「舞台監督」って何?小劇場における「舞台監督」の仕事

「舞台監督」という職業をご存知でしょうか。税務署の職員には怪訝な表情をされ、親戚一同には「なんか舞台の裏方さん」として認識されるこの職業、「映画監督」を彷彿とさせるその名前から、よく「演出家」の仕事と混同されますが、まったく別の職業です。

演劇公演を一艘の船とするならば、目指す島を決める船長は演出家であり、舞台監督はさしずめ航海士。安全な航路を考え、危険を回避し、船を無事に目的地へ導くのが仕事です。お客様の目には入らないけれど、大切な舞台監督の仕事の大枠をご紹介します。

舞台監督の仕事

今回は大きく下記の4つに分けて、舞台監督の仕事を紹介をしていきます。

  • 稽古前
  • 稽古中
  • 劇場に入ってからの仕事
  • 本番中、本番後の仕事

稽古前の仕事

劇場見学

入ったことのない劇場を使用する場合、事前に予約を入れて見学に行きます。

実際に見に行ってみたら壁に図面上には存在しない凹凸があったり、想定外の場所に梁があったり、バトン(照明を吊る劇場躯体)が図面上より多かったり、少なかったりすることが小劇場では良く有ります。なので自分の目で見ることが肝心になってきます。

美術打ち合わせ

演出家と一緒に美術担当から舞台装置(舞台セット)の要望を受け、その美術が劇場の機構上問題が無いか、演出家の演出意図に沿ったものになっているかなど、必要に応じて複数回打ち合わせを行います。

特に小劇場では劇場の搬入条件(エレベーターや搬入口の大きさ、劇場前に停められる車の大きさなど)が厳しいため、装置を作り始める前段階からの打ち合わせが必須です。

稽古場の仕込み

美術打ち合わせで決まった舞台装置図面を元に、稽古場の床に実際の寸法で印をつけます(バミリ、バミる、といいます)。

同じ稽古場を長期間使える場合は、段差や壁やドアなどを仮組みしたり、本番も使う家具などを置いたりすることもあります。公民館など毎日稽古場が変わる場合は、持ち運びに便利なロープ状のバミリを作ったりします。

稽古中の仕事

稽古を見て、様々な項目を確認

小劇場では大体、稽古の終盤1〜2週間程度は稽古場へ足を運び、役者の出ハケ(どのタイミングで舞台に出るか、退場するか)の確認や、消えもの(役者が舞台上で実際に食べたり飲んだりするもの等)の有無、本火や本水の演出の有無(劇場ではマッチ一本の火でも申請が必要ですし、劇場の床は水に弱く漏電等の危険性もあるため、厳重なケアが必要になります)、早替え(数十秒から十秒以下の短時間で衣装を着替えること)の確認など、様々な項目を確認しておきます。

各種打ち合わせ

消防署へ禁止行為の解除承認申請

劇場はたくさんの人が集まる施設であるため、法や条例によって危険物の取扱いや火の使用は原則禁止されています。

裸火の使用(ライターによる着火や喫煙など)や、スモーク(特殊効果として煙を発生させる装置)の使用などがある場合は事前に消防署へ申請をしなければなりません。また、消火器などの消火設備を準備も舞台監督の仕事です。

劇場打ち合わせ

大体劇場へ入る1週間前くらいに劇場との打ち合わせを行います。舞台装置の図面やタイムテーブルを提出して、特殊な事象(舞台上でものを食べたり、火・水の使用など)の説明をし、劇場から使用規定や注意事項の説明を受けます。

キュー(タイミング)打ち合わせ

各団体のやり方にもよりますが、演出家や各セクションのスタッフと共に照明や音響、仕掛けのタイミングを台本上で確認します。

通し稽古進行

打ち合わせたキュー(タイミング)を基に「幕が降りてきます」「暗転します」「明転します」など、照明や効果で劇場に入らないとわからない事象について口頭で伝えながら、通し稽古の進行をすることもあります。

発注作業

搬入車両

舞台装置や照明機材、音響機材、舞台監督資材などを劇場へ搬入するための車両を発注します。運搬業者に発注する場合もありますが、レンタカーを使って知り合いに運転してもらったり、舞台監督自ら運転することも多いです。

作業員の発注

物量にもよりますが、仕込み(劇場で公演の準備をすること)や、バラし(撤去すること)をする人手を確保します。予算が許すならば技術力のある外部の人に発注をかけますが、出演している役者さんにお手伝いを頼む場合もあります。

劇場に入ってからの仕事

仕込み進行

基本的には仕込みが順調に、そして安全に進むよう、指示を出したりスケジュール調整をしたりします。

小劇場においては役者が作業を手伝うことが多いため、仕掛け(振り落とし等)や裏周り(お客さんには見えない役者の待機場所)の仕込みは間違いが無い様に、舞台監督自身が行います。

場当たり・ゲネプロ進行

照明や音響と役者の動きを合わせながら、出ハケや立ち位置、きっかけなどを確認していく作業を場当たりと言います。一般的には演出助手が進行することが多いですが、小劇場界隈では演出助手がつかなかったりするためか、舞台監督が担うことが多いです。

ゲネプロとはお客さんがいない状態で、本番と全く同じように上演することを言います。こちらも場当たり同様に進行を行います。

本番中、本番後の仕事

本番中

観客の目に触れることはありませんが、ずっと舞台裏にいてキューを出したり、仕掛けを動かしたりしています。

また、緊急時(地震や火災などの災害や、機材トラブルの発生時)には公演の続行や中断の判断、観客へのアナウンス、緊急避難の対応など舞台上で起こる事象すべての責任を担います。

本番後

バラシ進行

他のセクションの進行を確認しながら、舞台装置の撤去や搬出を行います。搬出車両への積み込みも行うことが多いです。

廃棄

公演で使用した装置は、大部分は廃棄することになります。公演で出たゴミとともに産廃業者へ運びます。

おわりに

普段のお芝居で決して表には出ませんが、上記で書いた様に裏側では多岐に渡って様々な仕事を行っているのが舞台監督です。

舞台監督と一口に言っても、劇場規模によっても違いますし、同じ劇場でも劇団によって求められるものは変わります。そして同じ劇団でも作品によって仕事内容は異なります。小道具や大道具を兼任することもあります。

ひとつとして同じ仕事は無いため、経験を重ね、技術を磨き、どんな状況でもぶれずに対応できる一本の芯をもたなくてはならない、そんな広い知識と経験が求められる職業です。


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