就職しても演劇を続けるという選択肢もアリなんじゃない?

はじめまして。

日向修二(ひむかいしゅうじ)と申します。

関西のとあるメーカーでしがないサラリーマンをやるかたわら、年1回くらいの頻度で演劇活動をしています。

今日は、小劇場界で陥りがちな

  • 「就職せずにバイトをしながら演劇を続ける」
  • 「就職して演劇をやめる」

という二者択一に、

  • 「就職しても演劇を続ける」

という選択肢を入れてもいいんじゃないか、ということを、僕の実体験をもとにお話ししようと思います。よろしくお願いします。

目次

  1. 就職する前
  2. 就職してから
  3. 1本公演をやってみた
  4. 就職しても演劇ができると言い切る4つの理由
  5. 気をつけるべき7つのこと
  6. まとめ

1.就職する前

まずはじめに、就職する前、学生だったときのことです。僕は大学に入ってから演劇を始めました。

小学生から高校生までずっと野球をやっていたのですが、大学に入ったら別のことをやろう、と思い、演劇サークルに入り、演劇を始めました。

大学在学中に学内、学外の公演にいろいろ出ました。けっこう充実した学生演劇ライフだったと思います。無事に就活も終わり、卒業する段になって、「あぁ、卒業したらもう演劇ともお別れだなぁ。ありがとう演劇、君との思い出は忘れないよ。これからは観る専門になるね。」と思ったものでした。

このときは本当に、もう二度と演劇をやらないんだろうな、と思っていました。僕の中で、「就職するか」「演劇を続けるか」という二択だったのです。

2.就職してから

会社員として働き始めてから気づいたことがありました。それは、意外と時間があるな、ということです。毎日会社勤めをするものの、僕の会社は土日休みだったので、毎週まとまった時間がありました。

また、メーカーによくあることですが、ゴールデンウィークやお盆などの大型連休は工場を止めてしまうので長期連休が年にいくつかありました。

そのため、趣味に割ける時間が思っていたよりもありました。実際に僕は、毎週末お芝居を観に行ったり、バイクに乗り始めたり、スノボを始めたりしました。僕が学生の時に漠然と思っていた、

  • 「社会人になったら忙しくて遊ぶ暇がない」
  • 「海外旅行に行けるのは学生のうちだけ」

なんていうのは、僕の勝手な思い込みで、まやかしだったということがわかりました。(さすがに1ヶ月丸々バックパッカーをする、なんていうのは難しいですが……)

また、お金もいっぱいありました。学生の頃にアルバイトで稼いでいたのとは比べ物にならないくらいのお給料がもらえました。

僕はお金があるだけ使ってしまうタイプなので、北海道旅行に行ったり、韓国旅行に行ったり、車を買ったりしていました。また、大学の先輩や友人の結婚式があるときなどは、よく東京に帰っていました。2次会の余興をやったこともありました。

そして有休も取れました。僕は勝手に、「有休なんて都市伝説なんだろう? 毎年一応付与されるけど1日も使えずに消えていく……」と思っていましたが、入社1年目から年間付与される22日のうちの半分以上は使えました。

職場が「有休をちゃんと使いましょう」という風土でした。これは職場によるので運の要素が強いですが、さすがに年間1, 2日程度であれば有休も使えると思います。

「あれ、社会人って、意外と時間もお金も捻出できるな」

ということに気づきました。それでも、関西という土地でツテも無いので、やっぱり演劇は観る専門でした。

3.1本公演をやってみた

そんなとき、大学の先輩が声をかけてくれました。

「今度サークルのOB・OGで、東京で公演やろうと思うんだけど、出ない?」

関西に住んでる僕に東京での公演のお誘いをかけるなんて、先輩は何を考えてるんだろうと思いましたが、僕は即「やります」と返事をしていました。僕もなかなか何を考えてるのかわからないやつです。

実際何も考えていませんでした。ただお芝居をやりたい、とずっと思っていたのが実現するのが嬉しかったです。また、前述の通り、時間もお金もなんとかなるっしょ、と思っていました。

僕が稽古に参加したのは、月に1回くらいの頻度でした。週末2日間稽古して、また次回~という感じでした。他の参加者のみなさんは基本的に東京にいらっしゃったので、僕がいないときに他のひとたちのパートの稽古をしていました。

