを確認して完了です。
大詰めなのでしっかり最後までやりましょう。
まとめ
今回はいつにも増して長文になりました。
だいぶ読み飛ばされていることと思いますので、端的に前回と今回の記事のまとめをします。
仲間としてではなく、お客様として扱うということです。
ついつい、まだ入団していないのに「これから共に演劇を作る仲間」と思って対応しがちなのですが、相手は「私はここに、お金と時間を捧げて良いのだろうか。」と思っている状態です。
これは完全にお客様と同じです。
良い意味で、丁重に大切に扱いましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次に機会をいただけましたら、稽古場にコーヒー・ほうじ茶・ココア・チャイ・抹茶ラテ完備の、Team HacCLose運営方針編とか、いかがでしょうか。
武田らこ TAKEDA Rhaco
演劇活動4年のブランクを経て、2015年に宮城の社会人劇団“Team HacCLose(チームハックローズ)”を旗揚げ。舞台に立ちたくて立ち上げたのに、現在は脚本・演出を担当。

Team HacCLose
閉鎖的(Close)な環境を打開(Hack)したいという思いから命名。
観る人も演る人も、気軽に楽しめることをポリシーとしている。
2017年8月の第2回公演に向けて活動中。

公式サイト→http://hacclose.main.jp/
Twitter→@hacclose