こんにちは。くによし組という団体の主宰をしております、國吉咲貴と申します。再び記事を書かせていただけました。
前回は人見知りでコミュニケーション下手な私の日常で起こる問題をご紹介しましたが、今回はその問題に対する私なりの処世術をご紹介したいと思います。私の中での解決策なので、解決してないじゃん、と思われるかもしれません。
ケース1:劇場下見
小屋主さんの視線に耐えられず10分~15分で済ませてしまった劇場下見。そのため実寸や捌け口は劇場のホームページで確認します。もうこの時点で下見に行った意味はありません。
稽古では役者さんやスタッフさんから、アクティングスペースはどのくらいか、舞台と客席の距離はどのくらいかなど聞かれます。ですが劇場の雰囲気しか掴めてない私は「まだちょっとわからないのですが・・」と曖昧な返事をします。すると皆さん、なんでやねんという表情をします。ときには「なんでやねん」と言う方もいます。こんなとき、私は得意のそれらしいことを言います。
「長さとか出捌けとか、そういうもので固めたくないんです。場所によって変わる作品にしたいんです」
このそれらしいことを言うと、くによし組に出演してくださる方は大抵納得してくれます。納得というよりかは妥協や諦めに近いですが、「くによし組だからな・・」という理由で落ち着いてくれます。
「くによし組だからな・・」これは「不景気だからな・・」「21世紀だからな・・」等と同じくらいの効果を生み出します。私が出演者の方と同じ立場なら「は?」となりますが、そこで何も言わない出演者の皆さんは本当に優しいと思います。皆さんに感謝しつつ、いつか実寸を測れる人間になりたいです。
ケース2:稽古場
稽古が始まり、まあまあ役者さん方とも打ち解けて来たとき、稽古場からトイレへの廊下は私にとって敵になります。すれ違うときの挨拶。「お疲れ様です」なのか、会釈でいいのか、それとも「あ、髪切りました?竹野内豊みたい!」のような気のきいた会話をするべきなのか。
まず気のきいた会話は私のスペックでは出来ません。どうするべきか。どうしたら他人行儀でも失礼でもなくいけるのか。考えて考えて考え抜き見つけた方法が、とても小さな声で「すいません」と言いながら会釈をする。というものです。
これをすると、「お疲れ様です」にも聞こえるし、何かを言っていることもわかり、尚且つ「すいません」と聞こえた場合でも「よく謝れる子だなぁ」と、あまり悪い印象を与えずに済みます。そして稽古場では先程のすみませんは無かったように過ごせば、出演者の方たちと仲良くなる一方なのです。
ですが本当は願わくばこんなこと考えずに廊下をすれ違えるようになりたいです。
ケース3:初日打ち上げ
打ち上げなどの飲み会が苦手な私ですが、こればっかりは解決策などはありません。相槌を打ちすぎて気持ち悪くなったり、「そんなつまらなそうな顔しなくても」と言われたりするのは毎度のことです。
ですがせっかくの交流の場が苦痛では勿体ない。そこで思い付いた術が、妄想することです。現実逃避ではありません。飲みの場を楽しくするための+アルファ、お酒のつまみのようなものです。
例えば
- さっきから出演者の○○さん、めっちゃ私のこと見てるけど、私のこと好きなんじゃないかしら・・
- え、あの人とあの人話し過ぎじゃない?付き合ってんの?
- あれ、柿ピーのピーが全然ない。この中にピーばっか食べてるピー好きがいる・・?
- てかさっきからスタッフの○○さん、私のことめっちゃ見てるけどもしかして私のこと・・
など、頭の中で様々なドラマを作り出すことにより、飲み会なんてあっという間に終わってしまいます。「舞台は美味い酒を飲むためにやってる」という方が居ますが、出来ればいつかは私もそんな人になりたいです。
ケース4:友達
友達というのは色々な形があり、友達=芝居を観に来てくれるわけではないのだなということが、ここ最近やっとわかってきました。
私の芝居より嵐のライブ。
私の作品より嵐のライブ。
國吉 < 嵐
私は何一つ嵐に勝ってない、ということも痛感しました。じゃあどうするかというと、“気にしない”。結局は気にしないしかないんじゃないかなと思うようになりました。
好き嫌いばっかりは私にはどうにもならないので、私の作品に友達が来たいと思えなかったということは、来たいと思うものじゃなかったのだな、と納得するようになりました。くによし組の作品がシュールコメディから急にスタイリッシュで歌とダンスのあるイケメン大集合な物になっても、それは私の作りたい物じゃないなと思いますし、作れないなとも思います。作れたら大したもんです。
私の好きな物を追及していって、いつか嵐ファンの友達も私の作品を観たいと思ってくれて、観てくれて、「面白かった」と思ってもらえるよう、頑張っていきたいです。
最後に
ここまでお読みくださりありがとうございました。2回も記事を書かせていただけて、感無量です。
生きるのが下手な私の演劇業界の生き方、というテーマで書きましたが、生きるのが下手と言えば、9月の27日から上演するくによし組の「アキラ君は老け顔」という作品は、生きるのが下手な人たちばかりが出てくる作品です。こんな人居るな、こんな人居るんだな、こんな人居てもいいな、と不器用な人たちを観に来ていただけましたら幸いです。
この記事を読んでいるあなたと、劇場でお会い出来ますよう、心より願っております。
國吉咲貴
1991年生まれ。20歳で演劇の世界に飛び込む。くによし組の主宰であり、同劇団の作品の脚本・演出を手がけ、女優としても活動している。
くによし組
2014年設立。当初は國吉さん1人で活動していたが、2015年に音多衣子、永井一信が劇団員として加入。現在は3人で活動を行っている。
ホームページ:http://kuniyoshigumi.jimdo.com/
Twitter:@kuniyoshiiiiiii
公演情報
※公演終了
くによし組「アキラ君は老け顔」
◼︎日程:2016年9月27日〜10月2日
◼︎会場:小劇場「楽園」
◼︎「アキラ君は老け顔」詳細・予約ページ