「ママ演劇人の苦悩と挑戦の日々」HYP39Div.「至極滑稽亡者戯」公演前特別インタビュー

先日しばいのまちに掲載された連載コラム記事「ママ演劇人の苦悩と挑戦日々」。

母であり演劇人であるという特殊な環境での苦悩や挑戦、そしてその熱い想いが、同じような境遇の方や母になることで演劇をやめてしまった方など多くの方に共感を生み、一躍話題となりました。

今回はその記事の筆者である表情豊さんが主宰を務める劇団、HYP39Div.の「至極滑稽亡者戯」の公演直前ということで、特別インタビューをさせて頂きました!

表情豊コラム記事

表情豊とは

「HYP39Div.」主宰。脚本、演出、出演、だけに留まらず、コラム、イラスト等、頼まれれば大体のことはやる女。人生で一度も痩せていた事がない。横スクロールのゲームをやると吐く。
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twitter:@hyp39

HYP39Div.

2008年、HYP39旗揚げ。2013年まで本公演および30分程度の番外公演などを行ってきているが、その全ての作・演出を表情豊が行なっている。 本人も出たがりなので舞台に結構出る。第6回本公演(2012『悪食』)まで、特定の劇団員を持たず、公演ごとに役者を集め、公演終了と共に解散をする表情豊のプロデュース公演という スタイルを貫いてきたが、役者数、キャパシティ、セット、公演時間など、独力で出来る事の限界を感じた為良い意味で”観念”をし、2013年4月15日から『HYP39Div.』と改名し劇団へと移行する。

演劇を始めた経緯

大衆演劇出身

ー本日はお忙しい中、お時間頂きありがとうございます。では、まずは演劇を始めた経緯からお聞かせください

表情豊
実は私が生まれた時からおばあちゃん、お母さん、私の3代で大衆演劇をやっていたんです。

それで各地の健康ランドとかを回っていたので、その影響で3ヶ月くらいで転校を繰り返す生活をしていました。

しかも学校にもまともに通うことも出来ないんです。昼に公演があるから4時間くらい勉強して、給食食べないで帰るみたいな生活を送ってて、それがすごい嫌だった。

ー小さい頃から嫌だったんですか?

表情豊
小さい頃は子役でキャーキャー言われててそれは良かったんですけど、成長するにつれて「恥ずかしい」みたいな気持ちも出てきたし、ちゃんとみんなと一緒に学校に通いたいと思って、「やめたい」ってことをすごい親に言ってたんです。

そんな頃に当時の座長であったおばあちゃんが亡くなってしまい、今後のことを考えた時に、団員の数も減っていたし、大衆演劇のブームもかなり去っていたので、「まともになろう」ということで実家の香川県に帰って生活をし始めました。

でも染みついたものってのは取れなくて、「まともになりたい」って言った割には私は目立ちたがりだし、お母さんもずっと旅回りの一座としてしか暮らしてなかったのでバイトとかが出来ないんですよ。

それでも頑張ってくれましたけどね。うちは母子家庭だったのでお母さんが頑張って一人で支えてくれたんです。でも、生活はかつかつだったので私もバイトを始めました。

上京〜旗揚げ

表情豊
それで数年後に東京に出て来ました。そうしたら友人がある劇団にコネを持っててそこに誘われまして、「そんなに言うんだったらやってみるよ」って言って、ある劇団に入ったんです。で、やってみたら出来たんですよ。

ーそれはいつ頃の出来事だったんですか?

表情豊
私が22〜23歳くらいの時ですね。今考えてみたらド下手くそでしたけどね。昔取った杵柄とい言いますか、そもそもの発声だとか人に見られるって感覚が染み付いていた部分があって、それでそこそこやれてしまって、やっぱりスポットライトを浴びたらすごく気持ちが良かったんです。

ースポットライトって一度浴びるとクセになりますよね(笑)

表情豊
ですよね(笑)

でも子供の頃からすごくワンマンな性格で、どこかに所属するってのが出来ないんですよ。会社勤めをしてたこともあるんですけど、かなり野放しにされてて「やる気がある日はやるしない日はやらない」みたいな上からしたらかなり扱いにくい人間だったんですね。

それは劇団にいてもそうで、自分のやりたくない話とかをやらきゃいけなくなるじゃないですか。それで、「自分でやってやれ」と思って旗揚げというか自分一人で勝手に公演始めたのが23〜24歳の頃でした。

もう無謀も無謀でしたね。なんのコネもなく、スタッフ0、劇団員0でしたから。

子供が出来た時の気持ち

想像がついてなかった

ー劇団を立ち上げ、数年後にお子さんができるわけですが、その時には演劇を続けるかどうか悩んだんですか?

