「演劇の方から相手に出向いて行く」演劇活性化団体uni:阿部健一さん

物語に様々なジャンルがあるように、演劇の上演にも様々なスタイルがあります。最近では、bar公演やギャラリー公演なんて言葉を耳にする機会が増えました。そんな中「地域」に密着して演劇活動を行っている団体、それが演劇活性化団体uniです。

今回はuniがどうして今のようなスタイルになったのか、そしてそこから学んだことはなんだったのか。同劇団の代表である阿部健一さんにお話を伺ってきました!

演劇活性化団体uniとは

2010年設立。演劇団体。uniは(うに)と読む。拠点は東京都練馬区・江古田。廃工場や商店街、喫茶店といった生活に近い場所での公演を積極的に行っている。テーマは様々だが、特に「食」にこだわりを持ち、パンや牛鍋など、食べ物が直接作品のテーマになることもある。 また演劇と社会をつなげることを重視し、2013年より練馬区の「まちづくり活動団体」としても活動。2014年には地域リサーチをもとに演劇製作等を行うプロジェクト「ちょいとそこまでプロジェクト」を始動。
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阿部健一

1991年生まれ。練馬区出身。中学3年の時に演劇部に入部し演劇に触れる。高校に入学後も演劇部に3年間所属。日本大学藝術学部に入学後、高校時代の仲間を中心に「演劇活性化団体uni」を立ち上げ、空間の質感や観客の五感へのアプローチなどにこだわって演出をしている。
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劇場で公演しない劇団

今回のインタビューのため、これまでの公演情報をチェックしてみると、2013年のuni021越境演劇「よかれと思って」の公演以降、約3年間、劇場での公演をしていないことが判明しました。「劇場で公演しない劇団」その実態を掴むべく、まずはそのきっかけから聞いてみました!

始まりは岩手県

ー以前は劇場での公演も行っていたのに、2013年に何があったんですか?

阿部健一
2月に岩手県の西和賀町で開催された銀河ホール学生演劇祭(現在:雪の演劇祭)という演劇祭に参加したんです。この演劇祭は他県から来た学生劇団が町で合宿をしながら作品を作り、ホールで上演するという事業。それに僕の先輩が関わっていて、お誘いいただいたのですが、せっかく滞在するので、滞在そのものを演劇にできないかと思ったんです。
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ー滞在そのものを演劇と言うのは具体的に何をしたんですか?
阿部健一
はじめに、架空のキャラクターを作り出し、俳優がそのキャラクターに扮して西和賀町の人達と接していったんです。その様子をカメラを回して録画していって。で、本番ではその映像をホールに投影しながらキャラクター達が滞在を振り返るという発表をしました。

この時、初めて町の人たちと触れ合いながら作品を作り上げるということを経験しました。

舞台としての町の魅力

ー岩手から江古田にはどう繋がったんですか?

阿部健一
江古田の町中で行われている「江古田ユニバース」というアートプロジェクトがあるのですが、その運営に携わっている方が銀河ホール学生演劇祭で上演したものに興味を持ってくださって、その年の展覧会に「演劇団体として参加しませんか?」とご提案を頂いて参加しました。

実は、西和賀町での公演の前にも廃工場とかの劇場じゃない空間で公演することは多かったんです。僕自身が演出するにあたってこだわっていたことの一つが上演する場所の「質感」です。舞台美術だけじゃなくて例えばこの通りだったら道とか電信柱とか、上演する空間のもってる「本物」の質感を作品に取り込んでいくのも面白いと思っていて。僕にとって「町を舞台に演劇を作る」ということがすごく魅力的でした。

uniと地域

岩手での公演がきっかけとなり、江古田で町での演劇に携わり始めたuni。ここからuniの地域での演劇活動が始まります。

演劇人である前にまずは一人の人間

ー江古田ユニバースではどのようなことをされたのですか?

