こんにちは。
宮城県で社会人劇団“Team HacCLose”の主宰をしている武田と申します。
新生活の季節ですね。このタイミングで、皆様の劇団にも、新しい風「新入団員」を入れてみませんか。
本日は、私なりに考える団員を増やすメリットをご提案したいと思います。
Team HacCLoseは、地方の社会人劇団としては比較的劇団員の多い団体です。
現在社会人16名、学生6名の計22名が正規団員として活動しております。昨年8月に旗揚げ公演をしたばかりですが、その後ひと月に平均3名弱ずつ団員が増加している状況です。
詳しくは、前回の記事をご覧ください。
→奥の細道 宮城より 社会人劇団はじめませんか
地方のアマチュア劇団を見てみると、団員数は5~15名くらいが相場のようです。もちろん、必ずしも団員が多ければ良い劇団という訳ではないと思いますが、団員が増えればどんなことが起こるのかを実体験をもとに紹介したいと思います。
地方の社会人劇団が抱える6つの課題
宮城にも複数ある社会人劇団、普段は正社員として働きながら趣味として演劇をされている団体の課題は、大きく6点であると思います。
- お金
- 時間
- ストレス
- 熱量
- 作品の質
- 劇団の老化
社会人となり、仕事の傍らで演劇を続ける上で、学生劇団やプロを目指すアマチュア劇団より、犠牲にできるものが少ないという状況があります。
週に5~6日フルタイムで仕事をして疲れて家に帰ってくる。休みの日は溜まった掃除や洗濯、買い物や美容院。どう考えても、学生時代と同様に演劇に時間と熱量を割くことができません。
また、趣味として大切な休日を削っているのですから、ストレスが大きい活動になってしまっては元も子もありません。
社会人劇団なりの運営方針を持つ
数多くの課題を抱える社会人劇団の運営ですが、これまでの演劇創作の既定路線に乗っ取っても無理が生じそうな気がしてきます。私は社会人劇団の演劇活動において、「趣味でやっている」という認識が薄いのではないかと日ごろから感じています。
例えば、社会人のフットサルチームがあるとします。そのチームで、Jリーグ選手と同じトレーニングをメンバーに課したら何が起こるでしょうか。
演劇は、プロとアマの差が非常に曖昧であると思います。アマだったらこういうやり方でやっていこうよ、というのが確立されていません。それ故に、プロのやり方を趣味で演劇をやりたい人に適用して、そこに無理が生じます。
私の劇団で、社会人劇団として上記の課題をクリアするべく立てた運営方針は、数は力なり。人材とは人財なりというものです。
団員を増やすことで課題をクリアする
上記で挙げた、6つの課題に対して私達が行っている解決への取り組みを以下に紹介していきます。
お金
学生劇団やプロを目指しアルバイトをしながら演劇に取り組んでいる方に、「社会人劇団はお金をかけられるから良いよな」と誤解されるのですが、決してそんなことはありません。
会社員として働いていると、家庭や職場の付き合いなど演劇のために犠牲にできないものが本当に多くあり、一人で演劇に打ち込めていた頃の方が圧倒的に自由になるお金が多かったことに気づきます。
作品の質は、時間・お金・熱量に比例しますので、必然的に同じやり方を続けていれば、学生劇団やプロを目指す劇団より公演のクオリティは下がってしまいます。
多くの劇団で、チケットノルマや月々の団費という形で運営費を徴収していると思います。
当たり前の話ですが、人数が多ければ、一人あたりの負担は少なくなります。
団員5名・団費5000円×6ヶ月のシミュレーション
5名 × 5000円 × 6ヶ月 = 15万円
団員20名・団費2500円×6ヶ月のシミュレーション
20名 × 2500円 × 6ヶ月 = 30万円
団員を増やすことはメリットであるという認識を、できれば団員全員で共有できた方が、入団希望者への対応が手厚くなり、入団率があがります。
ここは、「団員が何人になったら月々の負担が半分になるよ」と明言しておくのも一つの手かもしれません。
時間
私の劇団で第1回公演を終えたとき、「もっと稽古日を増やせばさらに良くなったのでは」という提案がありましたが、私はその意見を棄却し、逆に稽古日を減らしました。Team HacCLoseの稽古は月に3~4日しかありません。
これは前述の、学生劇団やプロを目指す劇団と別路線で勝負しなければならないというところに通ずるのですが、睡眠時間やプライベートを削っても「かけられる時間」では他の劇団に勝てないという確信があったからです。
時間がかけられないから公演の質を諦めるということではありません。時間と言うハードルを極限まで下げることで、参加可能な人、団員を増やすことが目的でした。