また、平日夜に稽古をしていることもありました。劇場入り(小屋入り)の直前には役者みんなで「合宿」をしたりしました。さすがに夜通し稽古とかはできませんでしたが、長く時間が取れたのでかなり効果的だったと思います。

小屋入りは、1.5日有休を取って行きました。

  • 金曜:午後半休→移動、夜から劇場へ
  • 土曜:一日劇場で場当たり&ゲネ
  • 日曜:本番
  • 月・祝:本番&片付け(バラシ)&打ち上げ
  • 火曜:有休、関西に帰る

というスケジュールでした。公演は成功といっていいものだったと思います。

以上が僕の実体験です。「なんだ、就職しても演劇ってできるじゃん」と実感しました。

4.就職しても演劇ができると言い切る4つの理由

1)意外と時間はある

就職したら時間がなくなる、なんていうのはまやかしです。ちゃんと時間が作れます。今働いていて、「そんなことない! 毎日忙しくて時間なんかない!」という人は、全然休日が無いのでしょうか。

だとしたら、その仕事は辞めたほうがいいです。世の中、もっとゆとりのある仕事はいくらでもあります。まだ就職していない学生のみなさんは、時間がとれそうな企業を選んで就職活動をするのもひとつの手です。

2)お金もある

自分の生活圏内で公演をするならあまり問題にならないでしょうが、僕のように全然違う場所で公演をしようと思うと、交通費がかさみます。

僕は基本的に新幹線で往復をしていました。正直お金はかかりましたが、でも生活できなくなるほどではありませんでした。意外とお金はありました。

3)稽古はなんとかなる

僕の場合、遠方にいたので稽古日数があまりとれませんでしたが、事前にセリフを入れておいて集中して稽古すればなんとかなります。

4)小屋入りもなんとかなる

僕は役者オンリーだったのでやることは少なめでしたが、連休と有休を駆使すれば小屋入りもなんとかなります。

なので、就職したって、十分演劇はできます。妨げているのは本人の思い込みだけです。

5.気をつけるべき7つのこと

と言っても、やっぱり学生のときのようになんでも自由にはいきません。限られた時間を有効活用するためには、気をつけるべきことがあります。

1)十分な長さの準備期間を取ること

僕は学生のときに「12ヶ月連続公演」とかいう、正気の沙汰とは思えない企画に参加したことがあります。僕はひと月だけの参加でしたが、主宰の方は毎月やっているわけで、前月からの実質的な稽古期間が20日くらいしかありませんでした。

さすがに20日間で、会社勤めをしながらお芝居を作るのは無理です。

もしかしたらレッドブルとかリポビタンDとかを使いまくればできるのかもしれませんが、どう考えてもクオリティが下がります。やめましょう。

僕が就職してからやった公演は、稽古開始~本番がだいたい2.5ヶ月でした。多く見積もって、3ヶ月くらい(12週間)あれば大丈夫じゃないでしょうか。

2)脚本がちゃんとできあがっていること

いくら準備期間を長くとっても、脚本が無いと致命的になります。

小劇場界ってなぜか脚本ができあがるのが遅いイメージがありますが、害悪しかないので正されるべきです。稽古初日よりも早い段階で初稿が出来上がっているのが理想です。

  • 「いやいや、役者に合わせてアテガキしたい」

→役者が決まった時点で書き上げてください

  • 「稽古をやりながら創作したい」

→稽古をやりながら変更してもいいのでとりあえず1回書き上げてください

  • 「途中で変更するのは二度手間になって時間の無駄になる」

→脚本ができあがるのを待ってる役者の時間が無駄になるのでとりあえず1回書き上げてください

せめて8割方書きあがっているべきです。ラストシーンで悩んでるとかはまだ許容範囲です。僕がやった公演は、脚本の方が8割方脚本を書き上げていて、大方のシーンは稽古できたのでそこまで致命的にはなりませんでした。

しかし、あとからできた部分の稽古時間が限定されてしまったのは紛れも無い事実です。脚本家の方は極力早く書いてください。あなたのせいで公演のクオリティが下がります。

3)セリフを早く入れること

役者は、セリフを1日でも早く入れましょう。セリフを入れてからが劇作の本番です。稽古をやりながらなんとなくセリフを入れる、なんていう悠長な時間はありません。

脚本をもらったら即入れるべきです。早くセリフを入れないと、あなたのせいで公演のクオリティが下がります。といいつつ、僕も「稽古をやりながらなんとなくセリフを入れる」スタイルだったので、自戒も込めて。

