スタッフ対談シリーズ 音響編「演劇界の音響の今とこれから(後編)」Sugar Sound 佐藤こうじ × 天野高志

画面の向こうの皆さん、お疲れ様です。編集長の加藤エンです。

前編記事ではお二人の昔の話や、若い頃の体験についてお聞きしましたが、後編では今の演劇界についてやこれから音響家を目指す若い人についてお聞きしました!

果たして、二人が思う音響の未来とは…

それでは、スタッフ対談シリーズ 音響編「演劇界の音響の今とこれから」後編スタートです!

前編記事はこちら
                  

音響と演出家の関係

こんな演出家は嫌だ

笹浦暢大
じゃあ、長く続けて来た二人から見て、ぶっちゃけ「こんな演出家は嫌だ」ってのはどんな人?
佐藤こうじ
えー。誰ってバレちゃうからなー…(笑)

演出家ってわけではないけど、めちゃくちゃでも筋が通ってればいいんだよね。

ただ時間を無駄にしてる人とはやりたくない。だからダメ出しが長い人は嫌いだな。

笹浦暢大
ちなみにオレは長い人だよ(笑)
佐藤こうじ
まあ、建設的であればいいんだよね。

長くやっていればそういう人はあるよね。あるでしょ?

天野高志
んー、困る人はいるけど、対処法は覚えちゃったからなー。
佐藤こうじ
最近思ったんだけど、芝居を保つためにかける音楽を要求されるってのは嫌だったね。
笹浦暢大
あー。「間が持たないんでなんか入れてください」とか。
佐藤こうじ
そうそう。
天野高志
そのくせ、その時は声小さかったりするんだよね。

そうすると「このボリュームで流すことにはもう意味がない」ってなっちゃうんだよね。

佐藤こうじ
本当に昔は多かったよね。
笹浦暢大
「どんどん音量上げて」っていう演出家とかいるけど、あれも何なんだろうね。
天野高志
そういう人はとにかく不安なんだと思う。人を信用し辛い。

でも、あんまり無下にしてもなって最近思ってる。だから別の方法で不安を解消してあげて、印象的に聞こえ方を変えさせてあげるみたいなね。

あっ、あと嫌いな演出家って言うか、設計図がない演出家は苦手かな。プランがしっかりしてないとかさ。

グッとくる演出家

笹浦暢大
なるほどね。じゃあ、逆にグッと来る演出家は?
佐藤こうじ
オレのことを試してるし、期待もしてくれているって感じられる人かな。

オペレーターって出演者に数えていいくらい重要だと思うんだ。

だから求められてることも理解した上で、それを形にしていけると楽しいから、そういう人とは一緒にやりたいよね。

笹浦暢大
やっぱ人と人ってのが大事だよね。人間対人間のやり取りっていうかさ。天野はどう?
天野高志
ほとんど一緒かな。

任せてくれるし求めてくる人がやりやすいし、やってて楽しいよね。

例えば、打ち合わせにいって台本開いて、ト書きに書いてあるような「ここで電話が鳴ります」とかそんな説明を延々と続けられると嫌だよね。

読んでわかって、見てわかるものはこっちで出来るし、入れるよ。そうじゃないじゃん。それだと「オレじゃなくていいじゃん」って思っちゃうんだよね。

笹浦暢大
その「オレじゃなくていいじゃん」って気持ちは大事よね。スタッフの方が劇団とかと比べると圧倒的に人数少ないしね。

だから「誰でもいいから紹介して」って言われるとムカつくよね(笑)

