はじめまして。高校生劇団「冗談だからね。」主宰の安保泰我です。
「冗談だからね。」は都内で活動する、平均年齢19歳の高校生劇団です。僕自身は18歳の高校3年生です。
劇団名とか、平均年齢のあたりとか、全体的にキナ臭さ全開ですが、冗談じゃないです、基本的に本当です。
この度、2017年3月22日(水)-3月26日(日) に、花まる学習会 王子小劇場にて公演をさせて頂く事になりました。同劇場史上、最年少での進出らしいです。
本企画は現在、小劇場界の最前線でご活躍されている諸先輩方から、公演を成功させるためのアドバイスを頂戴し、次回公演、確実に勝ちに行こうという企画です。
あ、ちなみに次回公演のタイトルは『青春の延長戦』って言います。
第一弾は、ロロ 三浦直之さんと「王子小劇場での旗揚げ」や「青春の描き方」についてお話しました!
三浦直之
1987年生まれ、宮城県出身。2009年、『家族のこと、その他たくさんのこと』で王子小劇場「筆に覚えあり」に史上初入選。同年、主宰としてロロを立ち上げ、以降全作品の脚本・演出を担当。
ロロ
2009年より東京を拠点に活動中。
漫画・アニメ・小説・音楽・映画などジャンルを越えたカルチャーをパッチワークのように紡ぎ合わせ、様々な「出会い」の瞬間を物語化する。
小説のリーディングや音楽ライブと融合した短編演劇、映画製作など、ジャンル横断で演劇の枠を拡張しながら活動を行い、2013年 三浦直之・初監督作品 映画『ダンスナンバー 時をかける少女』(製作:ロロ)はMOOSIC LAB 2013 準グランプリ他3冠を受賞。2015年にはロロvol.11『ハンサムな大悟』が第60回岸田國士戯曲賞最終候補作にノミネート。
2015年より、高校生に捧げる「いつ高シリーズ」を始動。高校演劇のルールにのっとった60分の連作群像劇を上演し、戯曲の無料公開、高校生以下観劇・戯曲使用無料など、高校演劇の活性化を目指している。
公式サイト=http://lolowebsite.sub.jp
Twitter:@llo88oll
Facebook:llo88oll
Instagram:llo88oll
ロロの旗揚げは王子小劇場


その頃、大学の仲間で演劇やってても観に来るのは友達ばっかりで内輪っぽい空気になっちゃうのが好きじゃなかったから、そうじゃない可能性が作れる様になったら良いなって思って、何かしら箔がつけば外の人も観に来てくれるだろうって考えて王子小劇場に企画を持って行ったら、劇場スタッフの方が「やろう!」と言って下さって、そこから「ロロ」が始まったっていう感じだね。




王子で公演した作品は「雨男」っていう役があって、その役の隣にジョウロを持った人がいて、ずっと男を追いかけて水をかけていくっていう作品で、そのジョウロの水が舞台上にどんどん溜まっていくっていう演出だったんだ。
けど「水を使う」っていうのがどれだけ大変で、かつどれだけお金がかかるのかとか知らなかった。何もわからない状態でやってたね。


単純に技術力が足りない。どうやってシークエンスを繋げるかとかどういう風にテンポを整理していくかとか、基礎的な技術が足りていないってことを感じて、それってある程度場数というか経験値の部分があるなって思って。
そこから、とりあえずとにかく一杯演出する機会を自分で作らなきゃダメだって思って、旗揚げした年の1年間は短編を含めて毎月絶対公演をやっていたね。


でも、今はもう毎月公演をやるのは無理だなって思うね。(笑)
作品の作り方について


最近のロロの本公演に関しては、プロット的なものはある程度用意してあるんだけど、空間を作るっていうことをしていて。
例えば、この前の公演(「あなたがいなかった頃の物語と、いなくなってからの物語」)は俳優が台詞を言いながらテーブルを動かす、テーブルが動いたことによって俳優はこんな景色が見える、で、こう見えるからこう言うだろうって台詞を言ってもらうと、じゃあ次テーブルはこういう風に動かすだろう、で、またテーブルが動いて景色が変わるから新しい台詞が生まれるっていう作り方をしたんだけど、そういうクリエーションをしていきたいなって今は思っていて。
そういう作り方をしていると、最初に全部台本をあげるのは難しくて、だからある程度皆に「今はこういう作り方がしたいんだ」ってことを説明している。
そうすると俳優さんに負担は増えるから、どういう風に俳優さんのストレスを減らしていこうっていう…ストレスというか俳優さんは、台本が遅れれば遅れるほど演技に関して考える時間が減るわけじゃん。そこに対してはどうしていけばいいかというのはずっと考えてる。