他の劇団が5時間でする作業を、1時間で実施する為にはどうすれば良いか。他の劇団よりも5倍の人員がいれば可能なのではないかと考えました。
自分一人が睡眠をとらず丸一日頑張っても、24時間しか作業できません。団員が25人いれば一人1時間作業するだけで、1時間多く仕事ができます。
例えば、私の劇団では、役者10名程度のシーンを作っている最中に、残りの10名前後はスタッフの話し合いや小道具や舞台装置の製作をしていることがあります。
稽古時間 × 人数が公演に費やした時間です
ストレス
劇団員が多いと、団長にとっても団員それぞれにとっても、なんとなく大変そうに感じるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
正直なところ、旗揚げ公演前の6名でやっていた頃の方が、仕事を引き受ける・振る・任せるストレスは大きかったように感じます。
人数が少ないと、本来本職でないスタッフや作業を自分が引き受けたり、誰かにお願いしなければならなくなりますが、人数がある一定を越えると、本当に自分のやりたいことだけをやっていれば、あとはそれぞれ担当がやってくれるという環境が出来上がります。
また性格的に合う合わないというのも組織のストレスになりますが、これも人数が増えると皆おのずと、「全員と仲良くなるのは無理」というふわっとした状態になります。
修学旅行で学年に嫌いな人がいても楽しめるけど、同室に嫌いな人がいたら楽しめないのと同じです。グループが少人数であればあるほど、人の欠点が気になります。
人が増えると、自分の好きなことを、自分の気の合う人とやっていれば成立する組織になります。
熱量
熱量とは、気合とかやる気とか思い入れとか、測るのが難しい課題ですが、先に述べた時間とストレスに対する課題解決で答えが出ています。
苦手だったり嫌いな仕事には熱量は加わらず、好きなことでも長時間続ければ熱は冷めてしまいます。
短い時間に集中してやりたいことだけを出来る環境があれば、そこに熱は生まれます
作品の質
前述の様に、お金・時間・ストレス・熱量の課題をクリアにできました。
どこよりもお金をかけ、時間をかけ、ストレスなく、熱の籠った創作活動ができています。
この作品の質が低い訳がありません。
劇団の老化
人間も組織も生まれた時から老化は始まっています。
大衆に認められる形の老化を成熟と言い、大衆に見向きもされない老化を衰退と呼ぶのだと、私は考えます。
一般的な劇団のメインの顧客層は10~30代のアクティブかつ比較的時間の作りやすい人達だと考えていますので、作品は常にその客層に受け入れられたいと思って創作していますが、その為には常に若い子の感覚を取り入れなければなりません。
これを10年後も20年後も続けていかなければ、いずれ劇団も作品も老化します。老化しきった劇団は新たなものを取り入れることを知らず知らずに拒絶し、気が付けば非常に閉ざされたコミュニティになってしまいます。
恋愛を辞めた時、人が老け込むのと同様に、新規の集客や入団希望者に対して積極的でなくなったとき、劇団は老化します。
常に、劇団としても作品としてもこれまで取り込めなかった層を貪欲に獲得しようという思いが、劇団を若返らせます。熟女が恋をしたら綺麗になる的なあれです。
満足せず新入団員求め続け、新たな風を劇団内に取り入れることが大切です。
まとめ
団員が増えれば良いことばかり、というような内容でしたが、事実、私は団員が増えたことによるデメリットを感じていません。
スケジュール調整や、連絡が、以前より少し多くなったくらいでしょうか。そんなことは些末に感じる程、人数が増えるメリットは大きいと感じます。
団員を増やすメリットについて書かせて頂きましたが、その裏には劇団員一人一人が時間・お金・熱・その他諸々、多大に劇団に還元してくれているということがあります。
主宰者に限らず団員一人一人が、今一度、他の団員に感謝しましょう。
Team HacCLose は、楽しいことは22倍、辛いことは1/22で、今日も元気に活動しています。
団員を増やす準備はできましたか。
次回はどうやって増やすか編を、お送りしたいので、皆様の応援で、続きを書かせてください。
武田らこ TAKEDA Rhaco
演劇活動4年のブランクを経て、2015年に宮城の社会人劇団“Team HacCLose(チームハックローズ)”を旗揚げ。舞台に立ちたくて立ち上げたのに、現在は脚本・演出を担当。

Team HacCLose
閉鎖的(Close)な環境を打開(Hack)したいという思いから命名。
観る人も演る人も、気軽に楽しめることをポリシーとしている。
2017年8月の第2回公演に向けて活動中。

公式サイト→http://hacclose.main.jp/
Twitter→@hacclose