「劇団のwebサイト」はどうあるべきでしょう。前回の記事「小劇場演劇のチラシはなぜダサいのか」に引き続き、今回はwebデザイナーとして小劇場劇団のwebデザインについて考えてみました。
はじめに、僕はweb制作会社で基礎的なことを学んだ後、今はフリーランスwebデザイナーとして外部からお仕事を頂きながら舞台をやっています。うちも例にもれずお金がないので自分の劇団のwebサイトは自分で作っています。
「認知度の低い劇団」にとって、webサイトはチラシ以上に重要な存在です。重要なのはほんの少しだけ劇団に(演劇に)興味が沸いた人がそのサイトを見て「しっかりしていそう」と思うこと。
そしてサイトを見た人が舞台を実際に見た時に「想像したイメージと合っている」ことです。この考え方はチラシと同じです。
ここでは主にwebまわりをプロに外注するのではなく自分たちでやっている劇団に向けて書きます。
劇団のwebサイトについて
デザインは全般そうですが、劇団のwebサイトは何よりも「わかりやすい」ことが重要です。
よく「劇団のコンセプトに合っているか」を優先しすぎて「見づらい」ことになってしまっているサイトを見かけますが、初めてそのサイトを見る人はそもそもサイトを全部見る前に退出する場合がほとんどです。
「面白そうだな」と思ってサイトを訪れても、演劇に普段馴染みのない人なら「見づらい」「チケット予約をどこですればいいのかわからない」というだけで退出しかねません。
極力、初見の人に優しいサイトづくりを目指しましょう。
サイト訪問者を10秒以内に惹きつけるために使える19のチェック項目
いいなと思ったサイト
維新派
ビジュアルのクオリティが高く、団体の毛色や臭いがすぐに伝わってくることももちろんですが、ここでは基礎的なこととして「公演特設サイト」から維新派オフィシャルサイトへすぐに戻れるようになっていることをあげたいと思います。
団体のオフィシャルサイトでは白背景に黒文字。公演の特設サイトではページレイアウトが変わり背景画像が公演ビジュアルのぼかしであるため「ここが特設サイトだ」とすぐ分かる。
アホロのサイトも次からこうしたい・・
また、特設サイトの「Theater plan」ページではなんと舞台模型ビジュアルが公開されています。
映画の予告と違い本番のビジュアルを事前に告知できない劇団にとってこういう工夫は期待値を高めるいい効果を発揮しています。
小林賢太郎のしごと
KENTARO KOBAYASHI WORKS 小林賢太郎のしごと
僕も大好きな小林賢太郎のwebサイトで特筆すべきは、メニューの一番最初(左)に「劇場に観に行く」というページがあることです。
ここではまさに「演劇を見たことがない人向け」の情報が載っています。本当に一度も劇場に来たことがない人向けの文章がとても好印象です。
・開演の30分前から、客席に座ることができます。
これなんて、普通なら「開場は開演時間の30分前です」とかにすると思うのですが、こういう言葉遣いで相手の目線まで降りていっている感じがします。
「演劇を見たことがない人にも楽しんでもらいたい」という姿勢が伝わってきます。
もうそのまま真似たい。ちなみに劇団四季にも同じようなページがあります。
チーム夜営
こちらは僕と同じ武蔵野美術大学出身のチーム夜営さんのwebサイト。
衝撃を食らったのは公演の詳細ページをすぐに見終わることができること。
情報がかなりふるいにかけられていて1カラム(サイドメニューがない)なのに冗長にならずに済んでいる。
アホロのサイト、まだまだ情報が見づらいなと身を引き締める思いでした。
その他、基礎的なことをざっと言うなら、
- スマホファースト(pcサイトよりもスマホサイトを優先してつくりましょう)
- メニューは基本7つまで
- 過去公演の写真を載せる
- 文字色を4色以上使わない
- 次回公演がいつなのか、最新公演がいつだったのかすぐにわかるようにする(サイトの更新性)
- ドメインをとる
ぐらいはクリアしたいものです。
wixなどの無料webサイト作成ツールで劇団のwebサイトを作るのもいいですが、独自ドメインぐらいはお金を払って取得したいものです。
SNSについて
劇団のSNSとはどういうふうにあるべきでしょうか?
facebookとTwitterをやっている劇団が多いですが、どちらかというとtwitterの方が主流のように感じます。
自分なりに、あるいは劇団として、これらのツールをどう活かしていくかはしっかり意識する必要があるでしょう。
下記記事がハッとさせられます。
演劇の創客について考える/(11)Twitterは宣伝ツールではなくライフログだ、アーティストは「情熱大陸」に密着取材されている心境でつぶやこう
ここにも書いてあるように、twitterの役割は「チケット買って」とゴリ押しするのではなく、役者のアカウントと団体のアカウントをうまく使い分け、その団体・役者に興味を持ってもらうことにあるのでは、と思います。
特に、通しで上演時間が何分かかったかを事前に伝えてあげるというのはとてもいいアイデアだと思います。
また、多くの劇団のtwitterは「劇団への入り口」としてではなく「固定ファンへの掲示板」のような立ち位置になっているように思います。
webサイトの「最新情報」欄のより細かい更新ページのように。
もし「普段演劇を見ない人も取り入れたい」というのではあれば、SNSとしてバズる(たくさん拡散される)ことを狙ってもいいように思います。
バズる規則というものはweb業界ではずっと前から調べられており、こんなわかりやすい表も存在します。
動画再生数合計7000万超のプランナー直伝「バズのツボ」とは?