表情豊
それがあんまり悩まなかったんですよ。「無理すりゃ、なんとかなんだろ」って。

私、我慢がすごく苦手なんです。食べたい時に食べられない、寝たい時に寝れないってのがすごく嫌なんですよ。「寝たい」ってことよりも台本を「書きたい」ってことが勝ってるから書けてるんです。逆も然り。

だから「子供が出来て大変だろう」ってことよりも「お芝居をやりたい」の方が勝っていたので、じゃあどっちもやろうってなりました。

産んだ後の生活がどう変わるのか想像がついてなかったんです。「大変だろうな〜」ってくらいのフワ〜って感じで何にも考えてなかったんです。バカだったんですね。

産むこと育てることが筋

ーたしかにそんな簡単に想像出来ることではないと思います。

表情豊
実は子供を産むって決めたきっかけもすごく不純な動機で、子供のためを思って産んだわけじゃないんですよ。

「もし堕胎したら私は一生十字架を背負わなければいけない」って思ってそれに耐えられる気がしなかったから産んだんです。だから完全に自分本位な理由で産んだんです。

ーでも、その感覚ってすごく大事なことですよね。

表情豊
そうだと思います。私、筋の通ってないことがなにより嫌いなんです。だから私にとって子供が出来た時点で産むこと育てることが筋だったんです。

例えばそれがすごく嫌々できしまったのであれば違うのかもしれないけれど、何にも考えずにヤってできちゃったのなら責任取るしかない。

ちなみにそんな風に日頃から筋にこだわるので、うちの劇団は客演さんからよく「ヤクザみたいだ」って言われます(笑)

主宰であり、母である現実

ー実際に家庭を持つことになって、子育てをしながら演劇をして「やっぱりやめよう」とは思ったんですか?

表情豊
正直、考えました。なんなら今回の作品を書き上げるまでやめた方がいいと思ってました。子供が生まれてから自分の中で大事にしてきた筋が通らないことがたくさん出て来たんです。

自分でも「これは違うぞ」ってことをやらざるを得ない状況に追い込まれてしまって、あれだけ「筋が、筋が」って言ってきた自分がそれをやれてないってことにすごく落胆したんです。

でも、実は解決するのは簡単で筋が通らなければ謝ればいいんですよ。

「自分がダメでした」「すいませんでした」って頭を下げて「助けてください」って言えば助けてくれる仲間がいたのに、それがつい最近まで出来なかったんです。

筋を通すために自分が頑張ればいいんだと思っていて、それが原因で具合が悪くなったりしてた。けれど、それは結局人に迷惑しかかけてないってことに気付いて、つい半年くらい前ですかね、ちゃんと人に謝れるようになったのは。

出来ない事は人に頼むってことを今までもやってきたけれど、言ってる時の気持ちが違いますね。

ー謝ること、「助けてください」って言うことって、とても大事なことですけど、同時にすごく難しいことですよね。

表情豊
そうですね。私はそれまでずっと勘違いをしてたんです。

主宰っていつもバーンっと立ってて、弱音を吐かずしっかり立ってるみたいなことに憧れすぎちゃってて、側からしたらただの無理して頑張ってるダサい人みたいになってたんです。

情けないところを見せてかっこ悪いなって思われるのが嫌だったんです。

「至極滑稽亡者戯」について

「至極滑稽亡者戯」あらすじ
「こっちはさあ、死んでんだよ!?死んじゃってんだよもう!なんだよそのドライな対応。ちょっとくらいウェットであってくれないとねえ、あたしゃ困りますよ!!」――――劇作家、岡田シャーミン。志半ばにして、死す!!

