舞台照明家の仕事とは

「照明」と検索するとインテリア関連の企業や商品がたくさん出てきます。そういう企業の営業だったり企画開発に携わる人も広義では「照明さん」と言えるかもしれません。

ですが映像や舞台の世界での「照明さん」と言うと、裏方のイメージが先行してその仕事内容まではなかなか想像できないと思います。

実際には映像と舞台の照明では別物だったりするのですが、ここではあくまでも小劇場演劇における照明家の仕事について紹介していきます。

照明にはプランナーとオペレーターがいる

照明には大きく分けて2つのポジションがあります。それがプランナーとオペレーターです。

プランナー

プランナーは舞台照明の設計者です。どんな明かりをどこに当てるか、そのためにどの機材をどこに仕込むか。そんなことを考えて仕込み図を作成していきます。

仕込図とは設計図のようなものです。仕込図を作成する上で必要なことはたくさんあります。台本を読んだり、通し稽古を観たり、演出や他のスタッフと打ち合わせをしたり、etc……

また大体プランナーが現場チーフとなり、劇場小屋入り後の照明チームの統括をして、仕込図通りになるべく迅速に仕込んでいくこととなります。現場では「時間」が何よりも貴重なのです。

オペレーター

オペレーターはプランナーのプラン通りに本番で照明操作をする人のことです。

ちなみに小劇場だとプランナーがオペレーターを兼ねることも多々あります。

規模にもよりますが、プランナー・オペレーターと仕込みバラシの増員2名程度の合計4人くらいが照明チームとして公演に携わります。

小屋入りまでの仕事

仕事の依頼を受けても、すぐにやることはありません。予算に応じて知り合いの照明さんに仕込・バラシの増員をお願いして日程を押さえておくくらいです。全く知らない劇場だったら下見に行くこともあります。劇場付帯の機材も確認し、図面を入手しておきましょう。

台本をもらってから

台本をもらって(読んで)通し稽古を観た上で、演出や舞台監督との打合せとなります。
ここで舞台美術が確認出来て、演出の意向や要望を聞けば、仕込図の作成に取り掛かることができます。

同時に照明機材の手配(レンタル)や必要な消耗品の補充、仕込・バラシ増員の追加、仕込日の段取りを打合せたり、搬入の車の手配をしたり、必要に応じて稽古場に足を運んだりと、一気に忙しくなります。

そうした上で、仕込図が出来たら劇場に送付した上で簡単に打ち合わせをします。

もしも台本がなかったら…

台本がなかったり舞台美術が決まってない状態でいくら仕込み図を作っても、変更や修正が必要になる可能性が非常に高く、二度手間になってしまいます。

ただ劇団によっては直前までいろいろ決定しない場合があり、その時は見切り発車になることもあります。

仕込図作成

仕込図には色々な記号や数字が書き込まれています。その全てが仕込で必要な情報です。なので仕込図が読み取れないと照明さんとして役に立ちません。(もちろんそれ以外にも必要な技術や知識はありますが)
間違えた仕込みは時間のロスだけでなく事故にも繋がりかねないので、仕込図自体わかりやすく書くことも必要です。

最近はPCを使う照明さんがほとんどですが、昔は手書きの書き殴ったような仕込み図を解読する所から始めなければならなかったりしたものです。

Point
もし仕込みやバラシで、劇団の役者さんがヘルプに入ってくれるようなら、仕込図面の必要がない機材の運搬や受け渡しを、逐次指示して手伝ってもらいます。

照明は予算配分に気をつける

機材のレンタル・増員の手配などお金で解決できることは多々あります。機材が増えれば無論できることが多くなります。しかし仕込みにもバラシにも時間がかかるようになります。何度も言うようですが、現場では時間が何よりも貴重です。

見極めが大事

人がいれば時間が短縮できるのですが、結局またお金(人件費)がかかります。劇団に潤沢な資金があれば話は別ですが、もらった予算(ギャラ)との兼ね合いで不可能なことも残念ながらたくさん出てきます。

なので、そのあたりの見極めを間違うと痛い目にあいます。例えば物量に対して少数の人員で苦戦したり、自腹を切ったり……。それでも断れないこともあるんですよねぇ。

小屋入りしてから

事故に気を付けて、まず仕込図通りに吊り込んで回路をとっていきます。時間との戦いです。仕込み終わったら昼休憩を挟んでシュートになります。

仕込・シュートまで終わったら仕込増員の仕事はほぼ終わりで、後は手直しがあるときに手伝うくらいです。

Point
シュートとは吊り込んだ照明のフォーカスや狙いを合わせる作業のことです。

その後、明かり作り⇒場当たり⇒ゲネプロ⇒本番といった流れで進んでいくことが多いと思います。

明かり作りが終わるとプランナーの仕事はほぼ終了となり、オペレーターの出番となります。

なんとかなるなる

公演初日が開けるとプランナーは現場にいないことが多いです。オペレーターは修正・変更の対応をしたり、トラブル対応をしたり、なにかと厄介なことに巻き込まれることがあります。

例えば本番中に電球が切れて灯体が一つ点かないなんてことは、日常茶飯事です。そこだけ暗くなってしまいますが、電球は消耗品だから仕方がないのです。

でも役者は虫と同じなので、灯りに寄ってきます。別の明るい方へと本能的に寄ってくるものです。乱暴な言い方ですが、そんな感じで大概のことは何とかなります。
小劇場演劇においては想像の斜め上を行く事が起こったりしますが、大概のことは何とかなります。後日のいい笑い話です。

舞台照明家に限らないかもしれませんが、そうした経験をたくさん積んでいくこと・場数をこなすことが、仕事の質の向上につながっていくと思って頑張るのみです。

バラシとその後

ここで述べるのも意地の悪い話ですが、バラシて原状復帰するということは、小屋入りした最初の状態を覚えておかないといけないということです。

原状復帰はどの劇場でも基本的な大前提ですので、最初の状態を覚えておくように心がけます。バラシ増員が仕込み増員と別の人の場合はなおさらです。

劇場の機材と持ち込んだ機材が間違いなく元通りであることを確認したら、搬出して退館となります。ちなみにバラシの時も時間は貴重です。

最後にタイミングや方法は人によって違うかもしれませんが、増員に来てもらった照明さんにギャラを支払います。その日に現金で支払うか、後日振り込みか。

予算がないからといってボランティアばかり頼むわけにはいきません。自分が増員に呼ばれた時のことを考えれば当たり前の話です。

まとめ

舞台照明は基本的に「照明効果」であって、主役ではありません。演出家の求める明かりを作り出し、役者をより良く観せる。舞台の時間軸・空間軸をわかりやすく表現する。そういった表現のための方法を照明という手段で担っているのです。

その上で一番効果的な方法を、お金と相談しながら考え実行していくのです。
抽象的ゆえに照明に正解はありません。

「基本を押さえた上での個性(好み)」ここに照明家の仕事の面白味があるのかもしれません。


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