「 アマヤドリ劇団員による地道な宣伝活動の裏側」アマヤドリ:石本政晶〜アマヤドリ15周年公演「銀髪」特別企画〜

はじめまして、こんにちは!
アマヤドリ劇団員(俳優部)で、主にウェブ周りを担当している石本政晶です。

これまでに主宰・広田淳一による連載コラムをお送りして参りましたが、ここでひとつ趣向を変えて、普段アマヤドリが行っている宣伝活動について、今日は紹介していこうと思います。

まずはじめに、アマヤドリには13名の俳優の他に、制作・演出助手・宣伝美術・衣裳・文芸助手がそれぞれ在籍しております。

座付き制作が在籍しているとはいえ、制作業務は多岐に渡るため、それを一人でこなそうなんて事は到底不可能なので、俳優部もアイデア出しから実務まで分担してこなしておるわけです。

僕は2015年5月に入団をしたのですが、それまでのアマヤドリは宣伝面に関して今と比べると少し弱かったんです。

何せアマヤドリの創作現場はいつも戦場のような場所ですから、作品を作り上げる事に心血を注いでばかりで(いや、当たり前ですが)、より多くの方に観てもらおうとか、所属している俳優をアピールしていこうとか、そういった劇団員の意識が今と比べると低かった。

僕は割とバイタリティに溢れまくっており思い立ったら即実行、さらにグラフィックデザインから動画の編集、こうやって文章を書くのもなんでもござれという感じだったので、制作ワークショップに参加してみたり、様々な制作さんやプロデューサーさんとお話をしてアイデアやノウハウを収集する機会を設けたり、他劇団の宣伝活動をリサーチしたりして、それを劇団に持ち帰ってやってみたところ、今では劇団員数名で編成された「情宣チーム」を中心に、他の劇団員からもびっくりするようなアイデアが積極的に飛び交うようになって、確実にアマヤドリ劇団員たちの宣伝に対する意識は変わっていきました。

twitterを例に上げると、毎月変動はありますし、テコ入れしたのはSNSだけではないので、純粋にこれだけが理由だとは言えませんが、プロフィールのアクセス数は最大で以前の10倍に、総インプレッション数も最高で四十万件以上に急激に伸びましたし、それに伴って、以前は出演者の手売りが6割、劇団窓口が4割だったチケット売り上げも今では劇団窓口が6割、出演者の手売りが4割と逆転し、動員数も右肩上がりで増え続けています。

前置きが長くなりましたが、ここで具体的に我々が普段行っていることをザザっとご紹介します。正直、他団体の皆様がどこまでやっているのかが分からないので、ある程度愚直に細かく書いてみます。

普段やっていること

・プレスリリースの作成

様々な有名団体のプレスリリースをあの手この手を使って手に入れて、書き方を勉強して、記事にしてもらえそうなリリースを制作と協力しながら作成。

そして、ひたすら電話でアポを取り、ご挨拶回りをしています。これで新聞や雑誌掲載が決まったり、新たな劇場さんとの繋がりが生まれたりしています。

・劇団資料の作成

プレスリリースと一緒にお渡ししている資料で、団体概要の他に近年の作品や劇団員の簡単なご紹介をしています。

・公演宣伝動画 その①


僕が意識しているポイントは「最後まで見てもらえると思って作らないこと」です。

尺は長くとも60秒以内かつパっと見かっこいいもの、動きや変化が多い構成を意識して作っています。クオリティが低いものだったら作らない方がマシです。

・公演宣伝動画 その②


ゲネプロの映像を使用した、その①よりもさらに尺の短い30秒程度のものをなるべく早いタイミングで配信しています。

・過去公演ダイジェスト動画


初めてアマヤドリを観ようとするお客様が観劇に踏み切ってくださるための材料を用意すべきだと考えて作成しました。

これも上述の公演宣伝動画と同じく、パっと見重視。90分や120分の作品を説明するような無駄に尺の長い動画を作っても誰も観ないし、そもそも説明しきれる訳もないのです。

・サブヴィジュアル


アマヤドリのフライヤーはいつも鬼才・山代政一が担当しているので、一目見て「あ、アマヤドリだ」と分かる点においては成功しているのですが、如何せん「劇団員にどんな俳優がいるのか分からない」という声をよく耳にしていたので、メインヴィジュアルをモチーフにした実写ビジュアル(通称・サブヴィジュアル)を近年は作成しています。

さらに言うと、一種類のヴィジュアルだけでは2〜3ヶ月の宣伝期間もたないので、種類を増やして鮮度を保ちたいという狙いもあります。

・メルマガ「最前線のアマヤドリ」


編集長に劇団員・小角まやを据えて、広田淳一のショートコラムや劇団員による稽古場レポート、企画記事、客演情報などを、文字だけではなく、画像もふんだんに使用したHTML形式の視覚的にも楽しいメルマガを配信しています。

全部英語ですが、「Mailchimp」というサービスを利用しています。これはメールDMにも使えるので、使い方さえ把握してしまえれば超便利。
▶︎https://mailchimp.com/ (Milchimp)
▶︎http://amayadori.co.jp/saizensen (最前線のアマヤドリ)

