演劇はプロジェクト!「プロジェクトマネージャー」導入のススメ【日向修二】

こんにちは。
サラリーマンやりながら演劇活動をしています、日向修二(ひむかい・しゅうじ)です。
今日は、「演劇を作るのに『プロジェクトマネージャー』を導入したらどうか?」というお話をしたいと思います。

(日向修二の過去記事:就職しても演劇を続けるという選択肢もアリなんじゃない?

目次

  1. プロジェクトマネージャーって何?
  2. プロジェクトマネージャー導入をおススメする理由
  3. プロジェクトマネージャーってどう導入すればいいの?
  4. プロジェクトマネジメントって具体的にどうすればいいの?
  5. まとめ

1.プロジェクトマネージャーって何?

そもそも「プロジェクトマネージャー」ってなんでしょう?

プロジェクトをマネジメントするんだよ、A-han? なんて、ルー語を話していてもしょうがないので日本語にすると、プロジェクト=「計画」を、マネジメント=「管理」する人のことです。

ちゃんとした定義とかはGoogle先生に譲るとして、字面から言うと、

  • 公演の計画をたてて
  • 各セクションがやるべきことをリストアップして(させて)
  • 締め切りを決めて(決めさせて)
  • 全体の進捗をチェックして
  • 必要であればスケジュールの変更を適宜行っていく

ような人です。

僕が働いている会社では「プロジェクトマネージャー」なんて呼び方はしていませんが、実質的にプロジェクトマネージャー的な働きをしている人はたくさんいます。(リーダーって呼んだりしてます)

というか、組織だって仕事を進めようと思うと、こういう「まとめ役」が必要になるので、意識せず誰かがプロジェクトマネージャーをやってる、という感じです。(明確に「プロジェクトマネージャー」という役割を振っている業界もあります。プログラミング業界なんかがそれに当たると思います。)

演劇の現場もそうです。公演ってまさに、「組織だって仕事をすすめる」プロジェクトそのものじゃありませんか。

ということは、誰かが「プロジェクトマネージャー」的なことをやっているんです。

  • 劇団主宰
  • プロデュース公演におけるプロデューサー
  • 演出
  • 演出助手
  • 舞台監督
  • 制作

だいたい、このうちの誰かがやっているんじゃないでしょうか。

僕の印象からいうと、劇団主宰か演出がその役を担っていることが多いような気がします。公演=プロジェクトを企画するのはだいたいその人ですし、劇団主宰=演出(=脚本)なんていうこともザラです。

一言で言うと、プロジェクトマネージャー=まとめ役ということです。今回僕が提案したいのは、「独立して『プロジェクトマネージャー』という担当をつくる」ということです。

2.プロジェクトマネージャー導入をおススメする理由

「もうやってる人が実質いるんだったら別にわざわざ担当を作んなくてよくない?」

という声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません、メリットがあります。

  1. 公演までのスケジュールが見えるようになる(見える化)
  2. いつまでに何をやればいいか明確になる
  3. 客観的にスケジュールのヤバさがわかるようになる
  4. スケジュールが遅れても、どこで挽回すればいいかわかる
  5. ものごとの優先順位がはっきりする
  6. どのシーンをやるべきか、客観的に判断できる

といった具合です。

そもそも、誰かが兼任するのがデメリットなんです。

自分が管理できずに起こる問題

みなさん、こんな経験はありませんか?

  1. 脚本の仕上がりが遅くて稽古期間の後半のスピード感が半端なかった(笑)
  2. むしろゲネの直前でやっと脚本ができた
  3. 演出の好みで、たくさん稽古したシーンとそんなにやってないシーンの差が激しい
  4. 演出も出演する場合、演出が出るシーンの稽古数が極端に少ない

はいコレ、演出か脚本(または演出=脚本)がプロジェクトマネージャー的なことをやっていることが原因です。稽古場を取り仕切っている演出がスケジュール管理していることが多いですが、管理できてないんです。

自分のことが管理できてないんです。

人間は心の弱い生き物です。自分に対する締め切りは甘くなる傾向があります。しかも、「最終的に自分が無理すれば遅れを取り戻せる」なんて思っちゃうんです。

断言します。取り戻せません!