よく色んなところで言ってるんだけど、僕が演劇始めて感動したのは舞台上になんにもないところで、例えば脚立がぽんって置いてあって、それを「山だ。」って言えばそこに山の景色が出来上がるっていうその見立ての力で、そういうものを駆使して作品を作っていきたいなっていうのがあるね。

毎回見るたびに違う役をやっているなって、もちろん違う役なんですけどやっぱり劇団でやってるとこの人はこういう役だよねっていうのが出来てきちゃうものだと思うんですよ。
でもロロはそれがないなぁってずっと思っていて。俳優に対してというよりも周りに対してだからかって納得しました。
フィクションとしての青春を書きたい

ライトブルー
冗談だからね。予告編


そもそもこの公演(「飛ばない教室 または、わたしのいないその場所」)の作演の前川麻子さんとは前川さんが高校演劇に関するツイートで炎上したときに、自分たちがそれに乗っかるかたちで宣伝をしたっていうきっかけで知り合いまして。その時のツイートを参考にしました。




三浦さんの作品に落とし込んだときの青春とか高校生だったりに対するイメージを聞かせていただけたらなと。

そうだねー。自分が書いてる高校生っていうのがリアルな高校生っていう認識ではないんだよね。
自分が小説とか映画とかで好きだった青春の物語もフィクションとしての青春だったり、フィクションとしての高校生だったりっていう部分があったから、自分がフィクションとしての青春を書きたいなって思ってる。
僕が高校生だったときに影響を受けたものって今でもすごく印象に残っていて、だから今の高校生にとってそうなる作品が作れたら幸せだなって思ってるんだけど、僕ももうおじさんだし。
「おじさんが好きな高校生」を今の高校生たちに見せるみたいな形にはしたくないなって。

いつ高シリーズをはじめたキッカケ


その時に高校演劇には色々な制約があることも知って、じゃあ同じ土俵に上がったときに同じように面白い作品が作れるのかっていうのがまず「いつ高シリーズ」を始めたそもそものきっかけだね。
あとは、全部の高校がそうっていう訳じゃないんだけど、高校演劇の台本でよくあるパターンだなって思ったのが、最初ね、こういうものがやりたいです!ってオリジナリティあるなってところから始まってワクワクするんだけど、途中で主人公がある葛藤を抱えてそれを乗り越える。っていうパターンのお話が傾向として多いなって感じて。
葛藤を抱えさせるって物語を転がす上で有効なことだけど、そうじゃない60分の使いかたもあるんだよ。っていうことを提示できるといいなって思って。だからいつ高シリーズで描く青春はなるだけキャラクターに葛藤を抱えさせない。
葛藤っていうのが無くても演劇は作れるという選択肢があるんだって思ってくれる高校生が1人でも増えてくれれば良いって思ってやっているかな。







多分なんですけど地区大会って割とどこも勝負をかけにきているというか、ここで1年が決まってしまう最初の最後のチャンスだったりして絶対勝ちたいって思ってる高校がどこにでもあったりして。自分の代では1回も都大会にはいけなかったんですけど、自分もそうだったんですよ。
これなら勝てるなっていう傾向と対策を練って挑んでいて、そうなってくるといつ高は穏便というか、勝負に勝ちにいくという戯曲ではないんじゃないかなって思ったんですよ。
すごく高校生への提案としては素晴らしい作品だと思うんですけど、上演にはあまり向かないかもなって思いました。
これは僕のすごく勝手な話なんですけどむしろ30分くらいのほうが高校生には喜ばれるんじゃないかって。地区大会では難しいと思うんですよね。いつ高の面白さがわかるのってちょっと高度というか……。
いじめとか戦争とか、言ってしまえば分かり易い問題点がある台本がある一方でいつ高シリーズはなにも起きないじゃないですか。
もちろんそのなにも起きないのがいいんですけど、そうなるとやっぱり地区大会の台本の候補としては弱いのかなって思いました。
だから上演を目指すのであれば地区の発表会向けに30分程度のほうがいいんじゃないかなって、すごく勝手なんですけど、思いましたね。
自分で書くきっかけにしてほしい

