生きるのが下手な私の演劇業界の生き方~日常編~

くによし組

初めまして、國吉咲貴と申します。くによし組という劇団のようなものの主宰をしております。

物心ついたときから人見知りで「あの」と言えば「え?」と聞き返されるくらいの小声なので、よく演劇やってるね、とたくさん言われてきました。

今回はそんな私の日常を赤裸々に書かせていただきたいと思います。こんな奴でも演劇やってんだな、と安心してもらえましたら幸いです。

ケース1:劇場下見

劇場の下見に行きますと、まず小屋主さんと初対面をします。

緊張して「あ」とか「う」とか言いながら猫も驚く程の猫背で自分の名を名乗ると、小屋主さんが大体の使い方の説明をしてくれます。そのあとに訪れるのが「自由に見て下さい」時間です。

「自由に見て下さい」これを言われると、私は困り果ててしまいます。
一体どこを見たらいいのか。小屋主さんは私を気遣って言ってくれてるのはわかるのですが、劇場に合わせて話を書くのが好きな私はこれから話を書くので、見るべき場所がわかりません。

舞台の長さとか測ればいいのだろうか・・客席からの見え方とかを確認すればいいのか・・?何をしたらいいのかわからず劇場内をウロウロしているとどうしても小屋主さんの視線が気になってしまいます。

私は試されているんじゃないだろうか・・ちゃんと下見が出来て、ちゃんと公演を打てる主宰かどうか、見極められてるんじゃないだろうか・・

そんなことをぐるぐると考えてしまい、「あ、楽屋意外と広いですね」「トイレ二つあるんですか、便利ー」など、別に言わなくても良いようなことを言って顔色を窺ってしまう始末です。

耐えられなくなり、15分もかからずにお礼を言って劇場を出てきてしまうのがいつもの流れ。実寸や出捌けの場所がわからないまま稽古に入るのが毎回なので、小屋主さんの視線に耐えられるようになる、というのが目先の目標です。

ケース2:稽古場

稽古が始まると、役者さんやスタッフさんと稽古場でお会いすることになるのですが、毎回困るのが休憩中のトイレへの廊下です。部屋からトイレに行くまでの廊下で役者さん、もしくはスタッフさんとすれ違ったとき、挨拶をするべきか否かで毎回悩みながら歩きます。

さっきまで稽古でわいわいと話していたのに、廊下で1対1になった途端に押し寄せる“私達は他人だ”という空気に戸惑い「お疲れ様です」と言うべきなのかどうなのかという気持ちになります。

挨拶しちまえばいいじゃないかと思う方もいるかもしれませんが、稽古場で積み重ねた仲良くなりつつある関係が、廊下ですれ違ったときの「お疲れ様です」でゼロに戻されてしまう気がして仕方ないのです。他に気の利いたことをすれ違い様に言えるような技術も度胸もなく、悩んで悩んで悩みすぎてお腹が痛くなります。

ケース3:初日打ち上げ

稽古を重ね、やっと迎えた本番初日。私はいつも「初日打ち上げ」という儀式に困惑します。まだ公演が終わってないのにお酒を飲まなきゃいけない・・。

お酒と説教が嫌いな私には飲みの席は修行の場としてしか捉えることが出来ません。社会勉強だ、これは立派な大人になるための修行だ、と思いながら飲み会に参加します。なので私の劇団では打ち上げや飲み会をほとんどしないのですが、客演としてやスタッフとして団体さんに参加したときに訪れる初日打ち上げは、飲めないビールを片手に固まります。

「お疲れ様でした」「千秋楽までお願いします」など、気合いを入れる言葉と「乾杯!」の掛け声で一斉に動き始める皆さん。私は全ての人と滞りなく乾杯をするというミッションを背負ったプレイヤーなのだ、と気持ちを切り替えます。さっき皆で乾杯って言ったじゃん、とかは思ってはいけません。

一人ひとりと乾杯しなくては・・と動き出しても、人並みに流され中々思うように進めません。
他の方と言ったら動きは素早く乾杯は手際よく、NASAかどこかで訓練を受けたのではと思うほどに完璧で、自分との力量の差にますます足がすくみます。