「いや、でも今までの公演でなんとかなったし……」

クオリティが低くなってなんとかなったように見えてただけです!

ということで、演出や脚本からはプロジェクトマネージャーを切り離すべきです。

プロジェクトマネージャーには強い権限が必要

では他の役職の人たちはどうでしょう?

演出助手

いいかもしれませんね。演出助手がやることは、スケジューリングだったり稽古場の手配だったり、プロジェクトマネージャーとも相通ずる部分があると思います。

(現場現場によって演出助手の役割は違うと思うので一概には言えませんが。)

舞台監督

いいかもしれませんね。舞台監督は元々スタッフのリーダー的なところがあるので、まとめ役には最適です。

制作

いいかもしれませんね。公演の興行全体=プロジェクトのことを考えるという意味では、制作は適任です。

しかし、やっぱり僕は独立した「プロジェクトマネージャー」の導入をおススメします。なぜなら、プロジェクトマネージャーには強い権力が必要だからです。

劇団の場合は劇団主宰や演出が、プロデュース公演の場合でも、演出がものすごく偉い位置にいることが多い小劇場界、演出助手や舞台監督や制作は、劇作において演出に逆らえません(舞台監督や制作は、スタッフワークにおいては演出と対等です)。

作品の良し悪しについて、演出は大きな権限を持っています。その演出に対抗しうる、むしろ、「進行管理」においては演出よりも大きな権限をもった存在それがプロジェクトマネージャーです。

・演出助手の場合は、演出に対する権限が弱いです。これは名前のせいです。「助手」って付いちゃってるので……

・舞台監督の場合は、稽古に張り付くのが現実的ではないと思います。座付き舞台監督ってあまりいないですし、小屋入り期間外は他の公演の仕事をしていることも多いです。役者と兼任だといわずもがな、演出より立場が弱いです。

・制作の場合は、舞台監督と同じ理由です。座付き制作さんならいいかもしれません。

3.プロジェクトマネージャーってどう導入すればいいの?

では具体的な導入の仕方です。

1)名前

プロジェクトマネージャーって長いので、「進行管理」にしてもいいです。

別にそのままでもいいんですが、名前が長いとチラシとかに印刷しづらいので……
といいつつ、僕はプロジェクトマネージャーという響きが好きなので、この記事ではコレで通します。

2)期間

基本的にプロジェクトマネージャーが必要なのは稽古期間だけです。小屋入りしたら進行は舞台監督に任せるべきです。

3)権限

ここが一番大事です。テストに出ます。
「進行管理」においては、「演出よりも脚本よりも権限が上」です。誰よりも上です。どういうことかというと、

  • ◯月×日に脚本が出来上がってない
     →じゃあ脚本書きに帰ってください。役者は自主練。※脚本と演出が別人の場合はこの限りではありません。
  • ◯月×日時点で、特定のシーンの稽古数が多すぎる(演出の好きなシーン等)
     →このシーンはもう◯◯回やってて稽古しすぎなので他のシーンを稽古してください。
  • ◯月×日時点で、特定のシーンの稽古数が少なすぎる(演出が後回しにしがちなシーン等)
     →このシーンは▲▲回しかやってないので稽古してください。

というようなことです。

稽古場では往々にして演出が一番権力を持っており、そのせいでいろんな締め切りが延ばされまくります。

なので、あらかじめ締め切りを切って、「いつまでに出来なければこうする」というのを決めておくのがいいです。ひとつ注意なのは、締め切りが来るまでは強権発動すべきではないということです。

プロジェクトマネージャーの導入の目的は、演出への過度な権力集中を分散させる、とう面もありますので、逆にプロジェクトマネージャーに権力が集中してしまっては本末転倒です。

4)理解

前項同様に大事なのが、公演参加メンバー全員の理解です。「なんであの人あんなに偉そうに仕切ってるの?」と誰か一人が思ったら、もう失敗です。

組織立ってプロジェクトを行うには、誰がどのくらい権力を持っているか、をメンバー全員がわかっていないといけません。じゃないとケンカになりますので注意しましょう。いい大人もケンカします。

権力と同時に責任が発生しますので、権力を持っている方は公演が失敗したら自分のせいだ、という覚悟を同時に持っていてください。この理解も重要です。

覚悟がないなら、権力がある仕事は引き受けるべきではありません。

4.プロジェクトマネジメントってどうすればいいの?