・郵送DM


以前はチラシとご挨拶文を封書で送っていたのですが、僕自身、封を開けずにDMの類いを捨てることが多いのと、劇団業務が増えてきたこともあって手作業で1000件以上もの封書を準備している時間がない、かつ、コストがほぼ変わらない、ということで、現在は「デラダス」という印刷・発送代行サービスを利用しています。

A4サイズのハガキにデザインして送っているので、投函された時のインパクトが強いですし、パっと見華やかだし、特別感があっていいかなと思っています。
▶︎http://www.cyber-nt.co.jp/datadas/ (デラダス)

・高校生100円でGO!


15年目を迎えるアマヤドリの客席に若い世代のお客様が今もいるのは、10代や20代の学生をターゲットにしたこうした企画を行っているからなんです。

高校演劇大会の出場校リストを元にハガキサイズの優待券を前述の「デラダス」を利用してお送りしています。投資という側面が強い企画です。

・タダ観でGO!

各ステージ枚数限定で一見さんを無料でご招待しています。気に入っていただければ次回からは有料動員になるので、新規顧客獲得のための企画ですね。

・特別なおまけ付き公演


各種割引制度は沢山ありますが、割引にはやはり限界があるので、動員を増やしたい日程を「特別なおまけ付き公演」と題して、割引の代わりに物販パンフレットのプレゼントをおこなっています。

地方公演の場合には、布教活動促進の願いを込めて過去公演DVDをプレゼントしていました。大盤振る舞いです。

・突撃!アマヤドリ

主に大学の演劇サークルを中心に、劇団員がワークショップ訪問をしたり、宣伝をさせていただいたりしています。

今回の『銀髪』ではさらに過去公演DVDもプレゼントさせていただいており、アマヤドリの布教活動にご協力いただけたらいいな、という魂胆です。しかし、最も重要なのは、「人と人とが直接顔を合わせる」という点で、これに勝る宣伝活動はないな、という印象です。

・ワークインプログレス

アマヤドリがよく行っている公開稽古です。創作過程をお客様にもご覧いただき、一種の共犯関係を築き、WIPをご覧になったお客様がSNSなどで感想をつぶやいてくださることが狙いの一つです。

作り手が「面白いですよ!」と言うよりも、第三者が「面白かったよ!」と言った方が信憑性が高い、所謂口コミ効果というやつですね。

・宣伝タイムの導入

稽古開始15分間を宣伝だけに専念出来る時間にしています。特にアマヤドリの稽古場は日を増すごとにピリピリしてきて、表稽古がなくても隙あらば裏で自主稽古になって宣伝する時間が取れなくなりがちなので、公式にこういった時間を設けました。出演者からも好評を博している企画です。

・ワークショップ「乞う!新参者」

アマヤドリは現在も出演者をワークショップオーディションから採用しています。

かくいう僕もここから劇団員になったわけですが、公演直後にWSの日程を組む事で、「一度観てから応募してみよう」という演劇人がいるので、公演動員にも大きく影響してきます。

手前味噌ですが、広田のWSではこれでもかというくらい真剣に参加者の方と関わろうとするので、参加者の評判もかなり良く、これが実はある一定の層への口コミ宣伝効果になっています。
▶︎http://amayadori.co.jp/workshop

・芸能事務所へのワークショップのご案内

上述のワークショップのご案内を芸能事務所にも行っており、大手事務所から小規模事務所まで幅広くご参加いただいております。

やはりここでも「こんなにちゃんと芝居をみてもらったのは初めてでした」というご好評をいただいたり、逆に「広田さんに言われたことは一生忘れません」という恨みを買ったり、ある種好評を博しております。

・戯曲公開集

先に述べた「高校生100円でGO!」のハガキでもご紹介をしており、上演料も無料なので、高校演劇や大学のサークルの皆さんを中心にご利用いただいております。

それらの公演を観たお客様がアマヤドリに興味を持ってくださり、本家本元を観てみようとなってくれればいいな、という魂胆です。
▶︎http://amayadori.co.jp/hirotas-theater(公開戯曲集)

・客演情報用のバナー

アマヤドリでは他団体のフライヤー画像をそのまま公式アカウントから配信することは避けて、俳優の写真と組み合わせた特製バナーをその都度用意しています。

劇団公式アカウントのメディアの部分を見た時に並んだ画像・動画の質やテイストをある一定の水準に保って、「ダサい」とか「安っぽい」とか「適当だなあ」とかそういった印象を与えたくないからです。とても細かいことですが、こういったイメージの積み重ねが、劇団のブランディングを決定していくと感じているからです。

・舞台写真


本番が始まる頃にはメインヴィジュアルもサブヴィジュアルも見飽きられているので、舞台写真は恰好の宣伝材料。

ただ単に速報として写真そのままを流すのもありですが、アマヤドリではここに一手間加えて、新たな公演ヴィジュアルのような形式に編集してから配信しています。かつ、使い回しは基本的にせず、千秋楽まで毎日違うものを出していって鮮度を保つようにしています。

