こんにちは。
宮城で社会人劇団“Team HacCLose”の主宰をしている武田らこと申します。
4月になり新生活がスタート、この記事が公開される頃には、ようやく新しい学校や職場にも慣れ、暇を持て余し始める方もいらっしゃるかと思います。
今がチャンス。
本日は、劇団に新入団員を呼び込む作戦をご提案できればと思います。
私の劇団では、時間とお金をかけずに舞台を作ることを裏目標にしています。
表向きは「Close→閉塞感を、Hack→ふっとばそうぜ」という劇団名なのですが、本音は「Close→財布の紐をキュッと閉じて、Hack→時間をかけずに良い仕事をしようぜ」と思っております。
新入団員を獲得することで、演劇とは切っても切れない時間とお金の問題を解決できる可能性があります。詳細は第2回目の記事をご覧ください。
特に趣味で演劇を続ける上では、時間の捻出、赤字を出さない、新しい風を入れるという取り組みが不可欠です。
せっかく良き趣味として演劇を続けていたのに、「仕事が忙しくなって続けられなくなった」「毎公演赤字で劇団が維持できない」「メンバーもお客様も毎回同じで飽きてしまう」という理由で破綻してしまってはもったいないです。
発足当時は自分たちが作りたいものを作り続けるだけで満足できても、それを続けて行くには健全な環境と新陳代謝が必要です。
さあ、始めましょう。
題して、未経験者を演劇沼に引き込む7ステップ!~前編~
想像以上に話が長くなってしまった為、2回に分けてお送りします。
なぜ未経験者をターゲットにするのか
まず、どのような人が入団する可能性があるかを考えます。
団員になる可能性がある人は、4パターンに大別されます。
- 演劇経験者で既に他団体に所属しているひと
- 演劇経験者で、何かしらの事情で現在演劇をしていないひと
- 未経験者で演劇に興味があるひと
- 未経験者で演劇に興味のないひと
どこの劇団も、即戦力を欲しているとは思いますが、このように分けてみると、経験者を入団させるハードルが、かなり高いことに気づきます。
演劇経験者で演劇をできる環境の人は、すでにどこかの団体に所属しています。
そこから団員をかすめとることができるでしょうか。または、経験者で現在演劇をしていないのならば、相応の精神的あるいは環境的要因があるため、自分たちがそれを解消できる組織であらねばなりません。
必然的に、我々中小劇団が狙うのは、未経験者に絞られて参ります。
入団するまでの流れ
さて、一人の人間が入団するまでの流れを確認してみましょう。
- 劇団を知る
- 劇団のサイトや印刷物を見る
- (公演を見る)
- コンタクトを取る
- 見学や面談をする
- 規約等の確認
- 入団
以上の7ステップではないでしょうか。
3をカッコ書きにしたのは、私の劇団の新入団員(2016年9月~2017年4月現在)19名の内、公演を実際に観ている者が7名と、半数に満たないからです。
さらに、社会人劇団では、年に1~2回の公演ペースが多いと思いますので、公演を前提にしてしまうと、タイミングが限られてしまい、機会損失になってしまいます。
現在、団員募集をしているのになかなか入団希望者から問い合わせがないという劇団の方は、7ステップのどこでつまづいているのか把握する必要があります。
1. 劇団を知る
まず、ここが想像以上にハードルの高いステップです。
突然ですが、皆様は自分の地域に草野球チームが何チームあるかご存知でしょうか。大人のための書道教室の平均的な会費はご存知でしょうか。趣味のフラワーアレンジメント教室が、どのくらいのペースで、どこで発表の場を設けているのかご存知でしょうか。
演劇未経験者にとって、上記と同様に我々は認知されていないと自覚するところからスタートします。
こうして見ると、良い舞台を作っても未経験者には認知されないことがわかります。草野球チームで最強になってリーグ優勝しても、我々がその存在を知ることには繋がらないのと同様です。
良い舞台を作るのはあくまでもステップ3であって、そもそも知られていないことには直接の集客や入団希望には繋がりません。
どのように知ってもらうかですが、第一にはSNSやチラシ配りによる情報の拡散、第二に興味を持ってもらうことなります。
人は、興味のない情報を自然と除外しますので、拡散することと興味を持たせることは同時並行で行わなければなりません。
ツイッターなどで「サイトはこちら」というだけの内容のツイートをよく見かけますが、興味を持たせることができ、サイトまで誘導できない内容では、何もしないのと同義です。
では、どのように興味を持ってもらうかですが、他のジャンルとの重なりを見つけることが重要だと私は考えます。
「音楽」「絵画」「スポーツ」「お笑い」が好きな人が、思わず覗いてみたくなるような内容設定をしていきます。これは、自分の劇団がどの層に一番重なるかを考慮していけば良いと思います。
先の例え話に戻りますが、「フラワーアレンジメント発表会」というチラシを見ても、おそらく私は興味を持たず、もらったことすら忘れてしまうと思います。それを「愛犬との小庭を表現するフラワーアレンジメント発表会」となっていれば、私は興味を引かれます。私は動物好きなので、「興味のある動物」というジャンルと「興味のないフラワーアレンジメント」というジャンルが重なり合うことで、印象に残ります。
実際に演劇公演で考えると、「BGMはクラシックの生演奏を管弦楽でお送りします」とすれば音楽好きと重なりますし、「90分笑いが止まらない」とすればお笑い好きとの重なりを得られます。
私の劇団の場合は「宣材衣装」を通してコスプレ好きとの重なりを得ています。