具体的な手法はどうすればいいでしょう? 順を追って説明します。

1)ガントチャートを使う

進行管理は何で行ってもいいのですが、僕が好きなのが「ガントチャート」を使う方法です。
ガントチャートは、横軸に日付が、縦軸にやるべきことが書いてあり、それぞれ開始日と締切日を棒グラフや矢印で表して視覚化したものです。

↓こんなやつです。

これを使うとパッと見で現状がわかるようになるのでおススメです。

日付は1ヶ月刻み、1週間刻み、1日刻みなどいろいろありますが、小劇場の場合は1週間刻みがちょうどいいと思います。小屋入り中や小屋入り前のスタジオ稽古などの毎日稽古期間は1日刻みでもいいと思います。

ガントチャートは紙で書いてもいいのですが、後々変更をたくさんすることになるので、Excelなどの表計算ソフトで作成するのが良いと思います。

2)全体計画を立てる

今現在から公演終了(あるいは精算終了)までの全体計画を立てます。
いつまでに何をしなければいけないのかをあらかじめ決めておきます。
最初から細かく作る必要はありません。
◯月△日:稽古開始
◯月■日:通し
◯月×日:小屋入り日
◯月▲日:公演日
などなど、この時点ではざっくりでいいです。細かいところは後で詰めます。

忘れてはならないのが、稽古のことだけではなくて、スタッフワークのほうもスケジュールに入れるべきということです。

学生劇団によくあるのが、役者とスタッフワークを兼ねている場合ですが、公演直前の追い込みたい時期に舞台美術を作らなければいけなかったりします。

また、通しの日には小道具や衣装が揃っていなければなりません。公演全体のことを俯瞰して計画を立てましょう。

日程の作り方は、現在から未来へ作っていくのもいいですが、僕は個人的に終わり、つまり公演終了からさかのぼって作るのが好きです。
「公演開始が何日だから、その1週間前には美術が完成していて……」
「小屋入りの1週間前には衣装つき通しをしたいから、その1週間前に粗通しをして……」
など、「これをするためにはこれが必要」という項目がわかりやすくなるからです。

といっても、これは好みなので、各自好きなスタイルで全体計画を作ってください。

3)細かい「やるべきこと(タスク)」を書き込んでいく

おおざっぱな全体計画ができあがったら、細かいタスクを書き込んでいきます。
例を挙げると、

舞台美術を作る
→美術プランを作る
 →美術を設計する
  →材料を買いに行く
   →制作する

というような感じで、細分化をしていきます。

タスクを網羅できるように、細かくリストアップしていきます。

この作業は各セクションにやらせてもいいです。
というか、すべてのセクションのことを把握している人は稀だと思うので、各セクションにやってもらったほうがいいです。

4)開始日と締切日を決める

タスクをリストアップできたら、それぞれの開始日と締切日を決めます。
これも、個人的には終わりから逆算していくとスムーズに決められると思います。
何月何日までにやらなきゃいけなくて、この作業は何日くらいかかるから……と計算しながら開始日と締切日を決めていきます。

5)開始日と締切日にあわせてグラフを作る

グラフと言っても、Excelのセルの中に■を記入していくだけです。
Excelが得意な方は数式を入力して自動化しちゃってもいいです。
僕は得意じゃないので手入力しています。
「Excel? 数式? 何を言ってるんだ?」となっている方は、僕と同様に手入力しましょう。

6)担当者を決める

これ大事です。

それぞれのタスクの担当者を決めます。責任を明確にするために名指しです。

と言っても、小劇場の場合は各セクションで複数人が作業するということは小屋入り中以外あまり無いと思うので、セクション名(「演出」、「衣装」、「制作」など)でもいいかもしれません。

7)作業量を調整する

これもとっても大事です。

ガントチャートに戻って、先ほど4)で記入した■の数を縦軸で数えます。これが作業量です。

どうですか?担当者の数に対して多すぎたりしていませんか?複数の作業が一人の担当者に集中していませんか?