天野高志
「学生でもいいんで」とかね。

学生を使うかどうかはどうかはこっちが判断するんだから、そっちで判断しないでくれ。ってなるよね。

予算問題

笹浦暢大
予算ってか、仕事である以上お金が発生するわけで、そこら辺はどうなの?
天野高志
まあ、ギャラもらえないとやっていけないよね。
佐藤こうじ
食っていけないってのはあるしね。
笹浦暢大
そうだよね。一人でも価格破壊がいると、相場を崩しちゃうよね。
佐藤こうじ
予算なんて例えば1日2万とか決めちゃえば、それだけでもう何十万じゃん。それにプラン料と稽古場料に機材費が合わさるって考えたら、一公演に80〜100万は掛かるのに、それが60万とかだと舐めてんのかってなるじゃん。

そういうのだったらやめていいと思う。

天野高志
なるほどね。オレはよく一戸建てに例えるよ。

例えばこっちは100万掛かるって言ってるのに、40万しかないって言われると「例えば世田谷の一等地に三階建の庭付き南向きの一戸建てを建てたいみたいなプランでいただいてるんですけど、40万だと世田谷には住めないし、三階建の庭付き南向きも無理でしょう。きっと練馬の端っこですよね。練馬の端の方と思って今この話してました?僕は世田谷のつもりだったんですけどね」って。

佐藤こうじ
オレはやっぱ人との繋がりのみだと思うよ。

あと、30過ぎたら、言い値でやるのはやめて、会社相手にちゃんと交渉も出来なくちゃって思うね。

笹浦暢大
オレも舞台監督やってて色々あるけれど、やっぱり仕事なんだから予算とか、お金のことはちゃんとしないとダメだよね。
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音響の仕事

若者について

笹浦暢大
若い時から色々とやってきて、今となっては最前線を行くような立場になった二人から見て、今の若い人に対して何か思うことはある?
天野高志
今の子達はパソコンも覚えなきゃいけないのがかわいそう。

オレらの頃はCDとかMD入れてフェーダー上げちゃえば音は出たけど今はそうじゃないし。

笹浦暢大
そうすると専門学校は割と効果的?
佐藤こうじ
それが授業でほとんど卓に触れないんだよね。

15人とか生徒がいても卓は一つしかないからね。

天野高志
まあ、あんまり期待はできないよね。

専門学校に行って出来た気になっているより、音響に興味があって来たいって奴の方がいいよね。

笹浦暢大
専門学校はすごく丁寧に教えてくるみたいだけど、はっきり言って若いうちは知識よりフットワークだよね。
天野高志
大きな返事で笑顔でいてくれればそれでいいのよね。

専門学校、経歴について

佐藤こうじ
専門を出た人じゃないとやれないみたいな、専門の知識がないとやれないみたいなのは払拭してあげたいよね。
笹浦暢大
逆に専門学校卒は取らないって会社もあるよね。
佐藤こうじ
あるね。ここを通過すればいけるみたいな、この人の紹介ならば良いみたいな場があればいいよね。
笹浦暢大
日本のクラシックみたいに演劇でも積極的にプロフィールをきちんと載せて行くべきなんだよねスタッフも含めて。

韓国演劇なんかだったりすると、きちんと「◯◯大学の△△先生に習いました」という資料出して来るもん。日本もそういう紹介がもっと目に見えて、成り立つ形になるといいよね。

