小劇場の制作、ここおかしくない!?制作が抱える問題たちを今語ろう〜本当に大変な制作。それでも私が制作をやるワケ〜

みなさまごきげんよう、年末の高校の同窓会で仕事内容について質問攻めにあった藤田です。

一人だけ「有川浩の『シアター!』みたいな感じだよね」と話をふってきた人がいたのですが、比較的メジャーな作家のテーマになっているにもかかわらずイマイチ知名度上がらない職業・舞台制作。なぜだ。

さてこれにて連載も最終回となりました。3回にわたって「仕事としてそもそも実態がかなり謎」「永遠のギャラ問題」「作品作りなのか商売なのか」と数々の問題発言をしつつも自分がなぜ制作という仕事をやっているのか、というところには触れていなかったのでそこも含めてお話しさせていただきます。

※過去の記事は下記からどうぞ
お金の問題編
チケット売るのは制作?!編
私がチケットを売るためにしていること編

結論、「演劇が好き」だから

そもそも、こんなに問題が山のようにあって、おまけに厚生労働省の分類による日本の職業一覧に載っていない仕事である演劇の制作。

それでも制作をやめない、むしろもっと続けてスキルアップしていきたいと考えている根元はやっぱり演劇が好きだからです。

私が制作を始めた理由は正直に言うと「なりゆき」です。

もともとバレエやミュージカルなどを観に行く家庭で育った私は中学生の頃にはお年玉やお小遣いを貯めて劇団四季やバレエを一人で観に行くような子供でした。

当時は「劇団四季に入社して舞台美術・衣装の仕事をしたい」と考えていたので、劇団四季の会社概要・求人情報をホームページで確認し、採用実績大学に「武蔵野美術大学」とありそこには空間演出デザイン学科という舞台美術を専門で学べる学科があると知ったのでそこに進学することに決めたのです。在学中は舞台美術専攻で制作全く関係ないやん!!!って話ですね。

教授が新国立劇場のオペラを担当されている方だったり、野田秀樹作品や三谷幸喜作品の舞台美術などを担当している先生だったので、もっぱら大きな現場には連れて行っていただけたりしていたので、完全に演劇=大劇場のイメージ。

あとバレエとかオペラとか。もう「小劇場」そのものの存在、なにそれ?でした。野田秀樹なんて、それこそ学生演劇・小劇場からの派生なのにもかかわらずだというのに!

まあ意気揚々と美大に入ったはいいが狙った就職先には就職できず、「このままではせっかく美大に入って名だたるプロに習っていたのになにをやっているんだ!!!」と焦った私は、教授がゼミで言った「たとえどんなに小さい舞台でも、そこでスタッフとしてクレジットされたらそれはプロだ」という言葉を胸に必死に動きました。

縁が繋がり仕事になっていった制作

「とにかく舞台にまつわる仕事を取らなくては」と自分が活動している場所が小劇場であるということも全く知らず、知識ゼロのところから飛び込んで、全くの初心者でもできそうだ、という仕事をひたすら受けていました。

そうしていたら徐々に「制作として入ってもらえませんか」というお声がけを頂けるようになり、今に至る、という感じです。

もう完全になりゆきならびにみなさまのご縁です。自分こそ「舞台の制作になる資格があって制作になった」人間ではないので、この誰でも何にでもなれる日本社会のシステムに助けられております。

なりゆきとはいえ、私は演劇が好きです。心の底から大好きだからこそ一切安定してない世界に飛び込んでしまいました。

あ、好きだからやってるけど「好きだからお金いらないよねorギャラ安くてもいいよね」は違いますからね!大真面目に生活かかってるんで!!!(大事なことなので最終回でも言います)

生モノであるからこその魅力

表現芸術のうち、なぜ演劇なのかと問われたら、もちろん子供の頃から一番身近にあった表現芸術であったからというのもありますが、映画やドラマなどの映像とは違った一切誤魔化しの効かない生モノであること。