先程、拡散と興味は同時並行と記しましたが、むしろどの層に重なり・興味を持ってもらうかが先にあり、その層に対して情報配信をする必要があります。中身のない情報を不特定多数に拡散しても、効果は得られないからです。
斧を売るなら海より山に行くべきです。
チラシの設置で言えば、音楽と重なるならばジャズバーやピアノカフェ、カラオケに設置する、制作美術に気合を入れているならば、写真展や美術館に設置するべきです。
自分たちが力を入れている内容を演劇関係者以外で一番共鳴してくれる層に届けることが知ってもらう第1歩です。どんな情報を、誰に届けるかを定めることが、劇団を知ってもらう上で効果的なアプローチになります。
2. 劇団のサイトや印刷物を見てもらう
次は、劇団を知って興味を持った人に、サイトやチラシなどの詳細内容を見てもらうステップです。
まず、今更身も蓋もない話で恐縮ですが、劇団名が重要だと私は考えます。
ざっくりしたことを言えば、多くの人がダサいと感じる劇団名や、ネガティブイメージの強いワードの劇団名は避けるべきであると思います。
自分の劇団名をダサいとわかっていてつける方は多くないと思いますが、後者のネガティブワードを使っているところは何故か多く見受けられます。
ただでさえ、一般の方からじめっとした印象を抱かれている演劇というジャンルなのですから、これ以上アンニュイに構えてどうするんだと思うのですが。もちろん、ネガティブワードを使っていても素晴らしい作品を作り、人気の劇団はたくさんあります。
今から新入団員のために名前を変えるという話ではありませんが、これから発足しようと考えている方は、単純にポジティブに受け取ってもらった方がいろいろお得というのを意識してみてはいかがでしょうか。
劇団名も然りですが、結局はまだステップ2ですので、ひかれずにコンタクトまで行ければ十分。という観点が必要で、その為には、「求人情報誌でコンタクトを取りたくない求人」をイメージするとわかりやすいと思います。
下記に、私が考える「コンタクトを取りたくない(ひく)内容」をまとめます。
演劇を知っている人しか理解できない内容の説明文
アルバイトを探す時でも、専門用語ばかりが書いてあったら、自分にはできなそうと思ってしまいます。
募集条件に「こういう人はお断り!」と強めに書いてある
お気持ちはお察しするのですが、過去にいろいろあった感がビシビシ感じられて、なんかトラブルが多そうに感じます。
どのページを見ても、団員同士がじゃれあっている写真ばかりだ
これは好みが分かれますが、求人広告などで社員が肩を組んでニコニコしている写真をみると、ちょっと入っていきづらく感じます。それよりも、真面目に仕事をしている写真の方が効果的ではないでしょうか。
実際に公演をいつ、どれくらいの頻度でやっているのかわからない
公演という目標あってこその劇団です。「次回公演:準備中」だけでは、本当に準備しているのか、あるいは今は自分が参加しても良いタイミングなのかがわからず、二の足を踏んでしまいます。
メンバーの顔が見えない
どのくらいの人数で、どんな人がいるのかわかっていた方が、コンタクトを取る上で安心です。野菜の生産者の写真があるのと同じです。
こんなところでしょうか。
個人個人で好みは違うと思うので、メンバーで集まって求人情報誌を開き、「この中で一番入りたくない会社を一斉に指さそう」などしてみると面白いかもしれません。一般的な大多数に悪い印象を与えない広告が作れる気がします。
3. 公演を見てもらう
もうこれは、全力で自分たちが良いと思うものを作るしかありません。
制作段階においては、一般受けを狙う必要も媚びる必要もありません。
結局、入団希望者が集まったところで「劇団が良いと思うもの」と希望者が「良いと思うもの」がかけ離れてしまうようでは、意味がありませんので、しっかりと自分の希望と合致するかを見極めてもらえば良いと思います。
ステップ3あたりからは、あまり希望者に媚びると、あとあと自分たちが方向転換をせざるを得なくなるので、下手に出過ぎず「こんな劇団だけど、どうする?」くらいの姿勢がベターだと思います。
まとめ
私は、それぞれの劇団がどんな作品を作るか、何を理想として追求するかはそれぞれの自由だと思っています。ですが、せっかく作り上げたものが大衆に認知されていないという現状には、自分の劇団に限らず歯がゆい思いをしています。
知ってもらう努力は、作品作りの努力と並行してできるはずで、するべきだと思います。
私もそうですが、公演に向けた稽古ばかりしていると、自然と関係者の知り合いも増え、自分たちの認知度が上がっていると錯覚してしまいます。
私自身の自戒も込めて、各地域で演劇が認知され、活性化されるよう、今一度未経験者の立場に立ったアプローチを紹介しました。
次回はステップ4から。
ここまでは人を集める方法論でしたが、次からは保身編です。
何事も最初が肝心。入団希望者と良好な関係を築き、共に良い舞台を作る為の4ステップです。乞うご期待。
武田らこ TAKEDA Rhaco
演劇活動4年のブランクを経て、2015年に宮城の社会人劇団“Team HacCLose(チームハックローズ)”を旗揚げ。舞台に立ちたくて立ち上げたのに、現在は脚本・演出を担当。

Team HacCLose
閉鎖的(Close)な環境を打開(Hack)したいという思いから命名。
観る人も演る人も、気軽に楽しめることをポリシーとしている。
2017年8月の第2回公演に向けて活動中。

公式サイト→http://hacclose.main.jp/
Twitter→@hacclose