今後のいつ高シリーズで思ってることがあって。それは、自分の戯曲を使ってもらえるのはもちろん嬉しいんだけど高校生は自分で書くのが一番だってこと。
自分で書ける子はいつ高シリーズなんて全然やらなくていいと思ってるのね。
でもそういう選択肢がない高校もあるじゃん。そういう高校生たちにネットでみつけたヤバイやつはやめて欲しいなって。それをやるくらいなら…って気持ちがあって。
もう1個は書けない子たちの書くきっかけを作りたいなと思っていて、ゼロから書くのは難しいかもしれないけどその手がかりみたいなのを作ってあげたいなって。


二次創作とか、いつ高っていうフォーマットを使って高校生たちがこの世界観に新しいキャラクターを加えたり今いるキャラクターを使ったりしながら短くてもいいから自分で書いてみるっていうことをして欲しくて。
今年の夏からそういうワークショップをやろうとしてるんだけど。


1998年、2008年、2018年


そしたら5年生になったときにトロンボーンの経験者が自分だけになってパートリーダーを任されて、吹けないのに。だからヤベーなって焦って。(笑) めちゃめちゃ練習しまくってたかな。その時の責任感とかまとめるみたいな意識は今でも役に立ってると思うな。






でも演劇って嬉しいことなんだけど来年の公演が決まっちゃってることもあるんだよね。
んー、個人的な話としては、今までで「ハンサムな大悟」って作品と「あなたがいなかった頃の物語と、いなくなってからの物語」って作品を作っていて、それはある人の長い人生を描くってことをやってみようと思って始めてるのね。
「ハンサムな大悟」は一人の人生を描いていて「あなたが〜」では世代を通した物語を描いていて。
それをやろうと思ったきっかけは、長いスパンの時間を描きたいなって気持ちが大きくなってきていて、でもいきなり大きなものを描くのは難しいからちょっとずつそのを規模を増やしていこうって思っている三部作としての一区切りを2018年で作りたいね。
まとめ
ごめんなさい、本当ならもっと三浦さんにインタビューするつもりだったんですが、後半は楽しくなって僕がいっぱい喋ってしまいました…。
いつ高シリーズに対する僕の失礼な注文にも耳を傾けてくださる三浦さんの人柄が作品にも俳優さんに対する姿勢にもよくあらわれているなぁとお話しながら思いました。遅筆はほんとに良くないって肝に銘じて執筆がんばります。
本当はもっとたくさん劇団のこと高校生のことだったりを話したのですが、都合上割愛。
載せられず残念。喋りすぎちった。
安保泰我
冗談だからね。主宰。1998年生まれ。18歳の高校3年生。高校2年生のときに、冗談だからね。を旗揚げ。肩身狭いから、あんまり打ち上げ行きたくない。
冗談だからね。
顧問から上演許可をもらえなかったら腹いせに、結成。
大人にならざるを得ない現代に生きる、大人にも子どもにもなれない人々の、生活とこれからを。意地悪な冗談と、それに似た本当で、単なる嘘とか、出来れば言いたくない本音とか、も交えつつ。実感の伴った手触りを以って、描く。いろんなひとを敵に回しつつ、徐々に面白がってくれる人も増やしつつ。演劇と演劇ごっこの狭間、超最前線で戦っている超若手劇団。
公演情報
冗談だからね。③
花まる学習会 王子小劇場 最年少進出公演
『青春の延長戦』
作・演出:安保泰我
会場:花まる学習会 王子小劇場
期間:2017年3月22日(水)〜3月26 日(日)
詳細:http://rpgjoudan.wixsite.com/jyoudan-dakarane/blank-4