4)3連休を狙うこと

これはカレンダー通りの休みが取れる仕事をしている人向けですが、公演日は3連休を狙いましょう。有休申請の後ろめたさと負担が軽減されますし、3連休のうち、1日目を公演日からはずすこともできます。

「3連休のうちの1日を興行からはずすなんてとんでもない!」という気持ちもわからないではないですが、余裕が無いなら、ここは割り切ったほうがいいです。もちろん、参加者のみなさんがみんなお休みを取れる環境であれば、別に3連休じゃなくてもいいと思います。

5)土日休みじゃないメンバーがいる場合のこと

飲食店や小売、サービス業関係の方は、土日休みじゃないことが多いです。そういう方は、正直稽古も本番も厳しいものがあると思います。

実際、僕がやった公演でも土日休みではないメンバーがいて、稽古時間があまり取れていませんでした。関西にいた僕よりも時間が取れていなかったのではないかと思うほどです。そういう方がいる場合は、平日夜に稽古をしましょう。

また、シフト制の場合は稽古期間中・小屋入り期間中はなるべく休みを他のメンバーに合わせられないか、調整しましょう。特に本番は、有休も駆使しないと時間が取れないと思うので、職場であらかじめ根回しをしておきましょう。

6)「副業規定」の確認をすること

会社勤めをしながら演劇をする場合、勤めている会社の「副業規定」を確認しておきましょう。

小劇場界では、基本的にチケットを販売して作品を上演していると思います。たまーに無料公演もありますが、数は本当に少ないです。

チケットを販売している場合、これが「副業」とみなされる場合があります。っていうか副業です。赤字だからとか関係ないです。

副業規定の有る無しはそれぞれの会社でまちまちでしょう。副業OKのところは堂々としていればかまいません。副業が禁止されていても暗黙の了解でできる職場もあれば、そうでない職場もあるでしょう。

副業できなさそうな雰囲気の場合は、職場に隠し通すことを考えたほうがいいです。芸名を使うのもひとつの手です(僕も芸名です)。

7)これから就活をする学生の方へ~演劇を続けやすい仕事を選ぶこと~

僕は就活をするときに、「演劇は大学を卒業したら辞める」つもりで就活をしていたので、「演劇を続けやすい仕事」を探したりはしませんでした。

しかし、やっぱり演劇をやりに戻ってきてしまったので、ある程度条件を絞って仕事を探したほうがいいかもしれません。「土日休み」は結構大事なファクターです(土日休みじゃなくてもやろうと思えば可能ですが……)。

僕の友人(女性)で、演劇を続けることを見越して一般職に就いた人がいました。彼女も今も演劇を続けているようです。

と言っても、何も考えずに就活していた僕が、役者をできたので、どうとでもなるような気がします。必須ではないです。それよりも、面白そうな仕事をするほうがきっと大事です。

就活ブログではないのでこのへんで……笑

6.まとめ

いかがだったでしょうか?

正直、僕がこんな記事を書く前から、仕事と育児を両立しながら役者をやっている人や、会社勤めをしながら自分の会社もやりながらラッパーをやって役者もやっている人もいるので、「就職しても演劇を続ける」っていうのは当たり前の価値観かもしれません。

でも、「就職しても演劇やってます!」っていう発信はあんまり目にしないな、と思ったので今回記事にしてみました。

よく考えたら、僕の大学の先輩だったり同期だったり後輩だったり、他にもお知り合いになった人で「就職しても演劇を続けている」人はうじゃうじゃいるので、そういう人たちで集まって「あるあるネタ」で盛り上がったりできたら楽しそうです。

(職場に有休申請するのにドキドキする、とか、次の日仕事だから打ち上げが正直ツラい、とか)

就職でムリして演劇を辞めたり、逆に演劇の為に就職を諦めている人の、もうひとつの選択肢になれれば嬉しいです。

日向修二(ひむかい・しゅうじ)

役者・脚本家・演出家。2016年1月に、就職してから初めて長編の公演を行い、就職していても演劇ができることにやっと気づく。2017年も活動予定。
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