天野高志
オレも専門学校で今後どうしようか悩んで、それで「パソコンで音を編集したりしたいんです」って先生に相談したら学科が違うから難しいって言われちゃって。

で、後日特別講師に実際に現場で仕事をしてる人ってのが来て、その人を先生が紹介してくれて相談をしたんだ。それが前に勤めてたテレビの会社の社長だったんだよね。

それがきっかけで毎週その人の会社に遊びに行き、夏休みは2週間泊まり込んだりしてた。

そこは本当は新卒は取らないんだけど、何度も頼んでそこの会社に就職したんだよね。

もうね、それくらいやらないと、受け入れられないんだよね。

佐藤こうじ
本当にやりたい人には「やめたほうがいいよ」って言い続けてたしかめたいよね。

オレは自分のところでやってくれてる子には3年で離れてもらうようにしてもらってる。

天野高志
昔関わった劇団で、教師を正規でやっている人がいて、そこの生徒が見学に現場に来たんだよね。

そうしたら音響に興味あるって子達から進路について相談されたんだよね。専門なのか、大学なのか、それとも今すぐ働くのかみたいなさ。

それで「大学行った方がいいよ。今すぐやっても今後ずっとやるんだから今すぐじゃなくていいよ」って言ったことはあるね。

佐藤こうじ
オレのところにも学生のうちからやりたいってくる子いるけど、そういう人には「3年後には絶対思ってないからまずは卒業しなさい」って言うようにしてるね。

ずっと思ってられないし、興味があるからやっているだけで、どうしてもそれがやりたければ思っていればいいけど、まずは大学を経験した方がいいよ。

地方について

笹浦暢大
やっぱり地方から出て来る子は続けにくいの?
佐藤こうじ
続けにくいね。

最初は就職してもフリーでもどうしてもギャラも低いわけだし、その中から家賃とかって考えると大変だと思う。

逆にフリーの方が短縮というか、飛び級みたいなのがあるからね。

やりがいとしてはどこかに所属するのもフリーのもどっちもあるけれど、まず東京だよね。

天野高志
まず東京に来て生活をするんだよね。

「就職できるなら行く」とかダメよね。こっちは相手の実力を知らないからね。

根拠の無い自信がある奴の方がいい。

佐藤こうじ
現場はたくさんあるからね。とにかくやってみたら。
天野高志
とりあえずは飛び込んでみなよってね。
佐藤こうじ
例えば結婚式のオペレーターとかね。

でもやるなら20代前半までだろうね。

天野高志
自信はつくよね。
佐藤こうじ
やってみるってことはいいと思う。

ただ以前、弊害だと思ったことがあって、結婚式のオペをしてた子がオペに入ると音の感じが全然違うんだよね。

天野高志
そういうことはあるよね。

だからこそ、本当に20代前半までならって感じだよね。

佐藤こうじ
まあ、もちろん向いてる人はいるんだろうけどね。

あとは「どこの劇団が好き?」とか「どこの音が好きだった?」って聞いても答えられないんだよね。だから、まずはそれを見つけたらって言ってる。

それがあればそこに行けばいいだけの話だしさ。

まあ、よく「芝居たくさん見ろよ」ていうけど、東京は選択肢が多すぎるよね。何見ていいかわからないってのもあるのかもね。

才能のある爆弾

天野高志
地方に弱虫ペダルで行ったときに、現地スタッフの一人が普段は講師をされていて、そこの学生さんを連れてきたんだよね。

そうしたらそのうちの一人が「弱ペダを知ってるから引き続き現場に来たい」みたいになったから「いいんじゃないんすか」って言ったんだけど、他のスタッフとか周りから聞いたらどうやら役者のファンっぽいってなって、お断りをしたことがあったんだよね。

その時にちょっと難しいなって思ってさ。

身の上も知らないファンの方は公演の為に絶対に取れないけど、もしかしたら爆発的な能力があるかもしれないじゃん、音響の。

なんてことまで考えると難しいよね。やる気のある若者じゃん。東京行きたいくらいのわけじゃん。

笹浦暢大
まあ、確かにそういうことはあるよね。
天野高志
「どういうお芝居見るんですか?」ってので「2.5次元」っていう人はいるんだよね。

でも2.5次元って制作がやりたいだけで、あれもただの演劇。まあ、若手の劇団だよね。

だから演劇に興味はないみたいに言われると口をきかなくなっちゃう。

佐藤こうじ
そうなんだよね。ミュージカルとか華やかなのが今、たくさんあるからね。
天野高志
小劇場、2.5次元、商業のジャンルがあるよね。
笹浦暢大
あとはアイドル芝居もあるよね。
天野高志
女の人ねー。2.5次元とかで女の子が出てたりすると、マイクの調整がわからなくなるんだよね(笑)
笹浦暢大
アイドル芝居だとたまに発注で女性舞台監督はNGみたいなことはあるよね。