こういうのを駆使して「演劇」のユーザ数を確保すべく、「コンテンツがバズる」→「もとは劇団がやってるらしいよ」→「演劇見たことない」→「見に行ってみよう」の図式を作れれば最高だなと思います。
また、各種SNSをどんなユーザーが使っているのかによって対策は細かく変わってくるでしょう。しかしウチも含めてそこまで手が回っている劇団は少ないようです。
本来であれば「SNS担当」が「制作」「web担当」と別でいてもいいくらいだと思います。
テレビに出たい演劇人はたくさんいますよね。
でも今の時代はユーチューバーの例をとってもわかるように各種SNSで個人でも有名人になれる時代です。
あの手この手で演劇の裾野を広げていきましょう。
参考:【最新版】2016年9月更新。11のソーシャルメディア最新動向データまとめ
SEO対策について
最後にSEO対策について。これほんと言いたい。
SEO対策というのは平たく言えば「ネットで検索してスグ出てくるように対策すること」です。
色んな劇団の劇団名や公演名を見ていて、「SEO対策のこと何も考えてないんじゃないか」と思うものがたくさんあります。
googleで、あるワードを検索して自分たちのサイトが上位に表示されるために世のwebデザイナーやプランナー、エンジニアは日夜試行錯誤しているわけです。SEO対策だけでも結構奥深い世界なのです。
劇団名や公演名のSEO対策を考えた時、やはり「造語」が強いのです。
例えば僕がやっている団体は舞台屋アホロという名前ですが、「舞台屋アホロ」と検索しても「アホロ」と検索しても一番上に出てきます。
珍しい言葉なのでtwitterでエゴサーチ(自分の名前を検索にかけること)をしても他の別物がひっかかることが少ない。
珍しい名前にしておくとweb面で色々便利なのです。
これがもし仮に「劇団スパゲッティ」だったらどうでしょう。
相当頑張らないと「スパゲッティ」と検索しただけで「劇団スパゲッティ」が出て来るくことは難しいですよね。
googleの検索で上位に来るかどうかは「htmlの構造がちゃんとしてるか」「サイトが定期的に更新されているか」「良質なコンテンツを載せているか」など、様々な採点基準で決められています。
また、小劇場演劇業界には奇をてらった劇団名や公演名が多すぎるように感じます。
そもそも「一見しただけではなんと読むのかわからない」名前や「一般的でない漢字・英単語」などは検索しようと思ったとき無駄な労力をお客さんに強いることにならないでしょうか?
ぜひ、自分の劇団名や公演名で検索してみて下さい。一番上に狙い通りのものは来ているでしょうか?
ちなみにこのテストをする時、普通に検索してはいけません。
googleは優秀で、「自分がよく見るページ」を自動で上位に表示する機能がついているからです。
テストする時はシークレットモードを使いましょう。詳しくは下記記事を参照。
「うちのサイト最近1位が多いな」←それ実は違います。本当の順位を見る方法、教えます
最後に自分の団体のwebサイトのリンクを貼っておきます。
実はまだ修正作業の途中なのですが、レスポンシブ対応など基本的なところはカバーしていると思います。これはwordpressのオリジナルテーマを作って作られています。
まとめ
小劇場演劇業界にはそもそもweb周り、もっと言うとパソコンまわりに詳しくない人が多いと思います。
だから自分たちで立ち上げた劇団でこういうことを口うるさく言う人が一人もいない場合がほとんど。
団体の広報戦略を担うデザイナーや制作も、webサイトやSNSやSEOについて意見する、会議する習慣がそもそもこの業界にはない気がします。
映画を一つつくる上で必ずいるはずの色んな役職が小劇場演劇業界にはいない。この実態を改善していきたい。
とはいえ人材は限られている。ならば自分たちが役者や作・演出をしながらこういうことをみんなで話し合う会議を設け、動き、改善していくしかないのではと思います。
山口翔平
舞台屋アホロ作・演出・役者・広報。デザイナー・webデザイナーとして仕事をしながら舞台をやっている。武蔵野美術大学出身。脚本・演出・チラシデザイン・webサイト作成のお仕事承ります。
twitter→https://twitter.com/twishohei
デザインの仕事の事例→http://yamaguchishohei.tumblr.com/
お仕事のご依頼→yamaguchishohei93@gmail.com
舞台屋アホロ
武蔵野美術大学生が立ち上げたコメディ専門の演劇集団。テンポのいい脚本の伏線回収の気持ちよさ、美大生がつくる仕掛け満載の舞台美術などが特徴。コンセプトは「笑い8割、感動2割のアホ・ロマン・エンターテイメント」。

【次回公演】
※公演終了
舞台屋アホロ『インクに願いを』
「魔法は納品できないよ・・」
まだアニメが物珍しい時代。ある貧乏作家の絵が本当に動き出した。これをなぞって絵を描けば世界一のアニメーターになれる!しかし絵は言うことを聞かない。動くアニメを描くために、アニメを止まらせる戦いが今始まる!舞台屋アホロが贈る、アホ・アニメーション・エンターテイメント!
日時:10月29日(土)〜31日(月)(武蔵野美術大学芸術祭)
場所:武蔵野美術大学9号館309教室
公式サイト→http://butaiya-ahoro.com