演劇で王道目指して何が悪い

僕は「よくわからない演劇」が苦手です。

物語がなかなか前進しなかったら退屈だし、戦争や政治に関するなじみのない単語やわからないセリフが出てきたら誰かに解説してほしいし、登場人物5,6人が同時に同じセリフをハモりだしたらもう劇場を出たくなります。

僕は演劇そのものが好きなのではなくて、誰でも、笑って楽しめる物語の舞台が好きなのです。

ですが演劇業界ではそういう「初心者向け」の演劇はなんとなくメジャーになれない、なりずらいイメージがあります。

例えば日本劇作家協会がやっている新人戯曲賞の受賞作を読むとほとんどが「上級者向け」だと感じますし、新しい出会いを求めて全く知らない演劇を見に行っても「よくわからない演劇」をやっているところの方が多い。

僕は徹底して「よくわかる演劇」を目指しています。演劇を初めて見た人や、演劇に対して「よくわからない」「気取っている」「気持ち悪い」「恥ずかしい」という偏見とネガティブイメージを持っている人が見ても楽しめるものを作りたい。

誰でも楽しめる、笑いあり、涙ありの王道エンターテイメントを作りたい。

ここではそういった王道演劇の重要性について書いてみます。

新規顧客の重要性

そもそも演劇は今市民権を得ていません。

この間も美容院で担当の方に聞いてみたらその方は34年生きてきて演劇を一度も見たことがないと言います。

文化祭や劇団四季をカウントしたとしてもです。小劇場演劇なんて言葉も業界の存在も知りません。そういう人もたくさんいるのです。

いわずもがな、閉鎖的な演劇業界を救ってくれるのはそういった演劇を全く見たことのない人たちです。

彼らを劇場に呼び込むことが多くの劇団にとって課題となっているはずです。

であるならば、「誰でも楽しめる演劇」を目指している劇団を冷ややかな目で見ることはできないはずです。

一つの作品をつくるクリエイターにとって、「あなたの作品はこの業界の入門編だね」と言われることは賛辞でしょうか、皮肉でしょうか?

僕は賛辞だと思っています。

僕の作る作品を見て演劇そのものに興味が湧いて、他の作品も見るようになる。そういうきっかけづくりができればこの上なく嬉しく思います。

では王道とはどういうものなのか。あくまで僕の個人的な考え方をまとめてみます。

脚本の王道

うちでは「笑い8割、感動2割のアホ・ロマン・エンターテイメント」をコンセプトに掲げています。後半はややわかりにくいですが前半はわかりやすい。

笑い8割、感動2割なのです。これは演劇にどんなに詳しくない人でも理解できる日本語ですね。

実際に公演アンケートで「笑い8割、感動2割、まさにその通りですね!」と書かれていると、「初見のお客さんとの約束を守ることができた」とホッとします。

ほかにもウチでは具体的に脚本の定義を作ってあります。

  • 必ずハッピーエンドであること
  • 全員キャラが立っていること
  • 泣ける(感動できる)シーンを必ず1つ用意すること
  • できるだけたくさん伏線回収をすること
  • できるだけたくさん物語を展開させること

これらを毎回守る。

何度も公演を重ねていると作・演出としては新しいことや実験的なことをしてみたくなるのですが、そういうときにはこの定義に立ち戻るようにしています。

毎回公演を見てくれているお客さんが飽きてしまうことは防がなくてはなりませんが、そのせいで初見のお客さんが楽しめないものになってしまっては絶対にいけないと考えています。

面白い劇団を一つ見つけて、その後の作品を見たり、DVDで過去作品を見たりすると、結構やっている内容が変わってしまっていてがっかりすることがあります。

こちらとしては「あの感じに似てていいからあのクオリティを量産してほしい」と思っているのですが、本人たちはそう思っていないのでしょうか?変わっていかなければいけないのでしょうか?

舞台美術の王道

舞台美術は「見栄え」と「仕掛け」が重要だと思っています。

こればっかりは予算にもよるのでなかなかウチも毎回理想通りのことができているわけではありませんが、できるだけ初見の人でも楽しめる舞台美術を提供したいと思います。

特にお客さんの中には脚本や役者の演技力はどうでもいいと思っている人もいる(本当にいます)ので、そういう人が目で見てわかりやすく楽しめる華やかさがあれば、と思います。

何もコテコテの量で魅せる舞台美術を用意する、ということではなくて、ここでは照明と音響も同様にして話しています。

劇団を回しているのはほとんどが作・演出と役者のみですが、残念ながら脚本にも演技力にも興味がないお客さんはたくさんいるのです(特に演劇を見たことのない人の中には)。

だからそこを抜きにしても、舞台美術単品で見て楽しめるものにしなくてはならないと思います。

エンターテイメントという王道

最後に、エンターテイメントについて。

僕はディズニーが大好きで、あれこそ王道中の王道だと思って脚本などのエッセンスを盗んでやろうと日々試行錯誤しています。

大学の卒業制作では「ディズニーの脚本哲学」と題してディズニー・アニメーションの脚本の流れを体系化しようと試みたりしました。

少しだけ内容を紹介すると、例えばディズニーの映画は、主人公がいて、仲間がいて、敵対する存在がいて、まず日常を描き、そこに変化を与え、主人公が一度挫折を味わい、ひねくれることで何か間違った選択をし、そのせいで大切な人が危険にさらされるけど「内面的な成長」のおかげでそのピンチを救うことができてハッピーエンド、ハッピーエンドの後の日常は冒頭の日常よりも何かがプラスになっている、という具合です。

何もディズニーに限らずそういう物語はたくさんありますが、演劇でここまでわかりやすい物語はあまり見かけません

でも僕はそういう物語を書きたいと思っています。ディズニーみたいな脚本のクオリティで舞台が出来たら最高じゃないか、と思います。

まとめ

わかりやすくていいのです。

周りにいる自分と同じ環境の演劇人やクリエイターには「わかりやすすぎる」と言われるくらいが丁度いいと思っています

なんで演劇の裾野を広げようと頑張っている人たちが叩かれなきゃいけないんだ、と。

ウチでは前回から、公演アンケートに「この公演を、演劇を見たことがない人にも勧められますか?」という項目を設置しました。

これからも毎回設置して、この項目の「はい」の回答率が下がったら妙な実験をし始めてしまっていると自覚しよう、という狙いです。

演劇を初めて見る人が、演劇をふらっと見に行った時に、ちゃんと楽しめる確率をあげたい

それってめちゃめちゃ大事なことじゃないですか?誰でも楽しめるエンターテイメント演劇をやる演劇人の肩身が少しでも狭くなくなればいいなと思います。

山口翔平

舞台屋アホロ作・演出・役者・広報。デザイナー・webデザイナーとして仕事をしながら舞台をやっています。武蔵野美術大学出身。脚本・演出・チラシデザイン・webサイト作成のお仕事承ります。
twitter→https://twitter.com/twishohei
デザインの仕事の事例→http://yamaguchishohei.tumblr.com/
お仕事のご依頼→yamaguchishohei93@gmail.com

舞台屋アホロ

武蔵野美術大学生が立ち上げたコメディ専門の演劇集団。テンポのいい脚本の伏線回収の気持ちよさ、美大生がつくる仕掛け満載の舞台美術などが特徴。コンセプトは「笑い8割、感動2割のアホ・ロマン・エンターテイメント」。

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現在、2017年4月の次回公演に向けて劇団員・学生スタッフを募集中です。興味のある方は件名を「参加希望(しばいのまちから)」とし、ahoro.butaiya@gmail.comまでご連絡下さい。

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