阿部健一
江古田には「江古田市場」という戦前からある古い市場があったんです。当時、この市場が近いうちに閉鎖するという話があって、最後に何か出来ないかと町の方から江古田ユニバースさんに提案があり、だったら江古田市場に「演劇」を持って行ってみようかという話になったんです。
ーでは、初めから演劇をやることは決まっていたんですね。
阿部健一
いえ、そういうわけではありませんでした。まず、市場や商店街の方々とご相談をして、ここで演劇をやることの了解を得る必要がありました。そこでうちの制作を中心に毎日のように市場を訪れてはきちんと挨拶をしたり、個人客として買い物をしたり、演劇人である前に一人の人間として町に関わっていきました。

ーただ公演を打つだけでなく、町とちゃんと関わることを大事にしたんですね。

阿部健一
はい。人様の空間にお邪魔しているわけなので、ただ事務的な手続きをして、やりたい公演をして自分達のやり方を振りかざすだけではダメだと思ったんです。

商いをされている方にとっては、それがどういう演劇であるかどうかより、挨拶であったり筋を通すということであったりが何よりも大切なことだったんです。それは市場の方が特別なのではなくて、人間として普通のことだと思うのですが。それをないがしろにせずに、大事にしてきたからこそ、これまでのuniの活動が出来てきたのだと思います。

uniとまちづくり

「演劇人である前に一人の人間として」。そのような想いを胸に、活動をして来たuni。そんな彼らの考える「まちづくり」とは?

「まちづくり」というフレーム

ーずばり「まちづくり」ってどんなものですか?

阿部健一
うーん…すごく難しい質問ですね。人と人とをつなげることとか、日常がちょっと違って見える機会を作ることが「uniなりのまちづくり」ですかね。

たまたま巡り合わせで「まちづくり」というフレームで色々とやらせてもらっていますが、あくまで僕は演劇の人なのでやっていることは演劇です。まちづくりのための演劇をしているというより、演劇を「まちづくり」というフレームで捉えている、という感覚です。正直ためらいも感じています。僕らはまちづくりの専門家ではないし、少なくとも演劇はすぐ結果の出る何かを提供できるわけでもない。

でも、「まちづくり」って視点で見てみたときに、演劇にできることがあったり、演劇と町の新しい関わり方も見えて来るんじゃないかなと思っています。

ーなるほど。そんな「uniなりのまちづくり」を通して、学んだことや、変化などあれば教えてください。
阿部健一
変化で言えば、私生活の食生活が大きく変わりましたね。以前と比べて食が豊かになったんです。八百屋さんでその時の旬について会話をして買ったり。それは一番大きい変化かな。

最初は公演がきっかけで利用し始めたのですが、今では私生活で街を利用する機会が増えました。そうやって色んな人と触れ合うことで、自分自身の価値観も広がっていきました。それは演劇の世界の中だけで演劇だけをやっていては得ることの出来なかったものだと思います。

地域での演劇がゴールではない

ーやはり今後も地域での演劇を続け、さらに活性化とかが目標なんでしょうか?

阿部健一
町に出た演劇活動、それだけが栄えるのがゴールだとは思っていません。

あくまで今よりももっといろんなお客さんが劇場に来るような、生活と演劇がもう少し近づくような状況が目標です。

そのためには、ただお客さんを待っているだけじゃ変わらないと思います。僕らが市場の方々交流して行ったように、まず演劇の方から相手に出向くと言うのが必要不可欠なんです。

ー確かに。ついつい待ちの姿勢になってしまう人が多いですが、それじゃあいつまで経っても先には進めないですもんね。本日はお時間頂き、どうもありがとうございました。

まとめ

「演劇を地域に馴染ませたい」みたいな話を最近よく聞きますが、その割には自分達がどうすればいいのか分からずに立ち止まっている人が多いように感じます。本当にそれを実現したいのならば、ただ待っているだけじゃダメ。阿部さんが言っていたように「演劇の方から相手に出向く」と言うことが大事なんですね。

ただ待つだけでなく、まずはその街のことを、相手のことをちゃんと知ることから始めてみましょう。そうすることできっと自分達に出来ることなど、新たな可能性が見つかるはずですよ。

新メンバー募集

演劇活性化団体uniでは、現在新メンバーを募集しています。募集内容は以下の通りです。

  • 制作(企画立案、公演マネジメント、広報…)
  • 俳優 ほか

締切:2016年9月24日(土) 詳しくは以下のリンクをご覧ください。
http://uni-theatre.jimdo.com/recruitment/

初秋の集い

夏の終わり、いくつかの小さな集まりを開催します。専門を越えて交流できる機会になればと思います。たくさんのご参加お待ちしております。
内容は以下の通りです。

  • 山﨑明史ワークショップ(8月26日)
  • 夏の集中定例稽古(8月27日〜29日、31日)
  • 白露のuniごはん会(9月10日)

以下のリンクから申し込むことができます。
http://uni-theatre.jimdo.com/news/


第二回しばいのまちオフ会開催!



10/28(土)13:00〜開催!