小劇場の制作、ここおかしくない!?制作が抱える問題たちを今語ろう〜チケット売るのは制作?!編〜

みなさまごきげんよう。東京で演劇のフリーランス制作者として活動しています藤田です。

「演劇の公演」に対しての表現も色々ありますよね。芝居、公演、興行・・・いろいろな言い方がありますけれどそれぞれ意味が違うと思っています。

何が違うのかと言うと、「芝居」と言うのは公演の中の演技の部分だけ。
「公演・興行」はお客様も含めたトータルパッケージのことを指すと考えています。

今回はお芝居を「公演・興行」として成立させるために必要な要素「お客様」のお話ができればと思っています。
(ちなみに前回記事はコチラ→小劇場の制作、ここおかしくない!?制作が抱える問題たちを今語ろう〜お金の問題編〜

ではここで問題です。「公演・興業」に欠かせない要素「お客様」。

このお客様を呼ぶのは誰の仕事でしょうか?

というわけで本当にあった恐ろしい話をします。今から数年前のお話です。

突然の「チケットを売るのは制作の仕事です」発言

とある劇団の制作に携わった時の話です。

代表は役者出身の演出家。劇団員は若干名いるけれど、やりたい脚本をやるには人数が足りないので外から役者を補填。

劇団専属の座付きの制作さんはおらず、公演に対して「票券管理と公演当日の運営、稽古場確保」などが業務依頼内容でした。

諸々の決定権は制作ではなく、代表にあるという状況で、小劇場業界よくあるタイプの依頼形式です。

関係者が一同に会した場で代表さんは言いました。

「役者は芝居を作るのが仕事で、チケットを売るのは制作の仕事です」

何ですと!?・・・・・それ、この依頼内容とシュチュエーションでは違いますから!!

制作者はチケットが売れる魔法使いではない

まず、制作者には私のような企画単位で動く「フリーランス」と劇団に所属して活動するいわゆる「座付き」、その他劇場所属の方や制作会社に所属して活動されている方などいろんなタイプの方がいます。

が、小劇場界には「座付き」制作がいない団体も多く、そのような制作者不在の団体が、企画単位で制作者を入れるということは比較的一般的かと思います。

しかしながらそのような形で制作を入れたことがすなわち動員増に繋がるかと言えば違います。

「役者や演出家はただ芝居を作ってればOK。芝居を公演にして、芝居以外の全部をするのが制作なんだから役者の代わりにチケットを売ってきてくれる上、単発の今回の公演、短期間で爆発的に動員が伸ばすのが制作の仕事だ」という考えを持っている人が少なからずいるんですよね。

確かに「芝居を公演・興行として成立させる仕事」とは言いましたし、よく言われていますが、「潤滑にプロジェクトが進行するように外部に対しても内部に対してもマネジメントする」ということがまず業務だと考えています。

もし爆発的にチケットを売るスキルがあったらそれは「制作」ではなくむしろ「営業」という別のお仕事で、それこそ制作会社所属や劇団の座付きの制作さんで舞台部門と制作部門が対等な関係にある団体だったら「営業」も業務というところもあるでしょう。

プロデューサー・コンサルタントとしての制作者を迎え入れることによって動員が伸びるのと、実務者としての制作を入れることによって動員が伸びるのは違います。当然のように「チケットを売るのは制作の仕事だ」といきなり言われても知らんがなー!!!

ちなみにこれと似たような「それ業務内容の範疇超えてますし、話違いまっせ」的なシュチュエーションとして

*チラシのデザイナーはチラシ用の素材の作成・準備も行う
*舞台監督は舞台美術のデザインや大道具の製作も業務に付随する

というものがあったりします。

人は人でしか呼べない

まず私の考えとしては、お客様を呼ぶことを考え、責任を持つのは「主催者」の仕事です。そしてお客様を動員するきっかけになるのはまず何よりも役者であり、次いで脚本・演出家であったりするわけです。これは規模の大小問わず同じことだと思っています。

「●●さんが主演だからこのドラマ見よう」
「●●の●●くんがCMキャラクターだから買おう」
「あ、知り合いの●●さんがお芝居に出るらしいから応援がてら観に行こう」

これら全て、ファンであるか知り合いであるかの違いはありますがどれも「人」に対して来て頂いているお客様です。

団体力で呼べるところはブランディングが確立してますが、そのような団体であっても、お客様を動員するきっかけになる、また積み重ねとなってきたのはまず何よりもいの一番に「人」のはずです。誰が出る、誰が演出している、誰が書いている、などですね。

そして公演における役者さんの仕事は、芝居を作ることと同時に、自分の活動を見てもらうための営業・アピールをすることではないでしょうか。

制作にできること・できないことがある

今回例に挙げた単発のお仕事での依頼において、制作ができることというのはあくまで

「役者が呼ぶお客様を呼びやすくするための環境を整える」
「お客様を呼べる役者をキャスティングする」(これは依頼内容がプロデューサー・コンサルタント要素を含む場合のみ)
「定着率・リピート率を上げるなどのしかけを考える・つくる」

などです。

スタッフ全員も手売りしろと言われたり、出演者と同列に動員目標の提出を要求されたり(※実話)、挙げ句の果てにはスタッフにも公演に際してノルマありだったりすると、なぜそのようなことを強要されるのかと思ってしまいます。

ちなみに動員できない責任を取るべきなのも「主催者」だと考えています。団体の設定した目標動員数に達しないのを制作のせいにして、そこの損失補填を制作に要求したりする団体の存在を聞いた時には唖然としましたね・・・。

まとめ

演劇などのライブイベントは、テレビドラマなどとは違って「観てください」ではなく「観に『来て』ください」というもの。録画だってできない。

しかも図々しくも「この日この時間を空けた上でここの場所に来て、なおかつチケット代のお金も払って来てね!!物販だって買ってくれていいんだよ」という、見方を変えればとてもとても上から目線なコンテンツだとも捉えられる訳です。

動員というのは企業主催で広報宣伝費をかけても目標に達しないことだってあるし、ファンであっても友人であっても「役者のお客様」という流動的なところに依存しているものすごく博打な要素を孕んでいるものです。

だからこそ、公演に際しては制作も依頼をする団体もお互いに誤解が無いように共通認識を持って、1人でも多くのお客様に来ていただくために、共に良い仕事ができればいいなと今も考え続けています。

藤田侑加

兵庫県神戸市出身。大学で舞台美術を専攻後、卒業後演劇の制作として活動を開始。現在はフリーで演劇の企画・広報・制作から海外の演劇祭などにも参加している。時々グラフィックデザインも。
ツイッター:@yukarienne

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