今が旬!注目の演劇人Vol.6「失敗は若いうちの財産だから、コケまくれ(後編)」THE REDCARPETS主宰:金房実加

今回で6人目となる今が旬な注目の演劇人は、THE REDCARPETS主宰であり、数々のプロデュース公演の脚本・演出も手がける、金房実加さんにお話を伺いました。

今回の後編記事では金房さんの壮絶な過去の体験と、若者へのアドバイスについてお聞きしました!
前編記事はこちら

自爆をしてしまった過去

精神病院入院

ーこれまで「芝居をやめたい」と思ったり、挫折するようなことはありましたか?

金房実加
んー。挫折というか、2008年に仕事が忙しかったのとプライベートで不倫してたのが重なって精神的にパンクして1ヶ月半くらい精神病院に入院してたことがありました。

ー…えっ?

金房実加
もう、物量がキャパシティを超えちゃいまして。

一人暮らしを始めた時期と不倫してた時期と仕事が忙しくなった時期が重なってしまい、昼夜逆転生活のほとんど寝ないで仕事し続けて恋愛も不安定みたいな日々が続いたんです。

鬱とかではなく発狂に近いと言いいますか、幻聴聞こえるし、見えないもの見えるし。

完全にトリップした状態になってしまって、捜索願を出されまして…

ーえっ?どっか行っちゃったんですか?

金房実加
行きましたね。放浪しました。

携帯をへし折り、ゴミ箱にぶん投げて、財布も持たずにタクシーに飛び乗って、夜な夜な六本木とかを徘徊したり…

元彼の…いや元彼というか、以前に浮気していた彼が鍵をかけずに出かける人だったんですね。

それを覚えていて、彼の家に侵入して、勝手に待ってました。もう関係は切れてたので、彼も帰って来てかなりビックリしてました(笑)

それで彼に鞄とお金を借りて新幹線に飛び乗りました。

その間家族は「家にいないぞ」って大騒ぎになり、彼氏とマネージャーと当時の劇団メンバーと叔母が私の部屋で4人で待ってたそうです。

で、捜索願が出され、新幹線乗ってる時に品川駅かどっかの鉄道警察に保護をされました。

それで東京都から危険人物指定みたいなのを受けて、「こいつヤバいから措置入院だ」みたいになって、病院に搬送されました。

ー…いや、あのなんでしょう。予想の遥か上をいく話が出てきましたね。

金房実加
ですよね(笑)

単純に言うと、自爆だったんです。

仕事が増える分にはいいことなんですけど、受け方も間違っていたんです。

別にマネージャーが悪いとかではなくて、私があれこれやり過ぎちゃって調整が自分で出来てなかったし、キャパシティを超えてたんでしょうね。

1ヶ月半入院したんですけど、今はもう薬も飲んでないですし完全復活しました。

ーあっ、完全復活されたんですね。よかったです。ほっとしました(笑)

巡り合いに救われた

金房実加
たまたま入院した先の担当の先生が結構演劇がお好きな方で「私、天然スパイラル観たことあります」って言われたんです。

それで先生が私の親に「物書きさんとか表現者の方ってのは紙一重なんです。あの世行ったりこの世行ったりりする方が多いのですが、実加さんは絶対治りますよ」って両親に言ってくださったそうで「それで救われた」って後から親が言ってましたね。

ーじゃあ、いい先生に巡り合ったんですね。

金房実加
そうですね。みんな薬漬けになって、どんどん落ちてっちゃう人が多いみたいですからね。

しかも、そこの中で多重人格の女の子に仲良くなったんです。

マイナスの状況がプラスに転じた

金房実加
何故か昔からすごく多重人格に興味があって、何故か分からないけどいつか芝居にしたいと思ってたんです。

当時、自分もまだおかしいんですけど、割と早く症状がバーンっと一気に出たもんだから薬で治って、正気に戻るのが早かったんです。

それで「私作家なんだけど、いつか多重人格のお芝居を書きたいと思ってたから良かったら取材させてくれない?」って言ったら「私達みたいな病気のことを知ってもらえるのは嬉しい」って言ってくれて、頭の中の構造とかを彼女が色々教えてくれたんです。

で、それを退院してから1年半後くらいに「ドールハウス」ってタイトルで多重人格のお芝居をやりました。

その時は「約束が果たせてよかったな」って感じました。

ー入院というマイナスの状況がプラスに転じたわけですね。

金房実加
そうですね。今から考えると覗きたい世界だったんでしょうね。閉鎖病棟とか。

正直私、家族にも恵まれてて、何も病む理由がない中、不倫と多忙っていう完全に自爆の状態でその症状になって入り込めたというか、そうでもしないと入れなかった世界なんです。

だから、ある意味この世の果て的な場所でした。

演劇は伝播率がすごく悪いので、その子との約束もどこまで果たせたかってところは微妙ですけど、見たかった世界を見れて、彼女と出会えて、そのために入ったのかなってちょっと思っています。

「笑い」と「愛情」に助けられた

ー1ヶ月半で退院をされ、それから立ち直るにはどれくらいかかったんですか?

