【連載企画】第3回:演劇を20年続ける方法(時間堂・黒澤世莉)

黒澤世莉です。連載も3回目です。いつもご愛読ありがとうございます。え、はじめて読むって?そんなあなた、今後ともどうぞご贔屓に。

さて、時間堂という劇団を19年間続けてきました。次回7/29~31に上演する『ゾーヤ・ペーリツのアパート』で27回目の本公演となります。その他、企画物やレパートリーシアターを含めれば、40回近く劇団公演をうってきました。作品をたずさえて札幌、仙台、利賀、静岡、津、大阪、福岡に行きしましたし、十色庵という劇団のスタジオも作りました。

おそらく私も時間堂も、外から見たら「演劇界で成功している」とみなされるんだと思います。その内実はいつも必死の綱渡りです。

とはいえ、必死の綱渡りでも、続けられたことは事実です。いま、演劇を続けるか止めるかとか、劇団が上手くいかないとか、そういうことで悩んでいる方もいらっしゃると思います。そういう皆様に、私が19年間演劇を続けてきたやり方が、なにかのヒントになったらいいなあ、という気持ちで、この先の文章は書きます。

第1回:若い演劇人へのエールと叱責
第2回:演劇の流行り廃り
第4回:家族と演劇

無理に続けない

「演劇活動を継続する」最大のコツは「演劇活動を継続させようとしない」ことだと思います。

私の場合は「演劇がんばらないと」ってこだわると、それがストレスになって嫌になってしまうんですね。だから「嫌になったらやめればいいや」くらいの、軽い気持ちでやっています。そうするとしんどいときも「嫌になったらやめれば良いのだし、もう少し続けてみようかしら」なんて考えられたりします。

無責任に思えるかもしれませんが、余計なストレスを抱えてパフォーマンスが発揮できない方がよっぽど無責任だと思います。そもそも演劇活動は、誰かに頼まれて始めるものではないでしょう。(稀に「君こそスターだ」とか言われてはじめる方もいらっしゃるかもしれませんが。)自分でやりたいことなのだから、自分のやりたいように、やればいいのです。

それで、他人から認められるかどうか、他の作家より優れた演劇的成果を出せるかは、また別のお話。ただ、やたらがんばってる人は、演劇を頑張ること自体が楽しいから、より頑張れているのです。やるっていった責任感とか、競争に勝つためにとか、言われたことだから頑張ろうとか、そんなモチベーションは長時間持続しないものです。

演劇を続けることの難しさの1つは、上記のようにモチベーションの維持にあります。もう1つは、経済的に成立しにくく、キャリア形成が困難で、生業にする方法が確立されていないという点です。もう1つは周囲の理解を得ることが難しいということですが、20年前ならともかく、今はそれほど問題にならないんじゃないかと思います。

芸術的成果かお金の成果を出す

いずれにせよ、個々人の演劇活動の継続が難しいのだから、劇団の維持はそれ以上に困難です。事実、たいていの劇団が3~5年で消えていきます。なんなら旗揚げ公演の打上したらもう解散、なんてケースも少なくありません。多くの劇団が、関係者のモチベーションを維持できていません。また、経済的に自立もしてませんし、むしろお金払って演劇するような場合も多いですし、当然将来に向けてのキャリアパスを持ってもいません。

分かりやすく言えば「やる気」と「お金」が尽きるのが3~5年てことですね。それを打ち破るには「やる気」が持続するくらいの芸術的成果を上げるか、「お金」が他のお仕事と同様に稼げるようになるかです。時間堂の場合は、芸術的成果が上がっている、と私が思い込んでいたから続けていたんでしょうね。

仲間はちょっとずつ増やす

仮に、継続できたとして、演劇活動の継続のために気をつけるべき点は他にもあります。

長期間続く集団で考えられる問題は「人の数が増えすぎて問題が起こる」です。もちろん1,000人のスタッフを動かしたいということが芸術的に重要ならば、それも仕方ありません。がんばって乗り越えてください。

私のケースで言えば、時間堂はずっと12年ほど一人劇団でした。それから4人の劇団員に入ってもらい、一度全員抜け、1人に戻り、それからまた、5人の俳優に入ってもらい、いまのかたちになりました。それが2009年のことです。時間堂の設立が1997年ですから、ほぼ12年間はソロ活動だったということです。