貧乏暇なし、人望なし。ないないづくしの「この世」を捨てて、三十路で子持ちの劇作家、岡田シャーミンが辿り着いたのは所謂「あの世」。三途の川に柳の木、六道の辻に閻魔のお裁き。「あの世」の旅もそれなりに、気がかりなのは「この世」のこと…

古典落語「地獄八景亡者戯」をベースに、あの世とこの世の狭間で苦悩する、ある劇作家の物語。

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「死んだろか!」って思ってた

ー今回なぜこの作品になさったんですか?

表情豊
「死んだろか!」って思ってたからです(笑) いや、死にませんけど何もかも嫌になっちゃってそんな風に思ってたんです。

もしも確実にあの世があって、あの世って場所がこのお話の元になっている落語の「地獄八景亡者戯」のように楽しい面白いところだと知っていたら、死んでましたね。

でも確証ないじゃないですか。だから死んで今より辛いところに行くのは嫌だなって思ったんです。

側から見たら笑える話

表情豊
今が私の人生のどん底だと思ってたんですけど、でも楽になるんじゃなくて、よりヤバい所に行くとしたら嫌すぎるなって。

でも、あの落語を聞いてるとあの世って悪いところじゃないのかなって気がしてくるんですよ。

お話の一番最初に「あの世のお話ですけど何の怖いことはありません。我々と同じような人間が出て来て、我々と同じように右往左往するお話です」みたいなことを言うんです。だから、ある種気が楽になったのかも。

表情豊
元々、昔から落語がすごい好きでちょくちょく聞いてたんですけど、元ネタの「地獄八景亡者戯」ってすごくおもしろいんですよ。

なんか色んなくだらない理由で登場人物が死ぬんです。本人は辛いと思うけど、側から見たらすごいバカバカしかったりすることってあるじゃないですか。

例えば私がここで死んだら「あいつ台本書けなくて、生活辛くて死んだらしいぜ」って言われるだけなんだって思ったら、「そんなアホみたいな理由で死ぬのもなんだかな」って感じたんです。

今、私は自分のことをすごくかわいそうで、どん底だって思っているけれど、側から見たら笑える話なのかもなーって。

自問自答を繰り返して書いた本

ーあらすじを読むと今作品の主役が劇作家のようですが、これは表情さん自身が題材になってるんでしょうか?

表情豊
はい。私、本の中で嘘をつくのが嫌いで、思ってないこと書きたくないから私のお芝居って「いい奴」が出て来ないんです。

生身の人間が目の前に出て来て、「人助けは素晴らしいからやりましょう」って言われても「うるせー」って思うじゃないですか(笑)

人間て醜くて、そういう部分が近しく思えたり、共感してもらえたり。みんなが蓋をしている部分を開けて回りたいってのが昔からあるんです。

それを今までは外に向けて「良い人ぶってて実はこうなんだろ?」って気持ちで書いてたところがあったんですけど、今回はそれを全部自分に向けてみたんです。

自問自答を繰り返して書いた本なんです。だから、書いてても、演出つけてても辛いですね(笑)

例えば役者にされた質問に対して私が「そこは開き直ってて、自分が悪いと思ってるけどそういう風にしか出せないんだよ、そいつがバカだから」って言うんですけど、全部それが自分に返ってくるんですよね(笑)

演劇の地獄

ー︎今回の題材でもある「地獄」ですが、表情さん自身、今生きていて「地獄だ」と感じていることがあるんですか?

表情豊
はい。その地獄がどんな地獄かは今回のお話のネタバレになっちゃうのであんまり言えないんですけどね。

例えば、今うちの劇団員が「アクセント地獄」にハマっているんですよ。地方出身の人なんですけど、自分でも気付いてないようなアクセントの違いがあって、指摘してもなかなか治らないんですよ。

ーアクセント地獄って地方出身の方は必ずハマりますよね。

表情豊
そうですね。あと「段取り地獄」ってのもありますね。

私、段取りが嫌いなんですよ。お芝居が段取りっぽくなるのも嫌ですし、場転の段取り考えるの嫌いなんですよ。でも演出助手がいないんで仕方ないんですけど、それだけで稽古が嫌になりますね。

あとは「ピリピリ地獄」ですかね。

ーピリピリ地獄ですか?