舞台上の空気が客席までうねって一体化するような経験、その場にいる人間にしか味わえない感覚が好きだからです。凄い芝居を観たときの、観てしまったという感覚を超えて「凄い経験をしてしまった!」という感覚がたまらないのです。

とりあえず本番前の私からは負のオーラが出ていて、正直なところ「もうこの世の全てが滅びればいいのに!!!」ぐらいのことはしょっちゅう思ってるんですが、劇場に入って舞台が立っていく様子を見ながら、ひたすら稽古場で見ていたものがどんどんリアルになっていき、初日の幕が無事に降りたら全ての苦労は吹き飛びます。

いくら準備を重ねていても、やっぱり劇場に入ってお客様に見ていただいてなんぼ。公演として成立した瞬間はほっとするし、やっていてよかった、と思います。なぜか苦労しても、終わっちゃったらまたやりたいと思う。ある種の麻薬ですね。

役者さんの労いの言葉はとても嬉しい

あと制作やっててよかったなと思うのは役者さんから労いの言葉いただいた瞬間。

とある現場でスタッフはバラシがあったので先に役者は解散だったのですが、その夜主演の役者さんから電話がかかってきて「本当にありがとう、今役者達でいるんだけど、みんなお世話になってお礼言いたいっていうからかわるね」と役者さんからひとりずつ電話でメッセージもらったのはかなり感動しました。

スタッフと役者さんってコミュニケーションとるタイミングなかなかないけど、話しかけてもらえたら私は嬉しいです!役者に関わるなって言ってくる人もいるけど、どうでもいい話も含めて絶対にコミュニケーションは大事。

よくわからない人には仕事お互いに任せられないもの。特に制作はお金に関わるからおつきあいは風通しよくいきたいものです。

「誰でもできる」から「私だからこそできる」を目指したい

どうしても制作の仕事は事務作業が多く、誰にでもできると思われがちですし、実際のところ未経験でもある程度できる人はできます。そりゃあ、まず何より作業ですから。最近は初心者でも操作が簡単なツールもたくさんあります。

ただし制作を専業として請け負っている以上、明確に差別化ができないと意味がありません。だからこそ、制作者もクリエイターである必要があると私は考えています。

俺たちが舞台を作ってるんだから公演に関するクリエイティブ部門=主に役者、という考えで、制作がクリエイティブだと?なんて言ってくる人もいますが、これまでお話ししてきた通り、公演の「芝居」部分は役者が中心であったとしても、その「芝居」を公演に仕上げるには「芝居」と「制作」の両輪が揃ってはじめて成り立ちます。

この公演自体をどうありたいか、どう見せたいか、どう売りたいか、単純な事務作業だけでは絶対にできません。だからこそ「創造性」というものは必要です。

「今は演劇だけど、映像の仕事に行きたい」という役者さんや、映像の世界で旬が過ぎたタレントやいわゆるトラブルを起こしたタレントが禊や敗者復活戦のつもりで演劇の舞台に立っていることで、演劇がドラマ・映画に比べて一段も二段も下に見られていることは演劇に携わる人間として非常に悔しいです。

それぞれにそれぞれのいいところがあるのに、表現に「得手不得手」はあっても優劣や上下なんて存在しません。

演劇そのものの地位向上、というのも含めてもっと作り手側の人間が創造性を持って行動しないといけないのかなと考えています。

ではこの連載をわたしが尊敬するとあるベテランの俳優さんに実際お会いできたときに頂いた言葉で〆たいと思います。

「舞台を作っているうちで制作が一番クリエイティブな仕事だよ。俺は役者だからこそそう思う」

藤田侑加

兵庫県神戸市出身。大学で舞台美術を専攻後、卒業後演劇の制作として活動を開始。現在はフリーで演劇の企画・広報・制作から海外の演劇祭などにも参加している。時々グラフィックデザインも。
ツイッター:@yukarienne


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