金房実加
それもまた運が良かったんです。

ずっと天然スパイラルに出てもらっていた女優の子が「漫才やれへん?」って言ってきたんです。

まだ退院したての頃は薬でぼーっとしてた私に声を掛けてきたので、「なんで?」って聞いたら「あんた今暇やろ?M1出ようや」みたに言われたんです。

それで「M1?わかった。今やったら暇やし。ほな、ちょっとM1のDVD見とくわ」ってなって歴代のM1のDVDをめっちゃ見たら、めっちゃ面白くてめっちゃ笑ったんですよ、何度も。

そうしたら笑いがすごい力になったらしくて、ものすごい勢いで回復をしていき、退院から半年後にはもうM1の予選に出れるくらいに回復して、「驚異的な回復力」って先生にも言われ、マネージャーにも「もう戻って来ないと思ってた」って驚かれました。

金房実加
それと、ちょうど退院したてくらいに天然スパイラルの公演が重なっていたんです。

それで出てたメンバーがみんな心配してくれたんです。

だから、自分でげそげそに削ぎ落とした力のないところを笑いの力とみんなの愛情で埋めてもらって復活しました。

金房さんから伝えたいこと

人と関わることを積極的にしてほしい

ーでは最後に、そんな波乱万丈な経験をされてきた金房さんから若い演劇人に伝えたいことはなんですか?

金房実加
特にこう、作家や演出家に限らずって感じですかね?

ー限らなくてもいいですし、もちろん限っても大丈夫です。特に伝えたい奴らに

金房実加
特に伝えたい奴らがいるとしたら、声優なり、役者なり、脚本家や演出家っていう、表現者を目指してる人たちですかね。

やっぱり自分と同じ業種の人達はどうしても厳しい目で見ちゃうので、一番言いたいことが募っちゃうのはそこかな。

最近の若い子を見てて思うのが、バーチャルの世界、例えばLINEであったりネットのやり取りで済ますとか、みんなちょっとリアルでのコミュニケーションが薄いなって思います。

「いっぱい映画見てます」とか「アニメ見て勉強してます」とかっていうのも良いけど、一番自分の身になるものってリアルに自分の中を通過した感情が強いかなって思うので「人と関わることを積極的にしてほしい」ってこと。

それと「失敗は若いうちの財産だから、コケまくれ」ですかね。

失敗は若いうちの財産だから、コケまくれ

ー先ほどの入院の話など、金房さんが実際にリアルで様々な体験をされてきたからこその思いなんですかね。

金房実加
あの経験は大きかったですね。もちろん精神病院はなるべくなら入らない方が良いと思います。

けど、人と出会って、例えば恋愛にしてもそうですけど傷つくこととか色んな感情をストックする、それを表現して食べていくってのが表現者。だから、色んな感情を知った方がいいと思うんです、良くないことも含めて。

そうなると怖がらずに相手と関われるんです。

あと恋愛において、私が若い頃は猪突猛進型というか肉食系で、好きになったらとりあえず行って「Yes or No?」「No」「OK!Next!」みたいな感じで次々に狙ったところはとりあえず行くみたいな感じだったんです。

でもそれで何が得られたかって、結婚したら割と落ち着ける。「やり切ったから、もうそこはいいや」って思えるんです。

だから、やり切れってこととか言いたいですね。

大人になって唯一後悔するとしたら、チャレンジしないで失敗してこなかったことが絶対後悔するだろうなって、この歳になって改めて思いますね。

金房実加
挑戦してないってことは失敗もしてないし、言われるがままに生きてきてるだけ。

そんな傷つかないように自分を守ってきた表現者って絶対つまんない。

「自ら傷つけろ」とは言わないけれど、積極的に他人と関わって感情を揺さぶる、自分の中に感覚として感情を流すってことが人としても深みも厚みも出るし、大人になった時に後悔もしない。

そういう人の方が例え表現者として食べていけなかったとしても、どこに行っても成功するんじゃないかな。

ーたしかに様々な表現をするからこそ、多くの経験をすることは必要ですね。本日はお時間頂き、ありがとうございました。

まとめ

今回インタビューの中で予想外の話が飛び出し、正直かなり驚きました。

僕らでは決して予想できない経験こそ、今の金房さんの表現の源になっているのだと感じました。

まだまだ若い僕らは様々な出来事にぶつかるでしょう。それを金房さんの様にプラスに変えるため、常にアンテナをしっかり張り、失敗を恐れないことが必要ですね。

公演情報

平成時代劇 片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」二○一七年 新春三館同時本公演

「父娘旅情」
会場:シアターグリーンBOX in BOX THEATER

「冥途遊山」
会場:シアターグリーンBIG TREE THEATER

「吉原端唄」
会場:シアターグリーンBASE THEATER

※それぞれの劇場で作品の内容は異なります。

【公演期間】
2017年1月3日(火)~9日(月・祝)全11公演予定

【チケット発売日】
2016年11月中旬頃より発売予定

詳細はこちらからhttp://alii-inc.co.jp/

メルマガorLINE@登録

メルマガorLINE@に登録して、ここでしか受け取れない情報を受け取ろう!