結局私は全体の3分の2くらいの方達としか乾杯出来ずに乾杯時間は終わります。そう、乾杯時間は終わるんです。最初の乾杯の波に乗った人達が全ての人と乾杯をし、定位置に着いて持っていたコップの中身を飲む。

ここで乾杯の波は終わります。これより後に乾杯に向かうと、もう仲の良い人同士でお話し始めていたり、お菓子の袋を開けていたりして、空気の読めない人になってしまうのです。

全ての人と乾杯も出来ず、仲の良い役者さんもいない、やっと話せたスタッフさんとも話が続かない。1時間もやらない初日打ち上げを永遠に感じ、自分のコミュニケーション力の無さにがっかりするのが私の初日です。そしてこれは打ち上げでも一緒なので、私の公演はがっかりで始まりがっかりで終わります。

ケース4:友達

演劇には脚本、演出、芝居、舞台美術、音楽や照明、必要なものがたくさんありますが、私は一番大事なのは“お客さん”だと思います。どんなに面白いものを作っても、観てもらわないと意味がない。

色んな方に宣伝をしますが、ここで思うのが友達っていいな、です。友達の多い方が羨ましいこと羨ましいこと。有名人も出ない、著名な作家が書いたわけでも、人気劇団の公演でもない場合、一番にご予約をくださるお客様は親戚と友達です。

幼い頃からノリが悪くテレビや漫画も読まずに習い事と折り紙を破くことに熱中していた私には友達が居ませんでした。ですが大学で出会った女の子5人とは、女子会をやったり誕生日メールを貰ったりと「あ、これ友達だな」と思う瞬間がたくさんありました。

私が自分で初めて脚本演出をする公演は、皆に見てほしい。だって友達だもん!なんて、遅れてやってきた青春に酔いしれてる私は皆に連絡をしました。

数日後返ってきた返事はどれも行けないという連絡でした。皆用事があるようで、次は行きたい、という内容。観てもらえないのを残念に思いながらも本番を迎え、あっという間に初めての公演は終わり、一段落して開いたフェイスブック。

そこには公演初日に嵐のコンサートに行っている彼女たちの投稿がありました。お揃いのTシャツやキラキラのうちわを持った楽しそうな“友達”。

そのとき思いました。

「嵐に勝とう・・」

大学に入学したばかりのオリエンテーションで彼女たちに初めて聞かれた質問を思い出しました。「ねえねえ、嵐の中で誰が好き?」

あのときからこうなることは決まっていたのかもしれません。自分の作品と嵐のコンサート、どっちが面白いかと聞かれたらそれは好みですとしか言えません。彼女たちがそれ以降も私の作品を観に来てくれたことはありません。それは私の作品が観たいと思えないからで、私の作品に時間と二、三千円使うなら嵐のコンサートに片道3時間と一万円かける方がマシだということなんだろうな、と痛感します。

そのときの私は「皆が嵐のライブに行ってることに私が気付いていることがわかったら、皆が気を使ってしまう・・」と思い、フェイスブックの投稿にコメントやいいねをすることもできないまま、スマホの電源を消しました。“知り合いが観たくなる公演”をまずは作れるよう、日々精進していきたいと思います。

生きるのが下手な私の日常、ここまでお読み下さりありがとうございました。この記事を読んでくださったあなた様と劇場でお会い出来ることを心より願っております。

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國吉咲貴
1991年生まれ。20歳で演劇の世界に飛び込む。くによし組の主宰であり、同劇団の作品の脚本・演出を手がけ、女優としても活動している。

くによし組
2014年設立。当初は國吉さん1人で活動していたが、2015年に音多衣子、永井一信が劇団員として加入。現在は3人で活動を行っている。
ホームページ:http://kuniyoshigumi.jimdo.com/
Twitter:@kuniyoshiiiiiii

公演情報

※公演終了
くによし組「アキラ君は老け顔」
◼︎日程:2016年9月27日〜10月2日
◼︎会場:小劇場「楽園」
◼︎「アキラ君は老け顔」詳細・予約ページ
アキラくんは老け顔

くによし組


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