表情豊
はい、ピリピリです。

本番直前になると、役者って人間性がむき出しになるじゃないですか。「あれ?この人良い人だと思ってたのにこんなにピリピリするんだ」とか感じるやつです。

ーたしかにそういう「あれ?この人…」みたいなのはありますよね(笑)

表情豊
ありますよねー(笑)

私思うんですけど、本番直前の役者を見せたほうが面白いんじゃないかってくらい、人間性の塊というかむき出しなんですよね。

余裕がないから、見栄も外聞もないんですよ。みんな殺気立ってますからね、本番前って。

自分のことを誤魔化したくない

ーでは今回の作品の見所を教えてください。

表情豊
見所と言うか、以前ラジオ番組に出演させて頂いた際に「どんな劇団ですか?」「どんな作風ですか?」って言われたのにみんな答えられなかったんです。

そうしたら、たまたま私のことを知っているリスナーさんが「観てて笑うんだけど、気付いたら首元にカッターの刃を突きつけられてるような劇団だ」って言ってくださったんですよ。

「笑ってくださいって」言う割には「てめえ、笑ってんじゃねえよ」って言って来るみたいな。みんなが目を背けてるものは突きつけたいんですね。

ーなるほど。今日、お話を聞いてて思ったのですが、表情さんは自分の立場や経験など、ご自身のことを振り返ることが多いんですね。

表情豊
そうですね。なんか自分で自分のことを分かりたいし、自分のことを誤魔化したくないんです。

例えばすごく激昂して「ふざけんなー!」って言ってる時も頭の上ら辺に誰かいて「お前今すごい大きい声出してるけど、恥ずかしくないの?」とか言ってるんですよ。

それはみんな絶対あると思う。ただそれをないものに出来る人と出来ない人がいる。

きっと今こうやってインタビューを受けてたくさん話してますけど、加藤さんと別れた後に「いっぱい喋っちゃった…」「もっと良いこと言えばよかった…」って思うでしょうしね。

ーいやいや(笑) たくさん良いお話聞かせて頂きましたよ。

表情豊
そうですか? それなら良かったです(笑)

私、よく人とお会いする時に「この人にはこう見られたいな」って思ったらその部分を全開にして自己プロデュースをするんです。

面白い人に見られたかったら面白い部分を全開に。大人しい人だったら大人しく振る舞うし。

本当の自分てのがどこにあるかは分からないですけど、それをやってる時にそいつが「頑張ってるな、お前」って言ってるんです。

そういうところに目をちゃんと向けないと、人間は深みが出ないと昔から思ってますね。

今後の抱負

ーでは最後に今後の抱負について教えて下さい。

表情豊
私は「一生面白いことをして過ごす」ってのが夢なんです。こんなこと言ったら劇団員がザワつくかもしれませんが、例えばコラムでめっちゃ売れてコラムの仕事に就くならそれでも良いんです。おもしろいことを表現するのは同じですから。

あとは劇団員みんなのことが私は好きなので、とにかく色んな人に彼らのことを知ってもらいたいです。知ってもらわないことには何にも始まりませんからね。

ーたしかに。例えそれがどんな感情でも、まずは知ってもらうことが必要ですよね。

表情豊
そうですね。

それに私は悪い意見の方が聞きたいですね。それが自分達がより良くなる為に大事なことだと思うので。

ー目を背けてしまう人もいますけど、それってとても大事なことですね。本日はお時間頂き、ありがとうございました。

まとめ

自分自身も、子供の頃から演劇に触れて来られた表情さん。子育ても、演劇も、どちらも妥協を許さないその姿勢はとても力強かったです。

今回、インタビュー後に稽古場を見学させていただいたのですが、全員の結束力であったり、作品に対する強い思いが伝わってきました。

お時間ある方は、是非劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。

次回公演

※公演終了
HYP39Div.2016年度秋公演「至極滑稽亡者戯」
◼︎日時:2016年10月26日〜30日
◼︎場所:ART THEATER かもめ座

「至極滑稽亡者戯」の詳細・ご予約はこちら

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