もしも■の数が多すぎたり、一人に集中していたりしたら、その計画は確実に破綻します。

確実です。

人間の能力が作業量に追いつけなくなって、スケジュールが遅れることが確定します。

その遅れを取り戻そうと無理な徹夜をしたりして、クオリティが下がって……と、誰も幸せにならない未来がやってきてしまいます。

でも大丈夫。まだ間に合います。

今のうちに「破綻しない計画」に練り直しましょう。

破綻しないようにするには、

a)一人の担当者に集中している場合は、他の人に作業を振り分ける
b)全体で作業量が多すぎる場合は、前倒しできる作業を、作業量が少ない時期に前倒しする
c)締切を後ろに延期する
d)その作業をやめる(通しを1回少なくする、等)

といった方法があります。
aまたはbが理想的です。
cはちょっと不安になりますが、余裕があるならすべきです。
dは最終手段です。

こうやって、前もって実現可能な計画を立てましょう。

8)みんなで共有する

大事なのが、公演参加メンバーみんなで計画を共有することです。

今どの時期で、どれくらい作業を終えていなければいけないのか、みんなが理解していることが重要です。
最近はGoogle Driveなどでファイル共有がしやすくなっていますし、LINEでもグループLINEにファイルを投稿したりできます。

だいたいの人がスマートフォンを持っていると思いますので、共有はしやすいと思います。スマートフォンを持っていない方はPCで見るか、PCも持っていない方は、紙を印刷してもらって追いかけてください。

9)計画の見直しをする

一度決めた計画は、別に絶対というわけではありません。

変更したってかまわない(というか変更が必ず生じる)ものですので、ガンガン変更していきまししょう。

見直しはいつ行ってもいいですが、「さすがにここまでにこれできてないとヤバいよね」という時期を決めておきます。マイルストーン(標石)と言ったりします。

たとえば、脚本の完成日だったり、通しに合わせて小道具、衣装を用意する日だったり。それができてないと本格的にマズいので本気で焦り始めてください。

10)現場に顔を出す

情報だけがあればプロジェクトマネジメントはできなくはないですが、やっぱり現場で得るものと、伝聞で得るものでは前者のほうが圧倒的に情報量が多いです。

なのでプロジェクトマネージャーといえど、現場に顔を出したほうがいいです。特にシーン毎の稽古の回数は、後で演出に回数を指摘する際に必要ですので、カウントしておくべきです。

なんとなくこのシーンやってる回数が多いから、というのでは誰も納得しません。客観的な数字が必要です。

カウント自体は他の人にやってもらってもかまわないので、毎回稽古に最初から最後まで居る必要はありません。なんなら、演出本人にカウントさせるのもいいです。

また、間違ってはいけないのが、すべてのシーンを均等に稽古しなければいけない、というわけではないということです。

役者の上手い下手もあります。なので、1回しかやってない等、さすがに目に余るときに、稽古すべきシーンの指定をしてください。

5.まとめ

いかがだったでしょうか。
プロジェクトマネジメントはすごく奥が深い世界で、なかなかうまくできないものだと思います。僕もここまで偉そうに語っておきながら、まだまだです。

しかし、小劇場にプロジェクトマネジメントを導入することで、あの本番前にバタバタする不幸な現象が少しでも減らせると思います。

世の中にはプロジェクトマネジメントに関する本やウェブサイトがたくさんありますので、興味を持った方は勉強してみてください。

僕と同じように社会人の方は、普段の仕事にも応用できると思うのでおススメです。

ガントチャートを配布します

最後に、僕が自分で作ったガントチャート(Excelファイル)をここで公開します。僕自身の公演用に作ったものです。

脚本はすでにできあがっているので前半は余裕がありますが、それでも後半はやっぱりキツめです。最後まで読んでくださったみなさんの助けになれば幸いです。

この記事が、ひとつでも多くの不幸な未来を救うことを願っています。

日向修二(ひむかい・しゅうじ)

役者・脚本家・演出家。2016年1月に、就職してから初めて長編の公演を行い、就職していても演劇ができることにやっと気づく。2017年も活動予定。
Twitter→ @shuji_himukai https://twitter.com/shuji_himukai
Blog→ 日向修二製作所 http://ameblo.jp/shujihimukai/
Podcast→ 日向修二放送局 https://itunes.apple.com/jp/podcast/ri-xiang-xiu-er-fang-song/id1123332026?mt=2

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