花まる学習会王子小劇場、佐藤孝治氏に聞く「演劇人の可能性」とは?

演劇とビジネスは相性が悪い。そんな話を良く耳にします。それ故、演劇は食えない。大変だ。と皆が口を揃える。先日の時間堂、黒澤氏のインタビューの中でも「演劇人は食えていけない」という話が出てきました。

時間堂主宰、黒澤世莉氏に聞いた「演劇の未来とは?」

本当に演劇とビジネスの相性は悪いのか。演劇人の可能性はもっとあるはずではないでしょうか。

今回は演劇業界で活動している人々を、ある意味外側の立場から支援し続けて来た、花まる学習会王子小劇場創設者の佐藤幸治氏にお話を伺いました。

花まる学習会王子小劇場と佐藤さんについて

花まる学習会王子小劇場

東京都北区の民間劇場で1998年7月にオープン。演劇祭や若手支援プロジェクトなど、演劇人を応援する活動を活発に行っている。2008年メセナアワード「たたかう劇場賞」受賞。2016年6月1日より株式会社こうゆうとのネーミングライツ契約締結により、劇場名が「王子小劇場」から「花まる学習会王子小劇場」となる。質の高い公演を提供するために、事前に審査をした上で公演団体を決定している。

WEBサイト:花まる学習会王子小劇場
Twitter:https://twitter.com/ojishogekijo

佐藤孝治氏

花まる学習会王子小劇場企画発起人。96年10月、ジョブウェブを創設。97年7月アクセンチュアに入社。98年、王子小劇場を立ち上げ。99年10月ジョブウェブを法人化し株式会社ジョブウェブ設立。学生の就職支援と企業の採用支援を通じて学生と企業のコミュニケーションをサポートしている。2013年7月より代表取締役会長。著書には「<就活>廃止論(PHP出版)」「内定の原則(英治出版)」等がある。

ブログ:http://kojisato515.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/kojisato515

お聞きしたこと

演劇業界では「攻める小劇場」として、様々な取り組みが話題の劇場、花まる学習会王子小劇場。
今回は劇場の創設者である佐藤さんに、下記の様な事をお聞きしました。

・花まる学習会王子小劇場の設立経緯
・演劇とビジネスの相性について
・劇場が演劇人を支援する仕組み
・演劇人の可能性
・演劇の魅力とは

演劇とビジネスの相性は悪い?

ーそもそも王子小劇場はどういった経緯で出来た劇場なんでしょうか?
佐藤さん(以下継承略):実家のビルの改修の際に、図面では地下が倉庫という風に記載されていました。それではもったいないと劇場を作ったのが始まりです。

ーずばり聞いてしまうのですが、18年間、劇場として演劇と関わってきて、何故「演劇はビジネスとの相性が悪い」と言われていると思いますか?会社の経営者としての経験や観点も踏まえてお聞きできればと思います。
佐藤:演劇人は「演劇をやりたい」のだと思います。企業や外の世界と「繋がりたくない」と思っている人が多いのではないのでしょうか。
彼らの喜びや楽しみはそういった所には無いというか。もちろんメジャーな世界に行くためにエンターテイメントの世界と繋がりたいとは思っていると思いますが。

ーなるほど。演劇を行っている人が、企業等と繋がることをそこまで望んでないかもしれないということですね。
佐藤:現状だと、小劇場という市場に入ってビジネスを行うのはとても大変です。ただ、可能性は大いにあると思っています。
例えば、企業の採用説明会で仕事の説明を演劇で行ったり、研修に演劇のワークショップを取り入れるなどは可能性がある。
実際、ある会社の人事担当者に話をしたら興味を持ってくれて、少し動いたりもしているところです。