・公演終了後動画


コアな客層向けのコンテンツとして、作・演出・主宰の広田と劇団員とが創作を振り返りながら1時間近く喋り倒すといったものです。

上演が終わった後も議論が続くように、という意図を持ってかなり踏み込んだ内容を話していたりします。

・外側からみたアマヤドリ

所謂紹介文というやつです。あるいは劇評からの抜粋を紹介しています。第三者による客観的な評価の方がより説得力があるだろう、というものです。
▶︎http://amayadori.co.jp/comments

番外編

・銀髪道中〜下北沢練り歩き〜


現在、不定期で全身銀色の格好をして看板を持った劇団員が下北沢(時々渋谷)を練り歩いております。これにどれほどの宣伝効果があるのかは定かではありませんが、SNSの反応を見ている限りでは話題性はあるようです。

・新年会でアマヤドリ

劇団初の試みで、各種催し物をご用意した決起会イベントです。こちらは開催後のレポートを劇団員・小角まやよりお送りいたします。
▶︎http://amayadori.co.jp/archives/8958

・榊菜津美 生誕祭

ワークインプログレスの後に開催された謎のイベント。しかし、終演後に簡単な懇親会を開くなど、お客様との交流の機会がある地方公演の場合とは異なり、東京公演だとそういった機会があまりないので、今回はたまたま「榊菜津美 生誕祭」と題してでしたが、懇親会の番外編みたいなもので、反応は上場だったようです。
▶︎http://amba.to/2iKel1c

まとめ

というわけで、他にもやっていることは沢山あるのですが、主要なところを長々と色々書かせていただきました。

ところどころ、僕個人の主観でしかない部分もあるので、これを読んで僕のことは嫌いになっても、アマヤドリのことは嫌いにならないでください(笑)

俳優が俳優業以外の業務をやることに関して、異議を唱える方もいらっしゃるのですが、少なくとも特定の劇団に所属をして俳優をやっているのであれば、俳優業での貢献は言わずもがな、それ以外の部分も含めて「俺が、私が、僕が、この劇団を大きくするんだ、引っ張って行くんだ」くらいの気持ちがなければ劇団なんてやってられないですし、そんな資格もないと思います。少なくとも僕は「アマヤドリは僕が有名にしよう」と思って入団しました。

こういった仕事は各々持っているスキルであったり、スペックであったりに左右されますから、仕事が偏りがちなので、他劇団でも「なんで私だけが…!」と憤られている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、適材適所でいいんです。成果重視でいいんです。だってその方が良い結果を残せる訳ですから。

でもって、個人的に人から感謝されたいと思ってやっているわけではなく、それが自分たちの創作にとってプラスになるから、必要だからやっているんです。これらも立派な創作の一部だから憤る必要もないんです。

見てくれている人は、ちゃんと見てくれていますし、人並みなことやっていてもつまんないし、そんな事ではのし上がれないですし、生き急いでる方がなんか生きている感じがするじゃないですか(笑)

劇団の宣伝活動は、やれること・やるべきことを上げたらキリがないので、その全てをやろうとするとパンクしてしまいますし、真似事ばかりやっていても所詮真似事でしかないので、自分たちに合ったものを取捨選択しつつ、自分たちなりの宣伝スタイルが見つけられるといいですよね。

小劇場界隈の皆様、プロデュース公演に負けない、劇団の魅力を、底力を見せつけてやりましょーう!

石本政晶(いしもと・まさあき)


1988年生まれ。東京都出身。2015年『悪い冗談』よりアマヤドリ参加、以降劇団員となる。抜群の美的センスを活かし、中学生時代からデザインの仕事をしている根っからのクリエイティブ系、かと思いきや己の人間性を叩き直すべく一時期医療の道(横浜リハビリテーション専門学校・作業療法学科卒業)に進んだ後、演劇集団・円の研究所を経て俳優活動開始。中性的な個性派俳優として活動しており、また、アマヤドリ内では公演サブヴィジュアルや宣伝動画、物販パンフレットの類いを担当している。所属事務所はアニモプロデュース。
Twitter @ishimoto_isshi

アマヤドリ

2001年に「ひょっとこ乱舞」として結成。2012年に「アマヤドリ」へと改称。広田淳一によるオリジナル戯曲を中心に、現代口語から散文詩まで扱う「変幻自在の劇言語」と、クラッピングや群舞など音楽・ダンス的な要素も節操なく取り入れた「自由自在の身体性」を両輪として活動。リズムとスピード、論理と情熱、悪意とアイロニー、とか、そういったものを縦横に駆使して、「秩序立てられたカオス」としての舞台表現を追求している。

【次回公演】

※公演終了
アマヤドリ本公演『銀髪』
■日程:2017年1月26日(木)〜31日(火)
■場所:本多劇場(下北沢)

「銀髪」公演詳細ページ
→  http://amayadori.co.jp/archives/8910