一人でやっていた理由は「どんな演劇をやりたいか分からなかった」ということと「他人の人生に責任を取りたくなかった」の二つです。12年活動を続けたことで、どんな演劇を志向しているのか自分でも分かったし、むしろ人がいないとできない活動かな、て思うようになりました。

ですから、一人ではじめて、拡げたくなったら拡げるというのも方法だと思います。一人での演劇活動の継続は、それはそれで難しいところもありますが、そもそも一人なら解散しようがありません。解散とは、複数の人間が別れることを指すので。人数を絞って活動することで、集団の寿命を伸ばすことができるかなとは思います。

燃え尽きる前に休む

そして最後に、演劇活動を継続させる上で、一番重要だと思うことを書きます。

ユハ・マケラさんという方がいます。元フィンランド国立芸術劇場の芸術監督で、俳優・演出家です。ユハさんと話していて言われたのは「世莉、燃え尽きるなよ」ということでした。

たとえ演劇活動だけで生活出来たとしても、芸術活動は激しいものです。一般の方には分からない消耗の仕方をします。ましてや、芸術活動と並行しつつ、アルバイトや会社員を続けているとしたら、過労にならないほうがおかしいです。

もちろん頑張るのが楽しい、ていう状態であれば心配はありません。ただ、頑張ることが苦しくなったり「あれ、なんで俺コレやってるんだろう」て立ち止まりたくなるときは、必ずあります。私たちはロボットではない、身体が疲れれば心も弱くなる時がある、人間ですから。

そういう疲れたとき、あるいは疲れたと自覚していなくても、周りから「最近ちょっと変だよ?」と言われたようなとき。そういうときに「しっかり休む勇気」を持ってください。

私の経験上、演劇はあなたを裏切りません。きちんと待っていてくれます。だから、燃え尽きる前に、ギブアップしましょう。そして長期休暇を取りましょう。

ま、そういうわけで、私みたいないい加減なやつが生き残ってしまうわけです。真面目な人は燃え尽きてしまいがちですからねえ。いや、私なんかより全然真面目で生き残ってる人ももちろん大勢いますけど。

腹割って話せる相手を見つける

あとは、おまけ。「腹割って相談できる相手」を探しましょう。芸術活動は孤独な営みではありますが、自分の中だけで悶々と悩んでいることが、人と話したら「あれ、そんな大した問題じゃないかも」て気づくような場合は多々あります。もちろん同期と仲良くするのも結構なことですが、同じ視点ばかりで話していてもなかなか解決しないことってあります。先輩や師匠を見つけることをオススメします。

「腹割って話す」ていうのは、たんに愚痴をグチグチ言う、だけでなく「自分は何を問題と思っているのか」ていうことを正直に話すことだと思います。それは別に間違っていても理不尽でも良くって、「誰かに話す」ということ自体が、あなたの情緒を安定させ、論理はその問題をどう解決しようかと自然と働き始めるものです。

たいていの先輩や師匠は、あなたと同じような悩みや嘆きをくぐり抜けていますから、たとえあなたが間違ったことで憤っていたとしても「まあ、そういうこともあるよねえ」と受け止めてくれるだろうと思います。

人間だから間違えることもあるんですよ。そういうことに寛容な人生の先輩は、本当に大事にした方がいいです。いない?じゃあがんばって探せ。

とある演劇学校の謝恩会で、とある有名演出家が「君たちはいま演劇に関していろいろと悩んでいることだろうと思いますが、大丈夫です。その悩みは一生解決せず付きまとってきますから」とおっしゃっていて、いやほんとそうだよなあ、て思いました。

自分が成長した分だけ、問題も大きくなったりします。そういうタフな演劇ライフに、正面からばっかりぶつかってると死んじゃうので、うまいこと自分をまやかしながら、長い目でのんびり進んでいってください。

というわけで、20年続ける方法を考えてみました。

・無理に続けない
・芸術的成果かお金の成果を出す
・仲間はちょっとずつ増やす
・燃え尽きる前に休む
・腹割って話せる相手を見つける

あなたの活動のお役に立てば、幸いです。

<筆者について>
黒澤世莉
1976年、東京都生まれ。創立20週年を迎える時間堂の主宰であり演出家。スタニスラフスキーとサンフォードマイズナーを学び、1996年、時間堂として活動を開始、主に演出と執筆、翻訳を手掛ける。TGR札幌劇場祭作品賞、佐藤佐吉賞優秀作品賞、演出賞受賞。


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