演劇動画配信サービス「観劇三昧」の生みの親、福井氏インタビュー「表現者の未来をつくる」とは?

ネクステージ福井さんインタビュー

演劇の地位を向上させたい。より多くの人に観てもらうようにしたい。演劇人なら誰もが望んでいることでしょう。しかし、それを本気で達成するためには超えるべき壁は高く、問題も山積みの様に見えます。

それでも、本気で演劇を世の中に広めるべく、「表現者の未来をつくる」という理念を掲げて立ち上がり、その圧倒的な熱量と確かな活動により、急成長を遂げている会社が、演劇の動画配信サービス「観劇三昧」を提供する株式会社ネクステージです。

今回は代表取締役、福井さんにお話を聞いてきました。

観劇三昧、福井さんについて

観劇三昧について

株式会社ネクステージが提供する動画配信サービス。パソコンやスマートフォン等で、自分の好きな演劇の動画を、月額980円で好きなだけ観ることができる。現在公開中のタイトルは400作品以上。動画の再生回数に応じて劇団に収益を分配する仕組みとなっている。
演劇動画配信サービス「観劇三昧」

福井 学

1981年生まれ。大阪府出身。大手の家電販売店勤務を経て、24歳の時に独立しITの開発会社を立ち上げる。友人に誘われた観劇をきっかけに年300本以上の公演を観る様になる。観劇をする中で知り合った劇団や俳優が抱える課題を解決すべく、2014年に株式会社ネクステージを立ち上げる。
株式会社ネクステージ

立ち上げの背景

ーどういう背景でそもそも観劇三昧というのはじまったのですか?
福井さん(以下敬称略):私の経歴から話すと、もともとは大手家電量販店で営業をしていて、全国のTOP5に入るくらいの成績でした。このまま続けても面白くないなと思って、24歳で独立しました。そこからITの開発会社をずっとやっていましたが、2009年にリーマン・ショックの煽りを受けて、お世話になった取引先がバンバン倒産していき、そしてとうとう自社も廃業するかどうかの危機に追い込まれました。

そんな大変な時期に、たまたま友人に演劇に連れて行ってもらったんです。その時見た演劇から勇気をもらい、なんとか頑張ろうという気持になりました。その後、すぐ取引先に頭を下げにいき、なんとか会社を存続させることができました。

そこから年300本位演劇を観ることになり、業界の友人が増えていく中で、公演でいくら集客してもそれだけでは生活をしていけないという彼らの課題に気づきました。そこで2013年に、観劇三昧の事業を開始をしました。

ー観劇三昧とは、どういったサービスなのですか?
福井:月額980円で登録されている公演の動画が見放題になるサービスです。予定が合わず見逃した公演を見れたり、障害を抱えて劇場に足を運べない人でも演劇を楽しむことができます。月額使用料の一部を、動画の視聴数に応じて劇団にバックするレベニューシェアの仕組みで運営しています。

劇団にとってはチケット収入以外の新たな収益源を得ることが出来ますし、より多くの人に公演を見てもらう機会を得ることもできます。既に観劇三昧経由で月十万円ほどの収益を得ている劇団もいます。

ー公演以外の収益が得られるのは劇団にとっては非常に大きいですね。動画コンテンツはどの様に集めているのですか?
福井:スタッフが地道に全国をまわり、劇団と直接交渉して集めています。

大手企業は事業スピードを優先するあまり、うちの様な地道な活動が出来ないため、演劇動画コンテンツの数は、観劇三昧が最も充実しています。現在400タイトル程ですが、今年中に700タイトルを目標にしています。

理念に沿わないことはやらない

福井:私たちは「表現者の未来をつくる」という経営理念を掲げて、そのための活動に全力を注いでいます。

ー表現者の未来をつくる、とは具体的にはどういうことでしょうか?
福井:音楽、映画、絵画と同じ様に「生活の中の芸術」として、演劇が普通に、皆の側にある様な世界にしたいんです。生活の中に入っていくためにはうちの様な企業が主導してその環境を作り上げていく必要があると考えています。

なので、「表現者の未来をつくる」という理念に沿わない活動は、いくら儲かりそうでも決して自社ではやりません。

ーなるほど。劇団がなかなか取り組めない部分を、あえて外側から企業が行うのですね。
福井:演劇の外からも、演劇というものを広げる支援はたくさんあったほうが良いと思っていますし、それは企業だからこそスピード感のある展開や、スケールを大きく取り組めると考えています。

現状、公演だけでお金を生み出せないなら、演劇の外から引っ張ってくれば良い。そこの仕組みをうちの会社が作っていければ良いと思っています。もちろん、演劇の市場を育てるために、自社もしっかりとビジネスとして利益を出しながらというのが前提です。

あきらめない精神

ー本当にここまでの熱い想いを持って事業に取り組んでいる方は、ベンチャー企業等でもあまり見かけない様な気がします。サービスは順調に伸びていったのですか?

福井:いや。それなりに苦労はありました。過去には投資を受けようとして、様々な企業を周りましたが24社回って、全て断られ続けたこともあります。

どれだけ演劇や自社サービスの可能性を訴えても「演劇知らないんです」、「よく分からないからいいです」と言って断られたり、それこそ全く話も聞いてくれないところもありました。それでも23社目にプレゼンした会社の担当者に、後日再びプレゼンする機会を頂き、25回目のプレゼンにして、やっと資金調達をできました。

ーそこまでしても、あきらめない福井さんの情熱は本当にすごいですね

福井:いやぁ。でも、断られるなかで、自分なりにブラッシュアップを重ねていったんです。

やはり企業に自分たちの事業を信じて投資してもらうためには、情熱も大事ですが、数字の裏付けなどがとても重要になってきます。演劇という市場に関して、自分の足や手を動かして集めた情報をしっかりと付け加え、事業計画の裏付けを作りました。今では「数字で語れないなら、言葉として捨てる必要がある」とも思っています。

そこまでして「演劇ってこんなに可能性があるんだよ。面白いんだよ」と伝えて、少しでも興味を持ってもらえたら、もうこっちのものです。

ーそこまでしてやっと、演劇の業界を変えていく一歩を踏み出せるんですね

福井:私自身が演劇に勇気をもらったから、演劇に恩返しをしたいんです。自分が動くことで、世の中や演劇を変えられるかもしれない。起業家として、その可能性を感じられているからこそ、この事業をやっていてとても楽しいんです。

まとめ

「熱い」というのがお話を伺ったときの福井さんに抱いた率直な印象です。強い想いを持ち、冷静な分析もしっかりとしたうえで、周りを巻き込みながら全力で動いている福井さんは、まさに「起業家」という感じの方でした。

多くの人が無理だと思っている課題に対して、全力で望んでいく福井さんの姿にたくさんのパワーと勇気を頂きました。また、相手を包み込む柔らかな雰囲気も持っている方でしたので、お話を伺っていてとても心地が良かったです。

お時間を頂き、どうもありがとうございました。

<観劇三昧>
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