劇場が演劇人を応援する仕組み

佐藤:うちの劇場は、そんな小劇場の業界でも団体を支援しようと取り組みをしています。

ーどんな活動でしょうか?
佐藤:演劇人が悩むのはやはり「動員」です。うちは採算度外視でそこの支援もしてたりします。

例えば先日は九州の団体がうちの劇場で公演を行いました。その団体は東京での公演は始めてなので、動員は不安でした。

そこでうちのスタッフが九州まで行って、プロモーションの動画を撮ったり、劇場のブログで取り上げたりしました。
結果その取り組みが実際に動員増にも繋がりました。

ービジネスとしてというより、「演劇人を全力に支援するという姿勢」が花まる学習会王子小劇場にはあるんですね。
佐藤:劇場としては団体を支援すると人が稼働していますので、人件費がかかっています。
しかし、劇団からは劇場の使用料しかもらいません。単なる箱貸しではなく、演劇人を応援する劇場であるための活動をしたいと思っています。

ーそういった支援を劇場側がしっかりとコミットして行うというのはとても難しいが故に、素晴らしい取り組みですね。
佐藤:右も左もわからない劇団が公演を打つと大抵赤字になります。その赤字を減らしてあげるために劇場でも最大限努力をしています。
まあ、そうすると劇場運営側のコストは大きくなってしまい、厳しかったりもするのですが。

ー最近は「芸術家を支援する」という動きも世の中では目や耳にする様になりましたね。
佐藤:私達もそういった取り組みは長年行ってきました。現在8名のスタッフがいますが、皆演劇活動をしながら劇場運営に取り組んでくれています。
仕事場と合わせて、親会社の社宅がありまして、住む場所も提供したりしてます。

ウチのスタッフは演劇界で注目されている人達です。
そういった人達に劇場に居てもらうことによって、これから演劇を始めていこうとする若手の方には、憧れの先輩応援してくれたり、時には厳しくアドバイスをしてくれる登竜門的な劇場でいたいとも思っています。

演劇人が外の世界と繋がる可能性

佐藤:あとは、演劇人の持っている力をもっと違う形で引き出してあげられないかなと考えているんですね。

ー演劇人の持っている力を、その他の仕事などに活かすということですか?
佐藤:たとえば演劇をしている人は、伝える力や、コミュニケーション能力は非常に優れています。これはビジネスではとても重要なスキルです。
今回、ネーミングライツで協賛頂いた花まる学習会の高濱代表もおしゃっていましたが、演劇人は教育者に向いているんです。

あとは演劇人だけのコールセンターとかもすごい良いと思いますよ。彼らの「相手の反応を読み取る力」をとても活かせるんじゃないかと思っています。

※演劇に携わる人を支援する取り組みに関して、詳細は下記の記事でも触れられています。
【全文書き起こし】花まる学習会王子小劇場命名権取得記者発表会

演劇の魅力は「魂が迸る演技」に心が動くこと

ーここまでお話をお聞きして、本当に素晴らしい取り組みをされていると思うのですが、そこまでして携わっている演劇の魅力って何なんでしょうか?
佐藤:生身の人間が目の前で演技をして、魂がほとばしっているのを目の当たりにできる。それが人の心を動かす、ってのはすごいことだと思っています。
また、演劇はその時だけのものじゃないですか。初日と楽日の芝居が違うこともあって、それも楽しいですよね。

あとは、見ている人が自分を見つめ直す時間にもなると思う。
映画であれば基本的に物語は主人公の視点で語られ、主人公に自らを投影します。芝居なら舞台にいる様々な役の中の、誰かに自分を映すことができる。そういうのも面白いですよね。

まとめ

単に劇場を貸し出すだけではない、佐藤さんと花まる学習会王子小劇場の取り組みには心を揺さぶられました。

実は今回、当初はインタビュー記事を作成する予定は無かったのですが、佐藤さんと花まる学習会王子小劇場の取り組みについてお話を伺うちに、ぜひこれを記事にしたいという想いから、特別に記事にする許可をいただきました。

自身でも新卒採用支援の会社を経営されている佐藤さんは、「人」を本当に大切にする方だという印象を受けました。お時間を頂き、どうもありがとうございました。

<花まる学習会王子小劇場>
今後の公演情報や劇場の取り組み等については下記のWEBサイトからどうぞ。
花まる学習会王子小劇場


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