逆もあるけど。着替えがあるので女性スタッフ入れてくださいとか。

今後協同してやっていけたら素敵なこと

笹浦暢大
二人が思う、演劇に対する将来の展望図はどんなの?
佐藤こうじ
オレがワークショップ始めた理由としては「5年後の音響さんがやばい」ってのをずっと言っていて、それを4年前に思ったんだけど、今も全然変わっていない。オレら下の世代というか、若い人が育っていけば問題ないんだけど、まだそういう人がいないからヤバい。

どうやったら良いのかもわからないんだけどね。

ちょっとは20代もいるんだけど、果たして5年後どうなるかは不安。

天野高志
純度が下がっていくみたいなね。なんか音は出てんだけどグッとこないんだよね。

そういう人たちを見て育っていくと、どんどんその後がヤバい。

まあ、上から見たらきっとオレらも純度が下がっていっているうちの人間なんだろうね。

佐藤こうじ
好みはあるから、作り方は全然違うからそれは個人個人で良いんだけど、 それをあえてやってるみたいなのが言われちゃうとこっちもどうしていいかわからない。

だからこそ、もっと色んな知識を取り入れてもらいたいと思って、勉強会をしてるのにそういう世代の人が全然来ない。

笹浦暢大
今来てんのはもっと若い人とか?本当に右も左も分からないようなさ。
佐藤こうじ
うん、そう。

それか、めちゃくちゃ勉強したいおじさん。

演劇が全体的に、良いスタッフとやれる機会が減っているんだよね。

天野高志
そういうスタッフを増やさないとダメだよね。
佐藤こうじ
ミーハーでもちゃんとしてる人だっているしね。

だからとにかく良いからやれよって思う。

天野高志
全然使えない奴もいる中で、19歳とかめちゃくちゃ若いのにすげえできる奴だっているんだよね。だから、若い奴だから話さないってのはダメだよね。ちゃんと話せば分かるんだよね。

オレが未来について思っていることは、みんなが安定してこの職に就けるってことを目指していきたいんだよね。例えば会社を立ち上げてみたりとかさ。

でも、昔はそんなこと一切思ってなかったし、同じように今の若い人も分からないと思うんだ。

まあ、オレの中で思ってるだけのことなんだけど、とにかくちゃんと食べていける演劇界にしたい。

みんなで美味しいご飯を食べれる、演劇人だけどちゃんとした社会人として、そして一つネジ外れたことも出来るみたいなさ。

なんか今はネジが外れてる奴が演劇人みたいな感じがあるけれど、それを「社会人だけど、ネジ外せるんですよ」ってしないといけないんじゃないかな。

笹浦暢大
たしかにね。安定するまでが大変な業界だからね。

上に立つ人間としてそういう環境を作っていけるようにしていくってのは大事だね。

今日は、忙しい中、本当にありがとうございました。

まとめ

初めてのスタッフ対談企画、いかがでしたでしょうか?

前編の冒頭にも書きましたし、自分でこの記事を書いていてずっと思っていましたが、なんてニッチな話題なんだろう。

この記事を読んで、同じように活躍をされている現役の音響さんやスタッフさんには、思わず笑ってしまったり。若い人にはいい刺激になってくれたらと思います。

ちなみにこの対談、3時間も話してました。しばいのまち史上、最長です。

リクエストも受け付けてますので、読んでみたいセクションの記事がありましたら是非お問い合わせください!お待ちしております!!

果たして、次はどのセクションのスタッフ対談になるのか…乞うご期待!!

ワークショップ情報

今回対談にご協力いただいた、佐藤さんと天野さんが参加するワークショップが開催されます!

機会があれば行かれてみてはいかがですか?

※こちらのワークショップはすでに終了しております。
soniiiiiidoワークショップ
期間:2016年 12月26〜27日
会場:赤坂レッドシアター
HP:http://sugarsound.net/


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