舞台作品の成功と失敗の線引き

演劇・舞台芸術作品の『価値』は何で決まるのか。舞台にとって「成功か失敗か」の線引きとはどこなのでしょう。小劇場業界にはアンケートやお客さんの反応を見て公演の成功、失敗を感じている人が多いように思いますが、僕は違うと思います。

舞台作品というのは成功だったか失敗だったかの判断が難しいものです。コンクールに応募する、とか、映画祭に出品する、とかだったら授賞したかグランプリとれたかどうかで判別できるところ、小劇場演劇は自分たちで開催して盛り上がって終わり、なのでその線引きが難しい。

どんなに脚本が遅くなって初回公演がクソみたいな出来でも、千秋楽で何倍もいい出来になってカーテンコールが二回できたら打ち上げでは「最高だったね!!」となってしまうから恐ろしい。

改めて公演の「成功と失敗」の線引について客観的に考えてみました。舞台の価値は何で決まるのでしょう?

【その1】知人の評価→論外

ありそうな話から順に見ていきます。まず知人の評価。本番が終わった後に友達が言ってくれた感想。

感想を言ってくれるのは嬉しいけれど、作品の価値を測る物差しとしてはあてになりません。

知り合いに褒められて「この作品には価値があるんだ」と喜んでいるようでは論外です。友達の評価はありがたく頂戴しながら、浮かれないよう注意しましょう。

【その2】アンケート→論外

終演後にお客さんが書いてくれたアンケートを見て「いい公演だったかどうか」を判断する。これも論外。

そもそも「クソつまんなかった」という人は「こんな劇団に1秒でも使ってやるか」とアンケートなんか書かず足早に去っていく。

優しい人はその後ネットでボロクソに酷評してくださるがそういう人は少ない。だからアンケートには褒め言葉が9割5分、みたいな状況になる。偏って賛辞ばかりが並ぶ傾向にあるのでこれも「舞台が成功だったかどうか」の物差しにはならない。

いいんですよ皆さん、アンケートにボロクソ書いても。じゃなきゃ世の中の小劇場はいつまでもつまんないままなので。

【その3】動員数→まあ大事

1つの公演の全ての回の動員数の合計。合計何人のお客さんに見てもらえたか。厳密にはリピーターの方がいるので何回見てもらえたか。

その1とその2が個人による感想なのに対してこれは「数字」です。数字は大事。もし動員数が前回の120%に増えたとか、事前に決めておいた目標動員数を超えた、などがあればいい公演だったと言えるでしょうか?

ひとつの物差しにはなるかもしれませんが、成功か失敗かの線引になるかといえば答えは「NO」だと思います。

なぜなら動員数の伸びは「劇団としての成長」でしかなく、初めて来られたお客さんからすれば関係ない話です。では客観的に公演の価値は何で測ればよいのか。

【その4】売り上げ→正解

はいこれ。世の中の小劇場演劇プレイヤーに圧倒的に足りてないのはここの感覚。

みなさん売り上げをあまり重視していないのではないか。舞台を作るのにいくらかかり、それに対していくら儲け、結果手元にいくら残ったか。この金額が舞台作品の価値を測る物差しとして最も重要ではないか。

例えば、舞台美術を徹底的に削って100万円稼いだ舞台作品と、舞台美術コテコテにして時間も労力も材料費も使い倒して100万円稼いだ舞台作品なら、前者の方が価値がある。これはそうでしょう。

「赤字になっちゃったけどお客さんの反応はこれまでで一番いい!」とか全然だめだと思います。だってそれは無料でお客さんにお金プレゼントしてるのと同じだから。そりゃ喜ぶでしょう。

仮に1000人の人に見てもらえた!連日満席の大好評だった!でも赤字100万円!ってなったら、それはもう1000人の人に1000円無料で配っているのと同じことです。それって世の中のビジネスの形としておかしい。芸術作品を作る構造が根本からずれている。

つまり、「高いものを安く買えたら」お客さんは喜ぶわけで。逆に「安いものを高く買ってもらう」のがビジネスなわけで。原価60円の唐揚げを200円で売って、それでもお客さんに感謝されるのが商売のあるべき姿でしょう。

コテコテの美術費をチケットに上乗せしてチケットが高額になって同じ公演を打って、仮に同じだけ人が入ったとしても、同じ賛辞をお客さんはくれるでしょうか?くれないでしょう。

だから予算案と会計報告書とにらめっこできない役者は、公演アンケートを全部破って捨てていることに等しい。そここそ自分たちの「成果」の表れだというのに。

同じ理由で、役者は全員「チケット料金」「劇場のキャパ」「上演回数」をじっくり考えるべきです。制作に任せっきりでどうする。仮に決定権が制作にあったとしても役者はその決定をよく自覚しておくべきです。

まとめ

もちろん、売り上げ「だけ」が作品の価値ではないと思います。収益度外視で「この時代にこの場所でこの人たちがこれをやらなければならない」というアツイものづくりも世の中にはある。

でも世の中のほとんどのものづくりはそうじゃない。特に小劇場業界には「やりたいからやってる」という一番アツさから離れた場所にいる人たちが多い(本人たちはアツイのかもしれないが)。だから売り上げについてもう少しみんな口うるさくなるべきだ。

「赤字だけど最高だった」は社会的に見れば最高じゃない。「黒字だけど楽しくなかった」ですって?世の中の大抵のお仕事がそんな感じじゃないの。小劇場を映画みたいな一般的な娯楽として普及させていきたいと思うなら、この辺の価値観を変えていくべきだと思う。

僕は舞台に対して「芸術作品」というよりも「商業サービス」という言葉の方がしっくりくる。自分が関わっている舞台屋アホロは誰でも楽しめるエンターテイメントを量産する母体になりたい。

偉そうに長々と書きましたが、そんなわけでみなさん、僕、山口が出演する舞台屋アホロの作品を見た後の公演アンケートは、ぜひ賛辞だけでなく気になった所、よくなかったところも書いていただければ愛だと受け止めます。よろしくお願いします。

山口翔平

舞台屋アホロ作・演出・役者・広報。デザイナー・webデザイナーとして仕事をしながら舞台をやっている。武蔵野美術大学出身。脚本・演出・チラシデザイン・webサイト作成のお仕事承ります。
twitter→https://twitter.com/twishohei
デザインの仕事の事例→http://yamaguchishohei.tumblr.com/
お仕事のご依頼→yamaguchishohei93@gmail.com

舞台屋アホロ

武蔵野美術大学生が立ち上げたコメディ専門の演劇集団。テンポのいい脚本の伏線回収の気持ちよさ、美大生がつくる仕掛け満載の舞台美術などが特徴。コンセプトは「笑い8割、感動2割のアホ・ロマン・エンターテイメント」。

ahoro_ink

【次回公演】
舞台屋アホロ『インクに願いを』
※公演終了

「魔法は納品できないよ・・」
まだアニメが物珍しい時代。ある貧乏作家の絵が本当に動き出した。これをなぞって絵を描けば世界一のアニメーターになれる!しかし絵は言うことを聞かない。動くアニメを描くために、アニメを止まらせる戦いが今始まる!舞台屋アホロが贈る、アホ・アニメーション・エンターテイメント!

日時:10月29日(土)〜31日(月)(武蔵野美術大学芸術祭)
場所:武蔵野美術大学9号館309教室

公式サイト→http://butaiya-ahoro.com

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